『おしりたんてい』新作から「国民的キャラクター化」への道筋が見えてきた...!

『おしりたんてい』新作から「国民的キャラクター化」への道筋が見えてきた...!

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/22
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シリーズ累計800万部超の絵本・読みもの『おしりたんてい』の最新刊『おしりたんてい おしりたんていの こい!?』(トロル作、発行ポプラ社)と、集英社「最強ジャンプ」連載のスピンオフマンガ『おしりダンディ ザ・ヤング』(原案・監修トロル、原作・構成春原ロビンソン、作画菊池晃弘)が2020年11月に同時発売となった。

すでに未就学児~小学校低学年には圧倒的人気を誇るおしりたんていだが、この2つの新作からは、今後のさらなるIP展開――国民的キャラクター化――への道筋が見えてくる。

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なぜ『おしりダンディ』が必要なのか?

『おしりたんてい』は見た目はおしりだが佇まいも口調もジェントルな探偵が主人公のホームズ的な推理ものだ。

一方、外伝である『おしりダンディ』は、おしりたんていの父・ダンディを主人公とした冒険ものだ。ダンディの仕事は世界中を飛び回り遺跡の保護や宝物の回収を行う博物館員。鞭を持つその姿などビジュアルからもわかるように、インディ・ジョーンズ的な存在である。

ダンディは『おしりたんてい』シリーズの読みもの(絵本ではないが、絵や図版が多く文字と一体になった小学生向けの本)の5作目『おしりたんてい いせきからのSOS』で初登場。

2020年夏公開の映画『東映まんがまつり』で上映された劇場版オリジナルアニメ『おしりたんてい テントウムシのなぞ』でもほぼ主役を貼るなど、いわゆるゲストキャラクター的な扱いを超え、大きくフィーチャーされる存在となっている。

児童向けミステリーでは、昔からホームズ(推理)とルパン(冒険活劇)は双璧をなすと言われ、「どちらが好きか?」とよく語られてきた。

それぞれの支持層は、考えながら読むのが好きな(将来本好きになりそうなタイプの)子どもと、とにかく話の筋を追いかけておもしろい話が読みたい子ども、とでも言えばいいだろうか。

スピンオフや劇場用オリジナルアニメでダンディにフォーカスするのは、ホームズ路線の『おしりたんてい』から、ルパン的冒険活劇の『ダンディ』をスピンオフさせることで、両派閥を総取りしようという戦略だろう。

ただ、この推理+冒険二本立て路線が、絵本・読みもの(本)に留まらずにアニメでも展開されていることに注目したい。つまりこれは、本好きの子どもの両派閥を取りたいという意図に留まらず、今後のIP展開を見据えてのものだろうと推察される。

前述のとおり『テントウムシのなぞ』はダンディ主役と言っていいものだったが、劇場映えするのは推理もの(おしりたんてい)よりアクション(ダンディ)である――特に子ども相手ではそうなる。

TVアニメでは動きが少ない推理ものでも成立するし、作画の工数(=コスト)が少なくともおもしろい作品のほうが制作サイドからすると望ましいとすら言える。

しかし、劇場用アニメのように尺が長くなると、アクション中心のほうが気の散りやすい子どもの集中力を持たせやすい。

動画映えを考えると、静的な謎解き中心の物語より動きが派手なほうが(コストはかかるが)、ウケを取りやすい。

それだけではない。

おしりたんていはミュージカルや各種イベントとさまざまに展開していくプロジェクトとして走っている。

プロジェクトによっては事件が起こるまでは動かない探偵がメインキャラだと動かしづらい、ないし、ダンディがかき回したあとでおしりたんていに登場してもらう方が都合がいいものがあるはずだ。

今後のIP展開を見据えると、アクション担当としてダンディを準主役としてフックアップしていくほうが望ましかったと考えられる。

対象年齢の上限引き上げを模索?

では本編である読みものの新刊『おしりたんていのこい!?』のほうからは何が見えるか。

「こい(恋)」を扱っていることがポイントだ。

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児童書では恋愛関係を描くのはおおよそ高学年向けからである。中学年向けまでは男女がメインキャラクターを張っていても、恋愛関係にならないことが少なくない。

逆に言うと、未就学児や低学年向けで恋愛ものを扱っても読者はあまりピンと来ないことが多い。

2012年に絵本から始まった『おしりたんてい』が、小学生でも読める、文字が多めの読みもののシリーズを出すようになったのは2015年。

シリーズ開始から3年経って、絵本の読者が小学生になるタイミングで、だった。つまり、読者層を上に拡張するべく読みものを立ち上げたわけだ。

それから5年経ち、今ではすでに高学年になっている(かつての)読者も多いし、これからはさらに増えていく。

このことを踏まえて、すでに低中学年に知名度が十分あるシリーズの対象年齢のさらなる上限引き上げを狙ったのが、新作で扱っている「恋愛」テーマへの取り組みだったのだろう。

先ほど論じた『おしりダンディ ザ・ヤング』は、『おしりたんてい』本編よりも言葉遣いがやや難しい単語が含まれており、やはり従来の『おしりたんてい』の想定読者層より少し上の小学校中高学年男子向けを狙ったつくりになっている。

なお連載媒体「最強ジャンプ」は小学館「コロコロコミック」の競合誌であり、「コロコロ」のボリュームゾーンは小5男子だ。

つまり、小学校中高学年女子を取りに行ったのが『おしりたんていのこい!?』、中高学年男子を取りに行ったのが『おしりダンディ ザ・ヤング』と整理できる。

対象年齢の引き上げは、慎重にやらないと本来のターゲットが客離れを起こし、誰向けの作品なのかブレてしまうリスクがある。

ただ幸いにして『おしりたんてい』は低年齢向けの入り口としての絵本のシリーズも並行して走っているし、TVアニメは未就学児~低学年の心をつかんでいる。

そういう基盤を前提として、さらなる拡張を試みたものだと思われる。

『おしりたんていのこい!?』では、おしりたんていのライバルとしておなじみのかいとうUに加えて新たな怪盗も登場したが、このあたりはアニメで原作にないオリジナルエピソードを作ったり、ゆくゆくはゲーム化したりといった展開を見据えて、今後も様々な怪盗を登場させやすくするための設定なのではと推察される。

『おしりたんてい』が『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『名探偵コナン』に並ぶ国民的IPになるためには幅広い年齢からの支持・認知が必要になり、飽きられないような工夫も必要になる。

先行するこれらのIPの過去の動きを見ると、おそらく今後は「大人も楽しめる」要素を少し強めた作品や企画(『クレしん』における映画『モーレツ!大人帝国の逆襲』的なもの)も登場するはずだ。

いずれにしても、『こい!?』と『ダンディ』がどのように受け入れられ、また、これからどんな展開をしていくのか――ますます気になるところだ。

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