
『舞いあがれ!』(写真提供=NHK)
連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の第24週となる「ばんばの歩み」が放送された。週の初めには舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)に待望の第一子が誕生。「一歩一歩、進んでいく」という意味を込めて「歩(あゆみ)」と名付けられた。その一方で、五島のばんば(高畑淳子)が脳梗塞で倒れ、左側の手足が不自由になる。1週間を通して、新たな命の誕生と祖母の老いという2つの局面が描かれた。
【写真】赤ん坊を抱える貴司(赤楚衛二)
舞にとっても大きな覚悟を迫られる中で、パートナーとしての心強さを見せたのが貴司だった。舞と結婚後、岩倉家に同居することになった貴司は、これまでにも家族の食事を用意するなど、仕事で多忙な舞を気遣う心優しい夫ぶりが話題となっていた。その貴司が今度は父親の顔を見せる。出産後すぐに仕事復帰し疲れが溜まっている舞に「寝られる時に寝たほうがええで」と声をかけ、夜泣きをする歩の寝かしつけをかってでる。歩を大切に抱いていたり遊んでやる姿を見ることも多く、積極的に育児に参加していることがうかがえた。
貴司は持ち前の気配りで、歩だけでなくばんばのことも暖かくケアする。一人きりで暮らすことが難しくなったばんばの今後について、舞と真剣に考えていた。また東大阪にばんばが来てからは、デラシネに連れていき、本の楽しさを教えることも。
幼少期から思いやりにあふれていた貴司。だが今の貴司の行動を「優しいから」の一言で片付けるのは違うような気がする。そこには、家族の一員として共に暮らし、より良い家庭を築いていこうとする貴司の真摯な気持ちがあるのではないだろうか。岩倉・梅津家の幸せを守りたいという思いが貴司からは伝わってくる。
2人が親になった時に、貴司が舞にかけた「舞ちゃん、もっと頼って。2人で親になったんやから」という言葉は、SNSでも大きく話題になっている。「貴司くんは本当に良い男」「産後の夫婦は、こうあるべき」など多くの称賛の声が上がっていた。貴司の子育てについては“妻を手伝う”でなく“自分も親として子育てをする”という意思が見え、育児を他人ごとでなく自分ごとに捉えていることに感動を覚える。まだまだ男性の育児参加に課題を抱える家庭も多い中で、脚本家の桑原亮子がこうした言葉かけをドラマで使うことの意味は大きいだろう。
貴司の家庭での姿や、岩倉家や梅津家が築く家庭の在り方は、まさに理想的ではないだろうか。それぞれが家族の問題に真剣に向き合い、時には勝(山口智充)のようにきつい事実を意見として交わし合うこともある。そうした言葉もしっかり飲み込んだ上で前に進もうとする姿には、どこか安心感がある。これからもばんばと暮らし、歩を育てる中で様々な困難はあるだろう。しかし舞と貴司はその都度、手を取り合って乗り越えていけるのではないだろうか。
(Nana Numoto)
Nana Numoto