中山秀征「『テレビはもう無理なことが多くて』と言ってしまってはダメ」 愛ある叱咤激励

中山秀征「『テレビはもう無理なことが多くて』と言ってしまってはダメ」 愛ある叱咤激励

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  • 更新日:2022/09/23
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中山秀征はテレビ界に愛にあふれるメッセージを送った【写真:(C)新潮社】

番組作りの「継承」に危機感 YouTubeではひろゆき氏と動画配信で対談

芸能界デビューして41年、「テレビタレント」として数々の番組に出演し、MCの才覚を発揮してきた中山秀征(55)は、テレビ界への恩返しを込めて「週刊新潮」で新連載を始めた。一方で、最近はYouTubeへの出演も。時代に伴う番組制作やタレントの意識の変化、コンプライアンスとのバランス…。「元気がない」と指摘されるテレビ界への、愛にあふれるからこそ厳しくもあるメッセージとは。(取材・文=吉原知也)

8月から始まった連載のタイトルは「テレビタレント、やってます。」。テレビへの熱い思いを残そうと、自ら新潮社にオファーして実現した。中山と飯島直子、松本明子のトリオで90年代に人気を博し、先日22年ぶりに限定復活で放送された「DAISUKI!」や、名物音楽バラエティー「THE 夜もヒッパレ」(いずれも日本テレビ系)などを取り上げ、話題を集めている。テレビで育ち、テレビで生きてきたからこそ、現状に複雑な思いがあるという。

「日本でテレビの本放送が始まったのは1953年と聞きました。僕らが80年代にデビューした時はテレビの歴史自体はそこまでなかったんですよね。可能性と勢いがあったのが80年代でした。家でできないことをやる、それがテレビだったんです。例えば、コントでケーキに顔を突っ込む。これは、志村けんさんも『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)でもやっていました。あれを今やったら、『子どもがまねをするからダメ』と言われて、『このケーキは後でスタッフがおいしくいただきました』とテロップが出ると思います。あれはあくまでもテレビの中の世界なんです。家にケーキがあっても、本当に突っ込んだ人を見たことないでしょう? 実際にやったら怒られるし、やられたら怒った方がいい。だから痛快なんです。大人に怒られることを代わりにテレビがやって答えのようなものを出してくれるので、子どもたちは痛快で喜ぶ。世間にも理解はありました。

今のエンターテインメントは難しくなってきています。かつて『新春かくし芸大会』(同)で大先輩のハナ肇さんがなりきった銅像を洗うお笑いコーナーがありました。出演者や若手アイドルが洗うと、ハナ肇さんが『痛え、バカヤロー』と怒る。このオチでみんなが笑うというものだったんです。小麦粉や胃薬をせっけんに見立てて洗っていました。ところが、時がたって、同じコントを洗剤でやってしまったと聞きました。笑福亭鶴瓶さんが久しぶりにやった時に洗剤で洗っちゃったと大騒ぎになりました。僕は、継承ができていないんだなと感じました。本来は危なくないように計算してやっていたものが、継承されていないがために、新しい人たちがやると危ないことが起きる可能性が出てくるわけです」

番組作りの伝統と技術を引き継ぐことは大事だ。憂いの思いは続く。

「それに、『熱湯風呂』なんかでも、本当に60度の熱湯に入るわけではありません。おでんもそうですよ。ちゃんと計算されているわけです。あれは、芸人やコメディアンの巧みな芝居で成り立っているんです。でも、それを視聴者に説明しちゃダメなんです。マジックの種明かしは絶対にしないのと同じです。なんでも明確に説明しないといけない、ということではネタが作れなくなっちゃいますよ。

