【今日の一冊】ゲノム編集の世紀

【今日の一冊】ゲノム編集の世紀

  • フライヤー
  • 更新日:2023/03/18
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ゲノム編集の世紀
著者:ケヴィン・デイヴィス,田中文(訳)
出版社: (早川書房)
価格:3800円
出版日:2022/11/15

レビュー

遺伝子編集され、知能や体力、容姿がエンハンスメントされた人間が当たり前のように産まれて、生きている未来社会を描くSF作品は数多く存在する。そして、その根幹となる技術は既に編み出されている。

本書がテーマとするCRISPR―Cas9(クリスパー・キャスナイン)による技術は、これまでのものよりもはるかに簡単で、安上がりで、安全な遺伝子編集を行うことができる。その手軽さは、高校生が生物学の教室で教材にできるほどだという。既に今世紀最大の科学的発見と称されてさえいる。2020年のノーベル化学賞は、この技術を編み出した2人の科学者が受賞した。

その可能性は、遺伝子に由来する難病の治療や、絶滅した動植物の復活、マラリア蚊の撲滅、農産物の品種改良など、様々な分野に明るい未来をもたらす。一方、生殖細胞系列の編集によるデザイナーベビーの誕生や人為的なエンハンスメントなど、倫理的な課題をはらんでもいる。その課題は、2018年に賀建奎によるCRISPRを使った編集で子供が誕生したことにより、現実的なものとなった。

実現可能なのであれば、いずれ誰かが実現してしまうかもしれない。だからこそ、早い段階で確かな知識に基づき、どのように実践、応用されるのが善であり、また、悪であるのか、しっかりとした考察と議論を重ねることが必要不可欠となる。

CRISPRの発見から技術の開発、賀建奎の事件などについて、緻密な取材と確かな知識に基づき執筆された本書は、そのための有益なガイドブックになるだろう。

本書の要点

CRISPRとは細菌がウイルスに対抗する免疫システムだ。それを応用して生み出された、簡便にして安価、安全な遺伝子編集技術は、生物学における科学革命となった。

一般的に、CRISPRの発明者はダウドナとシャルパンティエとされている。だが実際には数多の科学者たちが地道に研究を続け、成果に結実した。

CRISPRは、遺伝子由来の難病治療や、マラリア蚊の撲滅、農産物の品種改良など有益な技術となり得る。半面、ヒト生殖細胞系列の編集による知能や体力の意図的なエンハンスメントなど、倫理的な課題も併せ持っている。

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大賀祐樹/フライヤー

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