ザ・ガマンの先の解放感/メタルか?メタルじゃないか?10

ザ・ガマンの先の解放感/メタルか?メタルじゃないか?10

  • ダ・ヴィンチニュース
  • 更新日:2021/05/01

“新しいメタルの誕生”をテーマに“BABYMETAL”というプロジェクトを立ち上げ、斬新なアイディアとブレること無き鋼鉄の魂で世界へと導いてきたプロデューサー・KOBAMETAL。そんな彼が世の中のあらゆる事象を“メタル”の視点で斬りまくる! “メタルか? メタルじゃないか?”。その答えの中に、常識を覆し、閉塞感を感じる日常を変えるヒントが見つけられるかもしれない!!

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Photo by Susumu Miyawaki(PROGRESS‐M)

「おしゃれは我慢なのよ」

この名言の主は、モデル、タレントとして活躍し、さらに自らのファッションブランドをプロデュースされている神田うのさんだ。

おしゃれ、すなわちファッションは我慢――そのとおりだ。メタル的にも。

メタル・ファッションと言えば、誰しもが思いつくあの感じ(、、、、)。イメージを決定づけたのは、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードさんではないだろうか。何かのインタビューで彼がこんなようなことを言っていた。

「強い音楽を表す服装って何だろう? って考えた時に、レザーやスタッズ、さらにはボンデージのような過激なものをイメージしたんだ」と。

さらにはモーターヘッドなんかだとアメリカのヘルズ・エンジェルスに代表されるようなバイカー文化の流れを汲んだレザーファッションだ。

いずれにしても、ステージで演奏するには不向きな衣装なのでは? と骨の髄まで鋼鉄化したワタクシなどでも冷静に思ったりするわけだ。だって、「ボンデージ=bondage」ってそもそも、拘束とか束縛、囚われの身という意味を表す英語なのだから。ある程度激しいアクションが必要になり、かつ無数の照明で灼熱になるステージにおいては、そりゃあTシャツ&短パンが快適なことは言うまでもない。

しかしそこをあえてのボンデージ、レザーで挑むところにメタル魂が発生する。

要するに、不自由な中でいかに自分がエネルギーを爆発させることができるか。自由を勝ち取ることができるか――その精神性がメタルサウンドと相まって、フロアのオーディエンスを熱くさせるのである。ピッチピチのパンツを履いて、2時間ないし3時間汗だくでパフォーマンスしてみせる、ザ・ガマン。それこそがメタルであり、エンタテインメントなのだ。

メタルを源流とするトライヴ感

さらに言えば、メタル・ファッションという基本となる型を設けることで、そこからの発展系というものが生じやすく、また、メタルを源流としているというトライヴ感を生みやすい。そうすると、世間へのアピール(というか説明)を一段階飛ばすことができる。あ、メタルの人たちなのね、と。もちろん、メタルの人と簡単に理解されることのリスクはあるにはあるのだが。

服装で音楽ジャンルがある程度わかってもらえるというのは、バンドにとってもオーディエンスにとってもコミュニケーションという意味で大変有用性があるのではないかと思う。

ある種の昆虫は、黄色や赤といった派手な色を纏うことで自らに毒があると注意喚起しているのだという話を聞いたことがある。だから俺をあんまり刺激するんじゃないぞと。

また例えば、警察官には制服があるからどこからどう見てもその人が警察官だとわかるわけだ。警察官の前でわざわざ犯罪をしでかそうという気にはならないだろうし、警察官も制服を着ているからこそ明らかに強面な人にも向かっていけるという面がある。同じように、お医者さんには白衣という制服がある。もし、急病になって駆け込んだ病院の先生が、ピコ太郎さんみたいな金ピカのスーツに豹柄のスカーフを肩からかけていたら、途端に不安になるだろう。

逆に言えば、制服を着さえすれば、その職業に従事している人に見えるという効果もある。それを利用したのが、日本犯罪史において最も有名な未解決事件である「三億円事件」だ(白バイ警官に扮して現金輸送車から現金を奪った)。

このように、制服というのは職業や地位などを固定、つまり束縛するものなのだ。最近では、学校でも制服がなくなる傾向にあるというし、カジュアル・オン・フライデーなどサラリーマンの方も比較的自由な服装で働くのが当たり前となってきている。しかしワタクシは、あえて制服の必要性を訴えたい。

ヒーローのところでも述べたが、例えば制服を変身グッズだと思ってみたらどうだろう。制服を着たらスイッチを入れて、会社や学校というステージに上がるのだ。そして大事なのは、その制服を着ている間の自分が果たして本当の自分かどうかということだ。仕事が生きがいだ、学校に行くのが楽しくて仕方がないという人は、制服を着て本当の自分になればいい。しかしそうじゃない場合はこのように考えたらどうだろう。本当の自分を隠すために制服を着て偽りの自分に変身するのだと。本当の自分になれるのは、家に帰って制服を脱いで、パソコンの画面に向き合った時かもしれないし、週末にひとりキャンプに行って焚き火を眺めている時かもしれない。

制服があるからこそ、解放される瞬間がある。

「おしゃれは我慢なのよ」

何とも奥深い名言である。

かの、カルロス・ゴーン氏が保釈時に、人目を欺くために上下5800円のワークマンの作業着に身を包んだ姿をテレビ画面で目にした時、ワタクシはそっとこの言葉を贈った。ゴーンはゴーンではない誰かに変身したかったに違いない……。

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Illustration by ARIMETAL

<第11回に続く>

恋か? 友情か? 走れメタル/メタルか?メタルじゃないか?⑨

ダ・ヴィンチニュース

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