宝塚を退団「これからは自由だ!」も束の間、燃え尽き症候群に。越路吹雪さんのラピスラズリの指輪に救われて

宝塚を退団「これからは自由だ!」も束の間、燃え尽き症候群に。越路吹雪さんのラピスラズリの指輪に救われて

  • 婦人公論.jp
  • 更新日:2023/01/25
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(写真提供◎越乃さん 以下すべて)

圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第39回は「燃え尽き症候群」のお話です。(写真提供◎越乃さん 以下すべて)

【写真】退団後初めてのディナーショー。右手の指輪がラピスラズリ

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前回「宝塚で下級生の頃は、客席にウインクもできなかった。オペラグラスごしのアイコンタクトは2人だけの世界」はこちら

幸せは3日で終わりました

タカラジェンヌの退団理由
それは人それぞれです。

次の目標や夢に向かって退団を決意する人
結婚する人
充実感満足感を得たから退団する人
などなど。

私の場合は、結婚でした。

嘘です。
完全な後者、幸せだと心から感じたから退団を決意しました。

そんな幸せなまま、私は大好きな宝塚を卒業しました。
退団した後の事は何も考えていなくて、
まずは少し休む。
これだけは決まっていました。
少し休んで考えればいいと。

「これからは自由だ!」

しかし、私の自由な休暇の幸せは3日で終わりました。
退団した私を待っていたのは、「燃え尽き症候群」というやつでした。
ここから長い間、私は深い深い闇に迷い込んでいきました。

何をしたいとか、どこに行きたいとか
身体を動かしたいとか、歌いたいとか
人に会いたいとかもなく
何もやりたくない。
でも何もしないのもストレスで…。

私は何がしたいんだろう…?

今思えば、あれは「燃え尽き症候群」だとわかるのですが、
その時の私にはわけがわからず、
何をしても心が動かないことと、
自分の居場所がない事にただただ途方に暮れていました。

宝塚を退団した時、「越乃リュウ」という名前からも卒業するつもりでいました。
本名の自分に戻ってこれからは生きていこうと。
なぜか漠然とそう思っていました。

休んでからゆっくり考えればいい、そんな風に思っていたのに、
長年の癖で全く休めないことが3日目あたりでわかりました。
これからどうやって生きていこう…。
私は何がしたいんだろう…?
ゆっくり考えても考えても何も心が動かない日々が続きました。

毎日目覚ましをかけずにひたすら寝て、
目が覚めた時間に起きてごはんを食べる。
卵焼きを巻くのがうまくなったこと以外、
さほど変わったことのない毎日で、ひたすら家に閉じこもっていました。

その間にもいろんな人が声を掛けてくれ、手を差し伸べていてくれていたのに、
優しい手、温かい手にどれだけの無礼をしてきた事か。
自信がなくなれば人に会うのも嫌になり、また閉じこもりの悪循環。
今思い出しても二度とあんな自分にはなりたくないと思うほど、
私はひたすら暗いオーラを放っていました。

そんな大切な指輪を私に⁉︎

頑張っていろんなことに挑戦するも、
どうにもならない心の状況は、努力と根性ではどうにかなるものではなく、
ひたすら足掻き、ここまで気持ちが落ちるかというほど、
私の闇はますます深くなっていきました。

今思うと、人生のタイミングってあるんだなと思います。
宝塚以外世間を知らず、不器用で要領の悪い私には、
自分と向き合う時間が人一倍必要でした。
そんなある日、ひょんなことから、宝塚の大先輩であり偉大なショースターだった
越路吹雪さんの形見の指輪が私の元に来ることになりました。

そんな大切な指輪を私に⁉︎
滅相もない、と言いながら付けさせていただいた青い指輪は、
なぜか私の指にぴったりなサイズでした。

この素晴らしい指輪が私の元に来た時、
不思議なことに、私はもう一度歌いたいと思いだしました。
もう一度自分を磨いて、勉強をし、
この指輪を付けてもいい人になりたい!
この指輪に相応しい人になろうと心に決めました。

「幸運を招く石」

やっと一つの目標を持つ事が出来た時、
地元新潟から、コンサートをやってほしいというお話がきました。
そしてその後、『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』のオファーをいただき、心が大きく動き始めました。
あのワクワクした高揚感は、自分を動かすエネルギーなんだと、
その時はっきりと気付きました。

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退団後初めての新潟でのコンサート

ラピスラズリ。
夜空のような輝きを持つその石は、「幸運を招く石」といわれています。
進むべき道に迷いが生じた時、正しい方向へ導いてくれる石だといいます。
それを聞いたのはずいぶん後になってからでした。

退団から約2年、深い闇からやっと光を見つけました。
私の長い夜はようやく明けようとしていました。

初めてその指輪を付けて舞台に上がった時、
その指輪がライトに反射して、ものすごい光の矢ができたと聞きました。
その光の矢は、眩しいくらいに光っていたそうです。

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写真集で見つけたラピスラズリの指輪

大きな舞台の時は、今も必ずその指輪を付けます。
「さぁ行ってきなさい」と力強く背中を押してくれる声を聞きながら。

越乃リュウ

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