山村美智「食道がんで旅立った夫。彼の生きた軌跡と魅力を知ってもらうため、嘘やごまかしはやめた」

山村美智「食道がんで旅立った夫。彼の生きた軌跡と魅力を知ってもらうため、嘘やごまかしはやめた」

  • 婦人公論.jp
  • 更新日:2021/11/25
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元フジテレビアナウンサーで、退社後は女優として活躍している山村美智さんが、食道がんで闘病されていたご主人を見送ってから1年半。「婦人公論」でその経験を話したことをきっかけに著書を執筆、刊行することになりました。執筆にあたって心掛けたのは「ただの闘病記にはしない」ことだったそうでーー。(構成=本誌編集部 撮影=藤澤靖子)

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苦しいことばかり書いてあるものを読みたいかなと

食道がんで闘病していたテレビマンの夫・宅間秋史を見送ってから、1年半が経ちました。悲しみの海の底に沈む時期が長く続きましたが、今は海面に浮上して息ができる状態に。この変化は夫との日々を綴った本を書いたことが大きかったと思います。

2021年2月に『婦人公論』で私たち夫婦のことをお話ししました。その記事を見た友人たちから、「文章にしてはどうか」と提案されたのがこの本、『7秒間のハグ』を書くきっかけでした。その後、出版社の方とご縁ができて執筆を始めましたが、舞台の脚本を書いた経験はあったものの、エッセイとなるとまったく別物。私にできるだろうか、と不安に思っていたのです。

看病中につけていた日記を読み返しながら書いていったのですが、途中、つらくて大泣きしたり、すべてを投げ出したくなったりもして……。でも、書きかけの原稿を読んだ人たちから、「すごくいいよ」「面白かった」と励ましてもらい、1ヵ月半で書き上げました。

心がけたのは、ただの闘病記にしないこと。がんという病と闘っている人や家族が手に取ることもあるかもしれない。でも、苦しいことばかり書いてあるものを誰が読みたいだろうか?と疑問に思って。

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山村美智『7秒間のハグ』幻冬舎1430円

夫の生きた軌跡と魅力を知ってほしくて

110日に及んだ入院生活は、たしかにつらいことの連続でした。でも夫は明るく冗談を飛ばすのです。私も病室を高級ホテルだと言って突撃レポートのように動画を撮ったり、抗がん剤治療で痩せた夫を「モデルみたい」と褒めたり。本を書くうえでも重い場面が続いたら、軽い場面を息抜きのように入れるなど、読む人の心の動きを考えながら構成していきました。

周りからは「仲良し夫婦」と言われましたし、実際そうだったと思いますが、36年半の結婚生活では、離婚を真剣に考えた時もありましたよ。夫のバッグから浮気相手との写真を見つけた時の怒りも、包み隠さず書いています。せっかく書くのだから、嘘やごまかしはナシにしよう!

と。同時に、夫の生きた軌跡と魅力を知ってほしくてエピソードを盛り込みました。読んだ方に「こんな素敵な人に会ってみたかった」と思ってもらえると嬉しいですね。

タイトルは、私たち夫婦の習慣から。入院生活が始まったころに、「7秒のハグは絆が強くなる」と知った夫が1日に1回しよう、と。私たちにとって大切な行為なので迷わず選びました。

今もふと涙する時がありますが、いつか夫と会えるまで、一人の時間を慈しんで生きていければ、と思います。

山村美智

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