アメリカ議会襲撃は阻止できた? 今も残る違和感

アメリカ議会襲撃は阻止できた? 今も残る違和感

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/01/14
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アメリカで、暴徒化したトランプ支持者たちが米連邦議会になだれ込んで、世界を震撼させたのは1月6日のこと。

暴動では結局5人が死亡したのだが、トランプ陣営などが煽ってきた不正選挙という主張が、結果的に人命が失われる事態に発展したと言っても過言ではないだろう。

ただ今回の暴動はその前から、予想がつくものだった。

大統領選前から警戒 襲撃は予想できたのに

筆者は大統領選前後に取材のためにワシントンDCに滞在していたが、大統領選の投票日もトランプが劣勢になれば暴動が起きるのではないかと、かなり警戒されていた。

ホワイトハウス周辺のビルはほとんどがガラス窓に板を取り付けて補強し、破壊されないように対処していた。おかげで、ワシントンDCの中心部はどこに行ってもビルの木の板で覆われているという異様な風景だった。

またホワイトハウス周辺には追加でフェンスが設置され、警察などの数も増え、誰も下手に近づけない。そして選挙当日や、ジョー・バイデン候補の当確が出た日などは、武装した警察たちがホワイトハウス周辺を取り囲んで集まる人たちに目を光らせていた。

今回暴動が起きた1月6日は議会で選挙人投票を確定する日であり、昨年12月8日に選挙人投票が確定した後から年末にかけて、トランプ支持者らによる大規模なデモが行われると報じられていた。にもかかわらず食い止められなかった背景について、腑に落ちない点もある。

トランプ自身も、いまでは凍結されてしまったツイッターで、12月19日には「1月6日、ワシントンDCででかいデモが。ワイルドになるからぜひ参加を」と、1月1日には「1月6日午前11時、ワシントンDCで大規模な抗議集会が開かれる」とツイートしてイベントを煽っていた。そして当日、トランプや、トランプの顧問弁護士であるルディ・ジュリアーニ氏などもスピーチを行なっており、参加者らのテンションが上がるのも想像付いた。

さらに議会に突入する計画も情報交換がオンラインで行われていたことが分かっている。議事堂への襲撃には、元軍人や地方の元政治家、過激思想のネオナチや陰謀論集団のQアノンなどの活動家らが関与しており、結束バンドなどを準備するなど計画的だったことも示唆されている(ちなみに16、17日にも連邦施設の襲撃を予定していた)。

当然ながら、連邦議会からそう遠くない場所に本部を構えるFBI(連邦捜査局)もそうした動向はきっちりと把握していたという。つまりトランプの選挙不正発言に便乗して政府への「テロ」を狙った人たちが現れることを、当然ながらわかっていた。

事実、当日に支持者らが議会周辺で不穏な動きをするなか、司法省は米議会警察にFBIを出そうかと提案したが、結局は警備に加わっていない。米議会警察は、2000人以上の武装部隊と4600万ドル以上の予算をもつ組織だが、それでも不十分とFBIは見ていたのである。

国防総省も武装した州兵を動員できると事前に米議会警察に伝えてはいた。結果的には米議会警察や議事堂の警備局長などが辞職に追い込まれた。歴史に残る大失態を犯したとして記憶されるだろう。

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議事堂を襲撃して、連邦警察に取り押さえられる抗議者ら (Getty Images)

治安関係者らはメディアなどで、当局者は「自国民に強硬な取り締まりを行うのを避けたかった」「準備不足だった」「トランプ支持者らがあまりに多勢だったために止められるレベルではなかった」などと説明している。だが本当にそれだけなのか、疑問も残る。

アメリカの首都で取材しているとわかるが、ホワイトハウスや連邦議会など政府の主要な建物は常にテロの危険性があるために、普段から厳重な警備が敷かれている。またデモなどイベントなどがある際には、すでに述べた通り、さらに警備を増やしたり、フェンスを追加するなど警戒が高まる。冗談でも近づこうものなら撃ち殺されても仕方がない──そんな空気すらある。

にもかかわらず来ると分かっていた人たちに侵入を許したのは、やはり腑に落ちないものがある。

少なくとも、テロ集団に対峙するような強硬な対策が取られなかったのは事実だ。

ちなみにDCの中心部は通信ネットワークがかなり整備されており、当日議会周辺にいた人たちの身元は簡単に突き止められる。また動画などをシェアしている人も多く、顔認証もしやすい。そのため、暴徒らの多くが逮捕などされるのは時間の問題となるだろう。つまり問題が起きた後始末は難なくできるという計算はあった。

議会が暴徒に襲われるのは、想定内だったのかもしれない。きっちりと、トランプ政権を終わらせるための。

トランプを罷免すべき、と沸き上がる声

こんな事態を引き起こしてもまだ、トランプ支持者たちの暴走は止まらない。1月8日には、共和党の重鎮でトランプを見放したリンゼー・グラム上院議員が、ワシントンD.C.のローガン空港でトランプ支持らに取り囲まれて「裏切り者」「ゴミ人間」「今後どこに行っても残りの人生こうやって付け回されるぞ」などと野次られる様子が動画で出回った。

また、同じく共和党の大物であるミット・ロムニー上院議員も、空港でトランプ支持者らに付きまとわれたり、飛行機の中で「裏切り者」と叫ばれる動画が共有されている。

グラム上院議員はこの出来事が影響したのかどうかはわからないが、夜にTV番組に出演し、これ以上国を破壊しないためにトランプを罷免しないよう求めると発言した。

とにかくこうしてトランプ政権は終わる。議会への襲撃事件は、トランプ政権の4年間のまさに「総決算」だったと言えよう。トランプが4年をかけて作り上げてきた憎悪は見事なまでに崩れ去った日になった。

いま議会では民主党議員からトランプを人気終了前に罷免すべきだとの動きが出ている。1月20日のバイデン新大統領就任までに何か「ドラマ」があるかもしれない。ただ少なくとも、トランプ時代が再びやってくることはないだろう。

連載:国際ジャーナリストのアメリカ深層メモ "Eye-opener"

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