3万円台のクラシック腕時計を誕生させた「カル・レイモン」の美学

3万円台のクラシック腕時計を誕生させた「カル・レイモン」の美学

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/06/10
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高級腕時計のシンボルとも目されていたムーンフェイズを搭載していながら、若者でも求めやすい価格の腕時計「カル・レイモン」はどのように生まれたのか? 誕生秘話をご紹介する。

18世紀のスイスに生まれたアブラアン・ルイ・ブレゲは、さまざま革新的な発明により時計の歴史を200年早めたといわれている天才時計師である。

彼が生み出したのは、たとえばトゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター……現在も時計技術の最高峰といわれる複雑な機構の数々は、時計好きなら一度は手にしたいと憧れるものばかりだ。

2016年のある日、高級時計店のショーウィンドウの前に、ひとりの若者が佇んでいた。

慶應義塾大学で経済学を学んでいた留学生でもあったKは、就職活動を期に上質な腕時計を求めたいと思っていた。

皆がスマホを手にするこの現代にあって、腕時計は時刻を知るためだけのツールではない。

袖口からチラリとのぞかせることで自身のスタイルや価値観をスマートに表現するステータスアイテムであり、また時には自らを鼓舞し、自信を持たせてくれるようなお守りのような存在でもあるだろう。

「流行にとらわれず、長く使えるいいものが欲しい。でもそこまでの予算がない……」

世の多くの若者と同じような悩みを抱えたKは気づいた。

ないのなら、作ってしまえばいいのでは、と。

見渡せば、当時の腕時計業界は2極化の様相を呈していた。

一方はスイスメイドに代表される高級時計であり、もう一方はデザイン性を重視し、トレンドを盛り込んだファッションウォッチだ。

前者は数十万から数百万円するものも多く、なかなか手が出せるものではない。

後者は数万円で買えるが、過度に意匠を凝らしたデザインや、逆にミニマリズムの極致のようなシンプルなデザインで、ともに永続的に使えるものとは思えない。

そこで考えたのは、長く使えるクラシックなデザインでありながら、若年層でも手が出せるアクセシブルな価格帯の腕時計だ。

なかでもこだわったのはムーンフェイズ。

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CLASSIC PIONEER Gold with White Dial ¥36,300

冒頭の天才時計師、ブレゲが発明したといわれるこの機構は、腕時計のダイヤル上に設けられた小窓が月の満ち欠けを表す。

この、高級腕時計のシンボルとも目されているムーンフェイズを搭載しながらも、気軽に購入できるウォッチがあれば……そう考えたKは、同じく慶應義塾大学で哲学を学んでいた留学生Lとともに起業し、クラウドファンディングで資金を募ることにした。

「Back to Classic」「一部の人に限らない高級腕時計を」という想いは、彼らの想像以上に多くの人に支持され、米国・日本で合計3回のクラウドファンディングにより約2700万円の調達に成功。

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3万円台のプライスゾーンでムーンフェイズを搭載した腕時計は多くの若者たちの元へ届けられ、ファッション誌や時計専門誌で好意的に評された。

ただ、その時計を造り出すまでの道は平坦ではなかった。

海外からの留学生であり、経済と哲学を学んでいたKとLにとって時計業界とのコネクションはゼロに等しく、生産ラインの確保は苦難の連続だったという。

最初は門前払いをくらった工場へなんども足を運び、長野県で1967年に創業した精密機械加工・組み立ての工場と契約。

2018年、「カル・レイモン」は名実ともにメイド・イン・ジャパンの時計ブランドとして一歩を踏み出した。

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1980年から本格的に時計事業に参入した、長野県にある創業1967年の精密機械加工・組立の製造工場。

彼らがクラシックであることにこだわるのはなぜか。

Kは「クラシックであることがデザイン性の頂点だ」と語る。

誕生から数百年もの時間による洗礼を受け、現代に残るものこそが確固たる美だと。

そしてムーンフェイズを採用したことについて、Lは学生時代に天文部に所属していたと明かしながら、手元に小さな宇宙を持つことのロマンについて語ってくれた。

実際に「カル・レイモン」の腕時計を手にしてみれば、ゆるぎない美意識と小宇宙とを我がものにしているという自信に、そっと背中を押されているように思えるだろう。

クラシックであるということは古びることのない、エターナルなエレガンスだ。

それを手に入れやすい価格で実現させ、いわば”アフォーダブル・クラシック”とでもいうべき新境地を誕生させたふたりの情熱と革新性に拍手を送りたい。

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