11キロ減...きんぎょママたちのコロナ闘病記

11キロ減...きんぎょママたちのコロナ闘病記

  • 西日本新聞
  • 更新日:2021/02/21
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新型コロナに感染した経験を語る小林信翠住職=10日午後1時43分、福岡市博多区・光薫寺(撮影・軸丸雅訓)

【新型コロナ九州感染確認1年】

中洲のゲイバー経営・平岩一弘さん(59)

九州で新型コロナウイルスの感染者が初確認されて20日で1年。九州7県ではこれまでに計2万8千人以上の感染者が分かっている。福岡市の歓楽街・中洲でゲイバー「ギャグマン」を経営し、「きんぎょママ」の名で知られる平岩一弘さん(59)もその一人だった。生死のはざまをさまよった経験や、回復後に得た目標について語った。

┃息苦しい。水に顔を押しつけられる感覚

体に異変を感じたのは昨年3月末。微熱があり、食べたカップ麺のカレー味が分からなかった。近くの病院で検査して陽性が判明した。接客中の感染を疑ったが、従業員に感染者はおらず、経路は不明だった。

タレント志村けんさんの急逝が報じられ、日本中がウイルスの脅威を認識したころだ。死の恐怖が頭をよぎった。別の病院に救急車で搬送されるさなか、車窓から満開の桜を見て思った。「なんて悲しい桜だろう」

病室で家族と従業員宛てに遺書を書いていると、症状が急速に悪化し、意識は混濁状態に。まず息が苦しい。水を張ったおけに顔を無理やり押し付けられるような感覚だった。少し楽になると、今度は病室の壁に、死んだ母親や仕事仲間の幻覚を見た。その繰り返しが続いた。「母ちゃん、苦しい。もう死んでいいやろ」。幻の母親に手を出すと、はたかれた。酸素吸入器を外し、意識が通常に戻るまで3週間かかった。

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新型コロナに感染した経験を語る平岩一弘さん(撮影・軸丸雅訓)

┃体重11キロ減。生きて自宅に帰れた喜び

退院したのは5月上旬。体重は11キロ落ちた。筋力がなくなったせいか、最初は思うように歩けなかったが、生きて自宅に帰れたことに喜びを感じた。「今、生きているのは医療従事者のおかげ」。退院時、医師や看護師に「いつか高級なシャンパンをおごるからね」と伝えた。コロナが収束し、約束を果たす日を心待ちにする。

店は自身の感染と緊急事態宣言で休業し、6月に再開した。21歳で始めたショーパブはバーに変わったが、リーマン・ショックなどの不況を乗り越え約40年、水商売で生活の糧を得てきたのは誇りでもある。街がコロナ前のような活気を取り戻せるかは分からない。それでも「どんな形でも生き残りたい」という。「コロナで死ぬ思いをした。だから従業員のため、中洲のため、残りの人生を目いっぱい使い切りたい」と語る。

福岡市の30代女性会社員

┃宿泊療養の空きなく、家庭内感染の恐怖

福岡市の30代女性会社員は、家庭内感染のリスクを抱えながら自宅療養した。

仕事始めの1月4日。前夜からせきや発熱があり、会社に連絡した際、同僚の陽性を知った。かかりつけ医に電話でPCR検査ができるか尋ねると、「結果が出るまで数日かかる」。迅速に結果が判明する検査機関を探し、その日のうちに陽性結果が届いた。

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​​​​PCR検査で陽性と判定された通知書が、

感染した女性にメールで届いた

会社員の夫と二人暮らし。濃厚接触者として自宅待機となる夫への感染を心配し、ホテル療養を希望したが「空きがない」。全国的に自宅療養が増え、容体急変で死亡した陽性者のニュースが流れ、不安が増した。その後も何度かホテルの空きを尋ねたが、状況は変わらなかった。

幸い熱は4日で下がり、発症10日目で自宅療養は解除。一方、夫は検査で陰性が確認されたが、濃厚接触者としてさらに2週間、自宅待機に。「夫にうつさずに済んで本当にほっとした。でも、夫の方が自粛期間が長かったのは…」と複雑な表情を見せた。

福岡市博多区の住職・小林信翠しんすいさん(49)

┃「誰もがかかる可能性」実名で病状発信

「不確かな情報が広がるより、公開した方が良い」。福岡市博多区の光薫寺住職、小林信翠さん(49)は

陽性判明後、ホームページやSNSを通じ、実名で経過や症状の発信を続けた。

1月7日、寺の僧侶の陽性が判明。並んで読経しており、自身の感染を疑った。寺は保育園も運営する。早い対応を迫られた。

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感染した経験を語る小林信翠住職(撮影・軸丸雅訓)

濃厚接触者は通常、保健所が認定し、PCR検査の対象となる。ただ当時、福岡県内では連日300人超の陽性者が出て、保健所業務は逼迫ひっぱく。「行政の対応を待つ余裕はない」。翌日、家族4人で佐賀県の病院で自費検査を受け、3時間後に結果が判明。陽性は自身のみ。保育園に携わる家族は陰性で、休園は免れた。

比較的症状は軽く、寺の宿舎の空き部屋で12日間療養した。SNSには「特別な病気ではないと理解できた」などの書き込みがあり、差別や偏見は感じていない。誰もがかかる可能性のある感染症。「感染は悪いことではない。情報を出すのに『勇気がいる』と思わせない社会であってほしい」

西日本新聞

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