百貨店は「軽んじられている」...緊急事態宣言に翻弄される「高級ブランド店員」のボヤキ

百貨店は「軽んじられている」...緊急事態宣言に翻弄される「高級ブランド店員」のボヤキ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/06/11
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三越伊勢丹ホールディングス、J.フロントリテイリング、高島屋、そごう・西武、エイチ・ツー・オーリテイリングは6月1日、5月の売上速報を発表した。

各社とも前年実績を上回ったものの、コロナ禍の影響による売場の臨時休業・営業時間短縮などを行ったため、2019年実績に比べると大幅な落ち込みとなっている。

どの企業も、昨年は約1ヵ月の休業とその後の消費低迷が響いて、大幅な赤字決算を発表したばかり。そして今回の3回目の緊急事態宣言で大打撃を受ける百貨店にとって、2年連続の赤字決算は避けたいところだろう。

緊急事態宣言に振り回される百貨店。その苦悩の日々と現場のリアルな声を紹介したい。

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百貨店がひしめく銀座/photo by iStock

最も煽りを食った百貨店

政府は東京都に対して、4月12日から「まん延防止等重点措置」適用を決め、効果が薄いと見るや「短期集中」として4月25日から3回目となる緊急事態宣言の発令、その後6月20日までの延期が決まった。

ゴールデンウイーク(GW)という大型連休に向かって人流を減らすべく、不要不急の外出自粛、都道府県をまたぐ移動についても控えるよう呼びかけられ、1000平方メートルを超える大型商業施設への休業要請が行われた。最も煽りを食ったのが百貨店だ。

「生活必需品」と「豪奢品」の違いはなに?

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photo by gettyimages

当初から、百貨店などの大型商業施設に対する休業補償額の低さや、緊急事態宣言下においても「生活必需品」の定義の曖昧さに疑問の声があがっていた。そのためGW期間中も部分営業する店舗もあれば、臨時休業を決めた店舗もあり、百貨店でも対応が分かれた。

協力に応じた店と部分営業していた店との不公平感すら拭えないものだから、GW明けに緊急事態宣言を5月31日まで再延長したところで、休業していた百貨店も自活のため営業再開を決断した。

すると、5月12日に東京都は日本百貨店協会に対して、食料品など生活必需品を除いて売場を休業するよう要請し、高額品の販売自粛を求めた。西武池袋本店、同渋谷店は5月20日からラグジュアリーブランドの営業を再び休止した。

一方で高島屋や大丸松坂屋百貨店の都内店舗は、一部制限しながらラグジュアリーブランドの営業を継続した。

5月28日には、変異株による新規感染者の増加と病床逼迫によって、政府は緊急事態宣言をさらに6月20日まで延長することを決めた。それに対し、百貨店協会も9都道府県知事宛に「百貨店への休業要請への回避」の要望書を提出、営業再開の許可を求めた。

東京都は、土日は引き続き生活必需品を除く売場の休業を要請するが、平日は朝5時から20時までの営業時間短縮の要請に内容を緩和することとした。しかし、この生活必需品という判断も9都道府県で統一された定義はない。

例えば東京では靴、衣料品、雑貨屋、文房具屋は生活必需品でも、大阪では休業要請対象に靴屋、衣料品店、かばん、袋物小売業、雑貨屋などが入る。土地柄では済ませられないこの区分けは、要請に対応する百貨店にとっても悩みの種となった。

「デパ地下」だけでは食っていけない

休業要請に応じながら、「生活必需品」エリアだけ営業すればいいのでは、と思う読者もいるかもしれない。そこで昨年一年間の主要6都市における、百貨店の商品分類別の売上額と構成比を表としてまとめてみた。

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まずはじめに注目して欲しいのは、デパ地下の代名詞で知られる「食料品」に関するウエイトだ。

都市別にみて一番構成比の高い札幌、大阪でも37%で、広島、東京で35%前後、名古屋、福岡で30~28%といった割合で、食品営業だけではやっていけないのがわかる。

ちなみにスーパーなどの量販店からなる「チェーンストア協会」での同年の食料品売上構成比が68.8%、食品系スーパーの増加傾向もあるので単純比較とはいかないものの、百貨店との構成比の明確な違いがわかる。

