
イタリアのエミリア・ロマーニャ州を襲った大雨と洪水によって、イモラで開催予定だったF1第6戦が中止となってから1週間後、今週末には伝統のモナコ・グランプリが行なわれる。
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所属するアルファタウリが拠点を置くイタリア・ファエンツァに、自身も居住している角田裕毅は、被害に遭った街の清掃に加わりながら、支援を呼びかけるなどの活動を精力的に行なってきたが、現在はモナコで次なる戦いに集中しており、チームの公式サイトを通して以下のように意気込み等を語った。
「ファエンツァやその周辺地域で我々は難しい状況の中を過ごしてきましたが、みんなが本当に深刻な影響を受けた人々のために何かをしようとし、また力を合わせて街を綺麗にしようとしている様子が非常に印象的でした。そして今、僕の仕事は今週末のレースに集中し、最善を尽くすことです」
「2021年にF1にデビューするまでモナコでレースをしたことはありませんでしたが、昨季は予選で11番手に入りました。このレースウィークの期間は非常に特別な雰囲気が漂います。(コースについては)特に予選では、ドライブするのが楽しく、ユニークだと思います。全ては自信の問題であり、どれだけバリアに近づけるか、どれだけのスピードでコーナーに突っ込めるか。それが、土曜日(予選)を非常にエキサイティングなものにします」
「レースでは追い抜きが難しいため、土曜日が最も重要になります。そのため、準備をしながら、ロングランよりも、予選に適したセットアップを見つけたいと思います。コースを十分に考慮し、徐々にスピードを上げながら、可能な限り良いタイムを出す必要があります。ここではトラックエボリューションが大きく、各セッションでラップタイムが大幅に上がります。モナコでは経験が非常に重要となると思います。今回で3回目であり、アプローチの仕方は分かっているので、初めての時よりも確実に準備はできています」
これに対し、海外メディアの報道を見ると、イタリアの自動車専門サイト『MOTORIONLINE』は「混沌に満ちた週末とストーブリーグの噂が多く出回った後、ここまでチームの期待に応えられておらず、アップダウンのシーズンを過ごしているニック・デ・フリースは、角田のパフォーマンスに並び、自身やチームにとって重要なポイントを獲得することを狙っている。一方で、日本人ドライバーにとって状況は大きく異なっているが、彼も最も華やかなレースウィークエンドにおいて、良い結果を掴み取ることを切望している」と綴った。 フランスのモータースポーツ専門サイト『Motorsport NEXTGEN-AUTO.com』は、「アルファタウリはイモラでアップグレードを導入する予定だったが、キャンセルを受けて、今週末のモナコでこれを行なう。しかし角田は何よりも、エミリア・ロマーニャ州、特にファエンツァの全ての住民に思いを馳せたいと考えている」として、災害における彼の動きを紹介した後、今週末については「今回もトップ10前後でレースを続けられるだろうか?」と記事を締めた。
また角田といえば、ホンダがアストンマーティンと2026年からのワークス契約を締結したことにより、彼の去就に対してもにわかに注目が高まっている。これについてホンダ・レーシングの渡辺康治社長は、「我々の育成ドライバーの出身ということで、現在、F1で活躍してくれていて大変嬉しく思っています。(2026年からのアストンマーティンのドライバーラインナップについて)是非そこに絡んでくれたら嬉しいなとは思います」と語った。
また、アストンマーティンのマーティン・ウィットマーシュCEOも、「角田は若いし、ある程度経験を持っており、(F1デビューから)かなり成長している。非常にエキサイティングだ。彼はドライバー候補として考えられると思うし、彼自身もホンダエンジンを積んだ車に乗りたいと考えているだろうから、この先2年程でどれだけ成長するのかを見守りたい。そして、彼と真剣な議論ができるようになることを願っている」と、注目株のひとりであることは認めている。
英国のモータースポーツ専門サイト『THE RACE』は、「アルファタウリは2023年を不調な状態でスタートしたが、23歳の角田はその逆境の中でこれまで以上に好印象を与えている」と現在の働きぶりを高く評価し、「これは、彼が現在の契約が切れた後もアルファタウリのシートを維持できる良い立場にいることを意味する」と、彼の将来についてもポジティブな展望を示した。
しかし、アストンマーティン行きの可能性については、「チームの共同オーナーであるローレンス・ストロールの息子ランスが2台のうちのひとつに乗っていることで、状況は複雑になっている。一方のフェルナンド・アロンソは、競争力を維持するのであれば2020年代半ばまではF1でレースを続けたいと繰り返し示唆しているが、それは今季のパフォーマンスを考えれば当然のことだ。2026年、彼は45歳になる」と、角田の前に立ちはだかる“障壁”も挙げている。
先日は、アルファタウリのフランツ・トスト代表が、角田の成長ぶりを高く評価し、「2025年にレッドブルへ昇格する準備が整うだろう」と語ったことで、やはり日本人ドライバーの去就が話題になったものだが、これが実現するか、あるいは2026年に向けて2チームによる争奪戦が勃発するか、あるいは全く異なる展開か……全ては角田がそれに見合うパフォーマンスと結果を出せるかに懸かっているのは間違いない。
構成●THE DIGEST編集部
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