「今のテレビ界はコンプライアンスで言われていることより、さらに小さい範囲」

昔はしっかりと教えていたんです。テレビ業界では伝統的なものが途切れ出しているのかなと。ちょっと悲しいことでもあります。本来、テレビ番組は事前に練習して作るもの。志村さんのコントはまさにそうで、作り込んでいらっしゃいました。僕らの『夜もヒッパレ』はリハーサルに加えて踊りと歌の稽古があって、それで本番は最初から通しで撮る。時間をかけて作っていました。現在の番組制作はできるだけタイトに、効率的に、です。もちろんタイトにできる部分もありますが、どれもこれもタイトになってしまい、『短時間でこのぐらいの制作費でやればこんな感じかな』という感覚になっているのではないでしょうか。そうすると、内容が似たり寄ったりになりますよね。そこで知恵を使わないといけないのでしょうが、それでもこの状況では難しいのかなとも感じています。先日、24時間テレビ(日本テレビ)で『夜もヒッパレ』をやらせてもらい、『DAISUKI!』も久々に放送されました。僕らの知ってることであれば伝えられることがあるし、我々タレント側が技術さんたちに『こんなふうにやって作っていたんだよ』と伝えていかなきゃ、と改めて感じました」

そんな第一線のベテランは、今年に入ってYouTubeに出演。ひろゆき氏と動画配信で対談したり、自らの半生を語る番組に出演したり。ぶっちゃけ、YouTubeはどうなのか。

「あんなに長くしゃべってもいい、というものはないですよ。テレビは編集があって、生放送には限りがある。ラジオだって時間が限られています。YouTubeは大体このぐらいでいいです、みたいな感じで。あの2つの番組はかなり長い時間しゃべったのですが、それを長尺で大半を使うんですよ。肩の力を抜いてしゃべるという部分では、いいのかなと思いました。どこでもスマホで見れるという意味で、大画面に映すテレビと違って、スマホの画面サイズにマッチしているのかな。それに、ちょっとラジオに近い感覚を持ちました。深夜ラジオはリスナーだけに語りかけて“ささげる”ことが魅力なのですが、その深夜ラジオで延々としゃべっていていいよと言われた時の感じがしました。

あまり作り込まず編集をできるだけやらずに見せる、という点では、『DAISUKI!』に似ているなと思ったんです。あの番組はノー編集でやっていた時期もあったんですよ。フリとオチを30秒に1回のペースでやるのがお笑いだとすれば、『DAISUKI!』はずっとうねっているんです。オチが来るのか来ないのか分からないけど、オチが来るまで全部見せちゃうみたいな。当時は賛否両論がありました。『ダラダラしている』『遊んでいるのをそのまま流してる』と。しかも、それが悪いことだと言われたわけですからね。僕らからすれば新しいことで楽しかったのですが、あの3人だからこそできたのだと思っています。

話を戻しますが、YouTubeはなくならないだろうし、発展すると思います。だからと言って、YouTubeがヒットするからテレビはなくなるということはないと思っています。YouTube自体も、内容の基準などについて成熟していくものだと思っています」

そして、最後にテレビ業界への叱咤(しった)激励を聞かせてくれた。

「テレビに出ている人が『テレビはもう無理なことが多くて』と言ってしまってはダメ。タレントが相当気を使っている部分もありますが、我々がそれを言ってしまうと、世間の皆さんは『そうなんだ、テレビはできないんだ。じゃあ違うメディアがいいのかな』と思ってしまいます。コンプライアンスは重要です。でも、今のテレビ界は、コンプライアンスで言われていることより、さらに小さい範囲で作っているような気がします。『絶対に怒られないように作る』感じになっています。守りに入ることはすごく大事ですが、やっぱり攻めることもしていかないと。攻めることができないと、防御もできなくなってくる。本末転倒なところに陥ってしまう不安があります。テレビにできることはまだまだあると信じています」

□中山秀征(なかやま・ひでゆき)、1967年7月31日、群馬県出まれ。テレビタレント。14歳でデビューして以来40年以上にわたり、バラエティー番組や情報番組の司会、俳優、歌手として活躍している。地元愛も強く、ぐんま大使、藤岡市観光大使を務めている。

吉原知也

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