「可愛いからって許されると思うなよ」20代保育士が職場でかけられた「驚きの暴言」

「可愛いからって許されると思うなよ」20代保育士が職場でかけられた「驚きの暴言」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/11/25
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近年「大人のいじめ」が深刻な問題になっています。

厚生労働省の統計によると、「いじめ・嫌がらせ」に関する労働相談が、ここ10年で2倍に激増。労働問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」を立ち上げ、膨大な数の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談を受けてきた坂倉昇平氏がその実態を、近著『大人のいじめ』(講談社現代新書)をもとに解説します。

【前編】「20代の保育士が絶望…「定時に帰った」だけでイジメられる“理不尽すぎる職場”」では、新卒の保育士であるFさんがいきなり「主担任」を任されるという理不尽な状況に追い込まれ、園長に相談をしても「もう少し頑張ろう」と相手にされなかった経緯を見ました。その後、事態はさらに悪化していきます。

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無視される

一方で、先輩や同僚からは「可愛いからって許されると思うなよ」と、担任を拒否しようとしたことでいじめの対象となった。指導でも他の人より厳しくあたられ、無視されるなどのいじめが始まった。

過大な業務といじめに耐えかね、Fさんは精神疾患を発症して約3ヵ月で退職。もう保育園では働きたくないと考えている。

ケース6 人格否定と無視も「指導のうち」

20代のGさんは、150人の園児を抱える大規模な保育園で働き始めた1年目の正社員保育士である。入社前の面接の雰囲気は良かったのだが、いざ働き始めてみると、自分だけ目をつけられ、主任から「指導」と称して「バカ」などと人格を否定する発言をされた。

Gさんは、「指導」を受けるたび、ひたすら謝り続けなければならず、食欲がなくなり、眠れないなどの症状に悩まされるようになった。また、この主任はその日の気分で態度が変わり、無視されるなどの嫌がらせが半年以上続いた。

園長に相談したところ、特に問題視する様子はなく、「新人は怒られて成長するもの」と説明され、全く対応してくれなかった。

そもそも残業はほとんどないと聞いていたのに、毎朝7時40分に出勤してから、19時頃まで働かされ、しかも残業代は払われたことがない。心身の調子を狂わせたGさんは、保育業界は自分には合わないとあきらめ、1年で退職するつもりだ。

背景には、少なすぎる配置基準による人手不足

一見、人間関係のもつれにも見える保育職場のいじめ。しかし、そこに共通するのは、人手不足による過酷な労働である。

では、なぜ人手不足が生じるのか。もともと保育園には、国の定める保育士の配置基準の人数が少なすぎるという問題がある。年齢ごとの園児の人数に応じて、最低限必要な保育士数を定めているのが配置基準で、行政が保育園に払う運営費には、その配置基準分の人件費が含まれている。

しかし、この配置基準は園児数に対して必要な保育士数を非常に少なく定めており、運営費の中の人件費はその配置基準分しか支給されない。つまり、配置基準より多い保育士を雇っても、追加の人件費は払われないのだ。そのため、保育園は保育士の数をギリギリまで抑え込むことになる。

そして、2021年からは、この配置基準がさらに緩和され、従来は正社員の保育士がいなければ認められなかったクラスの担任を、非正規保育士(多くが主婦パートだ)だけでも可能にした。人手不足を、保育士の数を増やすのではなく、非正規保育士の負担を増やすことで対応しようとしているのだ。

こうした結果、一人の保育士で多くの子どもたちの対応をしなければならず、休憩時間を取るどころか、終業時間までトイレにも行けないほどの、ひどい働き方が求められるようになった。いつ事故が起きるかもしれない恐怖と隣り合わせの中、心身ともに疲弊する保育士が続出している。

運営費を目的に参入する企業が続出

ここ数年、保育園不足を解消するため、保育園経営に外部の業界から参入しやすくする仕組みが作られたことも追い討ちをかけている。

先に述べたように、厚労省は保育園に、在籍する園児数に応じた配置基準分の人件費を、運営費に含めて支給しており、その額は運営費の約8割を占める(小林美希『ルポ 保育崩壊』〔岩波新書〕に詳しい)。2000年以前は、運営費の使い道は厳格に決まっており、その約8割が、そのまま人件費にあてられていた。

これに、国が保育士の賃金に上乗せするよう支給している処遇改善等加算や、東京都独自の人件費への補助金を足すと、東京23区の保育園に勤務する経験7年目の保育士であれば、年収は560万円ほどになる。

ところが、2000年以降、新規事業者の参入を促すため、保育園が利益を確保しやすいよう、この運営費の使い道についての制限が緩和されたのだ。

決定的だったのは、待機児童対策が過熱する中、2015年の規制緩和によって、株式会社が運営する場合は、保育士の人件費や保育園の運営に使うはずの運営費を、株主への配当にまで使えるようにしたことだ。

これでは、運営費に人件費として計上している意味がないのではないか。筆者は内閣府を訪れ、担当者に面談して尋ねたが、運営費の約8割が人件費というのは、あくまで「目安」に過ぎないから問題ないという答えだった。

かくして、保育士の数は配置基準ギリギリに抑え、配置基準の人数に応じて支給される金額を大幅にピンハネして利益を得る方法に歯止めがかからなくなった。8割支給からかけ離れた事業所が、非常に多くなっているのだ。

特に株式会社が運営する保育園には、運営費のうちわずか2~3割しか保育士の人件費に回っていないというケースまである。フルタイム勤務なのに月給は20万円台前半、年収200万円台という保育士の相談者も珍しくない。非正規雇用の場合、時給が都道府県の定める最低賃金まで抑えられていたり、正社員でも、基本給が最低賃金レベルだったりする。

最近になればなるほど、保育に何の関心もなく、利益だけを目的とした経営者が増えてきた。経営者は園長に経営を「丸投げ」し、現場を取り仕切る園長は、会社の求めに応じて利益を上げるため、ひたすら「コストカット」に励む。株式会社だけでなく、社会福祉法人が経営する保育園でも、この規制緩和の恩恵を受けようと、職員数や給与を減らすなど、利益優先の傾向が強まっている。

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