彼を責める言葉がそのまま自分に刺さる。最低な私を彼に「ふらせた」

彼を責める言葉がそのまま自分に刺さる。最低な私を彼に「ふらせた」

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2022/08/06
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私は前の彼氏と、結婚という人生最大の決断を目前にして、別れた。

ふったのでも、ふられたのでもなく「私が彼にふらせた」という表現が正しい。

彼は大学の先輩だった。

複数人で遊ぶ学生が多い中、彼は1対1で遊ぶのが好きで、よくいろんな女子と2人で出かけている、と噂で聞いていた。

彼氏いない歴=年齢の私には、付き合ってもいない異性と2人きりで遊ぶという行動が理解できなかった。

しかし、私はなぜかその相手に選ばれてしまったのである。

理解できないとはいえ、先輩の誘いを断るまでの用事もなく、暇を持て余すよりは……という後ろ向きな理由で、彼と出かけた。

遊ぶといっても、行き帰りや食事中、彼が繰り出す色々な話を聞くばかり。

退屈に聞こえるが、私はいつも他人の顔色を窺って、何を話そうか悩むことが多かったので、相手の話を聞くだけで済むのは楽だった。

後に彼は、どんな話でも聞いてくれる私は優しく、居心地がよかった、と教えてくれた。

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それぞれに好きな人ができ、失恋した。人間関係のいざこざも経験した。

彼とは、日々抱える様々な悩みを定期的に吐き出し合う関係になった。

数か月に1度くらいだった誘いの頻度が、急に増えた。

いつの間にか毎日LINEをするようになった。

軽いスキンシップをとるようになった。

絶対的な好意を感じる時間は楽しかった。

そのうち、彼から告白され、付き合い始めた。

私たちは、恋愛がうまくいっていると他のこともうまくいった。逆に言えば、勉強や仕事がうまくいかないときには精神的に苦しくなり、恋愛面もうまくいかなくなった。

別れの危機は、いつもどちらかがとても忙しく辛い時に訪れた。

時間を置いて、忙しさが一段落すると、また楽しく過ごせるようになった。

辛い時に寄り添って支え合うことができない関係なんて、いつかうまくいかなくなる。

今の私ならすぐ気づくのに、当事者たちは大丈夫だと信じていた。

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付き合って3年が過ぎた頃、彼が仕事で県外に行くことになり、ついてきてほしいと言われた。

結婚を前提に、という意味だと理解した。二つ返事で了承した。

私が職場に伝え、退職するまでの数か月間遠距離恋愛をした後、寿退社をして、彼のもとに飛んでいく準備を進めた。

お互いの両親にも会い、顔合わせの場を設ける準備をした。

地元の友人と会えなくなる前に、食事や旅行に行き、思い出を作った。

そんな慌ただしい最中、彼の住む家に数日遊びに行った。

共同生活が近づき浮かれる私とは対照的に、彼は慣れない仕事で疲れ切っていた。

一緒に外出しても、なんだか噛み合わない。

違和感を覚えつつ、地元に帰った後、彼からの連絡が途絶えた。

連絡も取れないくらい忙しいのかな。

一言でいいから返信してくれればいいのに。

ふと、私たちの関係に不安がよぎった。

そう。私たちは、どちらかがとても忙しく辛い時に、別れの危機に瀕してきた。

まさか、そんな訳ないよね、と不安を押し殺す。

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2週間後、彼から電話が来た。

「ごめん。結婚が考えられなくなった」と。

理由を尋ねても、それ以上のことは言わず、謝罪の言葉しか口にしない彼。

なんで、今更。

ついてきてほしいって言ったじゃん。

だから仕事辞めたんだよ。

友達や先輩後輩も祝福してくれてるんだよ。

お互いの両親にも挨拶したじゃん。

別れなくていいから、少し時間を置こうよ。

前みたいに、気持ちが変わるかもしれないよ。

今別れたら、あなた、絶対後悔するよ。

必死に引き留める私の言葉は、気づけば、ブーメランのように私の心に突き刺さっていた。

私、仕事辞めちゃったよ。

両親にも友達にも結婚するって言っちゃったよ。

もう引き返せないよ。

別れたくないから、少し時間を置こうよ。

前みたいに、気持ちが変わってほしい。

今別れたら、私、この先どうしたらいいの?

私は、彼との結婚にひどく依存していたのだ。

なんて最低な女になっていたんだろう。

その後何度か電話で話すものの、意見は平行線をたどった。

それどころか、話す約束をしたにも関わらず連絡がとれず、後になって実は仕事だったと知った日もあった。

彼に対する不信感が芽生えた。本当にもうだめかもしれない、と思い始めた。

直接話せば何か変わるかもしれない、とわずかな希望を抱き、彼のもとに行って直接話した。

しかし、結局何も変わらなかった。

あ、もうだめだ。張っていた糸がぷつりと切れた。

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「『別れよう』って言ってほしいの?」

と、私は真顔で言った。

彼は驚いた表情をしていた。

言った私も内心驚いた。でも、もう引き返せない。

少し間をおいて「別れよう」と彼が言った。

こうして、「私が彼にふらせた」ことにより、私たちの関係は終わった。

なぜあんな言葉が口から出たのか。

彼に最後だけでも責任を持って欲しかった、という理由は、私がこの一部始終を話すときに使う、表向きのもの。

本当は、彼との結婚に依存する最低な私を、彼から切り捨ててほしかったのだ。

別れた経緯を話した相手は、皆そろって私に同情し、優しい言葉をかけてくれた。

その度に、最低な自分がいたという事実が私を苦しめた。

前回のエッセイ(「結婚に進まない彼の隣で眺める、『家族』ができた友人のアイコン」)に書いたように、私は再び結婚を前にもやもやしている。

あの頃とは相手も違うし、状況も違う。大丈夫と信じながら、再び最低な女になるなよ、と自分を諭す日々である。

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さなぎ

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