「キメハラ」しちゃう人間の心理 好きなものを「押し付け」ないためには、どうしたら?

「キメハラ」しちゃう人間の心理 好きなものを「押し付け」ないためには、どうしたら?

  • J-CASTニュース
  • 更新日:2020/11/22

このところ、「キメハラ」なる言葉が世間を賑わせていることをご存じだろうか。

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たとえば、「東京スポーツ」は2020年11月8日付の紙面で「鬼滅大ヒットで『キメハラ』横行」と題して「キメハラ」について解説する記事を掲載(ネットでは7日に配信)。

勤め先から「感想文」求められる!?

それによると、

「『キメハラ』とは、映画、アニメ、漫画の『鬼滅の刃』見ていない人に見ることを押し付けたり、同作品に関する否定的な意見を許さなかったりする風潮を指すという」

と、現在、大ヒットを飛ばしている「鬼滅の刃」についての「ハラスメント」であると解説。実例として、神奈川県の介護施設のスタッフの話として、勤め先の所長から同漫画全22巻についての感想文の提出を要求されたとするコメントを掲載しつつ、ハラスメントの発生は問題であるとの論調で報じていたのだ。

また、9日には同記事を取り上げつつ、情報番組「五時に夢中」(TOKYO MX)が、「ブームを押し付けたことはありますか?」とのテーマで「キメハラ」に言及。出演者の若林さんとマツコさんが「キメハラ」についての意見を述べる中、番組サブ司会者の大橋未歩アナウンサーは、現在、夫に「進撃の巨人」を押し付けていると公表。12月6日から始まる「ファイナルシーズン」(NHK総合)の放送が始まる前に「仕上がってほしい」との思いで押し付け行為を行っていると明かしたのだった。

そもそも「キメハラ」という言葉はツイッターなどの一部で細々とつぶやかれていたが、ネットメディア「バズプラスニュース」が10月18日付記事で取り上げたあたりからにわかに注目を集めたという経緯がある。それが他メディア、そして特にテレビが報じる中で、一気に広まっていった。

心理学の専門家に聞く対策は?

そういう経緯から、メディアによる「造語」という感もないではない「キメハラ」。しかしこれだけ広まっているのは、「押し付けられている」という不快感を持っている人が、一定数いることの証明ともいえる。

また、このようにさまざまな「ブーム」を、まだハマっていない人に押し付けるような振る舞いは、鬼滅の刃に限らず起こりがちだ。

たとえば前述の番組で、夫に対しては「意識的に」押し付け行為を行っていることを明かしていた大橋アナだったが、番組中では大橋アナが韓流アイドルの「BTS」についても押し付け行為を行っていると指摘されて慌てふためく場面もあった。

そこで、J-CASTニュース編集部では、「うっかりブームなどを押し付けないようにするための心構え」について、経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織氏に取材を実施。「ついうっかり」をやらないための心構えについて聞いてみた。

「これ、今、ブームになっているんだよ」というフリはNG

まず、鈴木氏はブームの押し付けについては「同調圧力」など、人間の心理の負の側面があるとしつつも、それよりもはるかに大きな要素として、やはり、そのブームで扱われているものが「好きである」という、プラスの感情が大部分であると指摘する。

「自らが好きなものについて話している以上、話している人は、それこそ、『フッとした瞬間』にこのハラスメントを行いがちです。その原因は『自分は知っているが相手はまだ知らない情報を相手に教えて相手を成長させたい』といった相手の成長を願う感情であり、決して悪い感情から発生するものではありません」

確かに、前述の大橋アナは夫に対して、ファイナルシーズンの放送前に「仕上がってほしい」との思いで、「意識的に」押し付けていると話していた。

また、鈴木氏は同時に、その防ぎ方についても説明した。

「だからこそ、この手のハラスメントは『暴発』してしまうわけですが、それを防ぐには、『自らが好きな作品』について、いきなり、『これ、今、ブームになっているんだよ』と話すのではなく、『最近、あなたは何か漫画は読んだ?』といった、一般性の高い質問から始めるのです。それで、相手が『鬼滅の刃』など、その作品の名前を出してきたなら、『あの作品は優れているから、ブームになるのも分かるよね』といった会話を展開するのです。これなら強引さがなくなるのはもちろん、あなたがお目当ての作品名が相手の口から出てこなかったとしたら、そこから、相手がその作品に関心を持っていないと推測できるわけであり、別の話題に転じることで、ハラスメントをしてしまう可能性を未然に排除できるのです」

ブームじゃなくても発生してきた「押し付け行為」

これら、「ついうっかり」やってしまいがちな「ブームの押し付け」行為だが、確かに、これらの指摘を実践すれば、押し付け行為はせずに済みそうだ。ただ、考えてみると、このような押し付け行為は「ブームの発生時」以外でも起きてきたのもまた事実である。

今から2年ほど前、2018年頃にはウェブメディアの記事などをきっかけに、「ドラゴンボールハラスメント」「スラムダンクハラスメント」「ガンダムハラスメント」といった、主に、職場の先輩社員から若手社員に対し、まるで、「必須の教養」と言わんばかりに、「えー、知らないの?」「これぐらい知っとけよ!」といったなじり文句と共に行われるハラスメントが話題になっていた。

これらは、作品がブームを迎えていた時期とハラスメントが行われていた時期が大きく離れており、「ブームの押し付け行為」ではないが、その一方で、「自らが好きなものを無意識の内に押し付けてしまう」という点が共通しており、「キメハラ」と同じ構造をしているハラスメントと言えるだろう。これらについても鈴木氏に意見を聞いてみると、

「これに関しても、『必須の教養を知らない最近の若い者はなっとらん!』といった悪い感情で起きているというよりは、『教養』を若い人に与えてレベルアップのお手伝いをしつつ、『若者と話題を共有することで、若者に近づきたい』という欲求を満たそうとしていると考えるべきでしょう。ただ、しばしばその欲求は肥大化してしまうため若い人としては迷惑千万。しかも、その『教養』はあくまでその世代限定のものであるところが何とも悲しいところです。なので、どうしてもこの手の話がしたくなったら、やはり、『最近、あなたは何か漫画は読んだ?』といった質問から始めるのが無難でしょう」

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)

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