百貨店の看板フロアのひとつの化粧品は「雑貨」に分類、高級ラグジュアリーブランドの中心アイテムとなるアクセサリー、ハンドバッグ、靴、ベルト、財布といった類は「身のまわり品」に分類されている。

それぞれ都市別で見ても1割以上の売上構成比を占め、衣料品と雑貨を含めた非食料品として捉えると売上構成比はどこも50%以上のウエイトとなる。先の生活必需品のあいまいな線引きでは済ませられないのが、百貨店の本音ともいえる。

厳しい現状を自分の目で確かめるために、緊急事態宣言の延長の決まった5月最終週の週末、銀座にある老舗百貨店へ行ってみた。

銀座交差点に面した正面入り口は完全閉鎖で一瞬、「本当に営業している?」と思ってしまったぐらい。中央通り沿いにある出入口に1ヵ所、出入りを一方向ずつで入退店を誘導していた。

その出入口には自動検温の他に全館入場者数、その日の最大滞留時刻と人数、平均滞留時間がリアルタイムにモニターに表示され数字として認識できた。私が訪れた金曜日の午後、平均滞留時間は20分、全館の滞留者人数は1,065人だった。

各フロアのトレンド訴求のための演出スペースやイベントエリア部分は、密を作り出しやすい場所として撤去されていた。上層階に行くにしたがって、閑散としたイメージだったのは否めない。そこで何人かのショップ販売員に話を聞くことができたので少し紹介してみたい。

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photo by iStock

「ここ30年で一番厳しい」

まずは、銀座老舗百貨店の男性販売員の話だ。

「この業界に勤めて30年になるが現在が一番厳しいのではないでしょうか。緊急事態宣言が出されてからというもの、客数は極端に減りました。この店は地方から買い物に来るお客さんが多かったが、そういったお客の来店は望めません。

そんな状態なので、自分の顧客に連絡をしてアポイントを取り付けて、下のフロアまで迎えにいって買い物をしてもらい、また下の階までお見送りをする。そこまでやらないとなかなか数字は作れない。

また百貨店にとって、どこのテナントでもアジア系バイヤーの存在が大きいのですが、今は中国から買いに来るのではなくて、日本の在住者が本国からの指示で買いつけて、中国に送るケースが圧倒的に多い。すごい時はケース買いもあるほどです。

外国人観光客が減り、インバウンド客がいないと騒いでいるが、今でもそうしたアジア系バイヤー達に売上げを助けられているのが実情です。

大手アパレル企業に務めている販売員は、休業要請期間の給料は8掛けと聞いている。会社からはオンライン接客などに取り組むように言われているが、正直、この歳から取り組むなんてやりたくないのが本音です。私の顧客は飲食関係者も多く、苦しいのは一緒なので、緊急事態宣言が出されている中では、なかなか声をかけにくいですよね」

「百貨店で密を感じることはあるのか」

次は新宿百貨店の販売員の話である。

「平日に来店してくださるのは1日2~3人程度で、圧倒的に土日休みの会社勤めのお客が多いです。そもそも百貨店の来客年齢は高く、トラディショナルなお店の方がたくさん来店している気がする。6月から時短営業が30分伸びて19時30分閉店となるが、売上げはさほど変わらないのではないかと思う。

そもそも『人流を抑える』ことを目的として、百貨店の生活必需品を除く売場の休業要請がおこなわれたが、食品フロアを除けば、現在の百貨店で密を感じられてしまうくらい混雑することがあるのだろうか。出入口のアルコール消毒、検温設備は完璧で、百貨店内で大声を発する機会などないし、本当に必要な措置なのか疑問が残る。

百貨店のみならず取引先各社の雇用維持や事業継続、百貨店が担うべき社会的な責務は随分と“軽んじられてはいやしないか”と正直思う」

「人流を抑える」以外にもっと科学的な根拠に基づいた的確な施策は考えらないのだろうか。一年前と全く同じことの繰り返しばかりでは、説得力はますます無くなってしまうのは明白だ。

10万円の給付金やGoToトラベル、GoToイートといった経済施策もあったはずだが、それらの恩恵など授かっていないのが現実である。コロナとの闘いと同時に、百貨店では生活維持に向けた五里霧中の日々が続いている。

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