「フルカウント」で有利なのは投手なのか、野手なのか

「フルカウント」で有利なのは投手なのか、野手なのか

  • ベースボールキング
  • 更新日:2020/08/02
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◆ 3/4は打者優位?

野球のテレビ中継で画面に必ず表示される「BSO」。かつては「SBO」だったことを知らない小中学生も多いのではないだろうか。

逆に30代以上の野球ファンなら、いまだにカウント「ワンツー」と言われても、すぐに「1ボール、2ストライク」と脳内変換できない人もいるはずだ。今回注目したのは、ボールとストライクを表す「BS」、いわゆるボールカウント(単にカウントとも呼ばれる)である。

ボールカウントには「0-0」から「3-2」まで12パターンある。データが膨大で取得可能な2019年メジャーリーグのレギュラーシーズンから全12カウントの打率、出塁率、長打率、そしてOPS(出塁率+長打率)を抽出すると、以下のような数字になる。

▼ 2019年MLBカウント別打撃成績
※レギュラーシーズン
平均:打率.252/出塁.323/長打.435/OPS .758
―――――
3-0:打率.410/出塁.937/長打.846/OPS1.784
2-0:打率.367/出塁.368/長打.698/OPS1.067
3-1:打率.363/出塁.711/長打.713/OPS1.424
0-0:打率.354/出塁.364/長打.630/OPS .994
1-0:打率.351/出塁.354/長打.637/OPS .990
2-1:打率.351/出塁.353/長打.636/OPS .990
1-1:打率.337/出塁.344/長打.570/OPS .915
0-1:打率.329/出塁.339/長打.542/OPS .882
―――――
3-2:打率.202/出塁.453/長打.362/OPS .815
2-2:打率.180/出塁.185/長打.298/OPS .483
1-2:打率.161/出塁.169/長打.256/OPS .425
0-2:打率.149/出塁.159/長打.234/OPS .392

ここでは、打率の高い順に並べた。打率だけを見ると、打者有利といわれるカウントと投手有利といわれるカウントで大きな差が出ている。

0ストライク、もしくは1ストライクの時は、打率が全て3割を超えている。最も低い「0-1」でも.329の高打率だ。一方、2ストライク時は低い打率が並ぶ。

2019年のMLB平均打率が「.252」。この数字に最も近いのが「3-2」時の「.202」だが、それでも平均をかなり下回っている。俗に勝負球とも呼ばれるフルカウントだが、打率だけを見れば、投手有利と言ってもいいだろう。

続いてOPSも見ておきたい。こちらも打率とほぼ同じ傾向が出ているが、打率で平均を下回った「3-2」だけがOPSでは平均を上回っている(平均 .758/3-2 .815)。

打率だけならフルカウントは投手有利と結論づけられたが、「3-2」は四球になる確率が高い分、出塁率は高くなり、結果的にOPSは平均を上回る形となった。フルカウントは、制球力のある投手なら投手有利、制球力に不安がある投手なら打者有利といえるカウントなのかもしれない。

◆ 動く?それとも動かない?

「3-2」というカウントに関しては、作戦面においても興味深いデータがある。それが走者を動かすかどうか。二死なら自動的にスタートを切るが、無死もしくは一死で塁上に走者がいれば、監督は迷う場面だろう。

同じ2019年MLBのカウント別盗塁/盗塁刺結果を見ると、全12カウントのうち「3-2」の時だけ盗塁刺の数が盗塁数を上回る。

▼ 2019年MLBカウント別盗塁成績
※レギュラーシーズン
B-S:盗塁/盗塁刺(成功率)
―――――
0-0:506 / 157( 76%)
0-1:311 / 99 ( 76%)
1-2:262 / 87 ( 75%)
1-0:257 / 84 ( 75%)
1-1:235 / 96 ( 71%)
2-2:201 / 53 ( 79%)
0-2:191 / 58 ( 77%)
2-1:114 / 44 ( 72%)
3-2: 92 / 123( 43%)
2-0: 76 / 23 ( 77%)
3-1: 30 / 8 ( 79%)
3-0: 5 / 0 (100%)

ここでは盗塁数の多い順に並べた。フルカウントでの盗塁成功率は42.8%。これは、三振ゲッツーが多いことを意味する。このカウントでは、それほど足が速くない走者にもスタートを切らせていることが多いためだろう。そしてヒットエンドランの意識が強いためか、走者のスタートがやや遅れ気味になっていることも影響しているのか。

ゲッツーを避ける狙いもあって走者を走らせることもあるフルカウント。様々な状況があるため一概には言えないが、このデータを見る限り、フルカウント時は走者にスタートを切らせない方が得策なのかもしれない。

投手、打者どちらにもプレッシャーを感じさせるフルカウント。勝負球といわれるだけあって、様々なドラマが生まれやすいカウントでもある。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

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