人材育成の2大課題は時間と費用 解決手順や役立つサービスを紹介

人材育成の2大課題は時間と費用 解決手順や役立つサービスを紹介

  • ツギノジダイ
  • 更新日:2021/06/11
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人材育成を行うことで他の経営資源の底上げも期待できます

人材育成に取り組まれる経営者は多いですが、課題もつきものです。課題を放置したままでいると生産性の低下や離職の増加など深刻な問題に発展します。この記事では、多くの経営者が悩む「時間がない」「費用がない」という2つの課題の要因・解決の手順・役に立つサービスを社会保険労務士が解説します。

人材育成の重要性

会社の経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われています。人材育成とは、経営資源の1つである「ヒト」に会社が投資することです。

モノ・カネ・情報という経営資源は、ヒトが関わることで価値が大きく上下します。ヒトに投資し、技能や資質を研鑽することで、モノ・カネ・情報の価値も底上げされることでしょう。

会社の成長を望み、まだ人材育成に取り組まれていない場合は、ぜひ人材育成を実施することをおすすめします。

人材育成に悩む経営者

人材育成に取り組まれながらも、その手法や課題に悩まれる経営者は多くいます。

下記は、厚生労働省の「平成30年版 労働経済の分析 ―働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について―」(2018(平成30)年9月公開)(PDF方式:1.84MB)に掲載された調査結果です(調査対象・有効調査数:従業員100人以上の企業・2,260社)。

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平成30年版 労働経済の分析 ―働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について― p.146

これによれば、人材育成における課題として、次のような順位で挙げられています。

従業員の業務が多忙で、人材育成に充てる時間を確保できない(53.5%)

上長等の育成能力や指導意識が不足している(45.5%)

従業員が能力開発に取り組むため不在にしても、その間、他の人が業務を代替できる体制が構築できていない(39.5%)

人材育成を受ける従業員側の意欲が低い(39.1%)

社内で人材育成を積極的に行う雰囲気がない(30.4%)

課題に悩まれる経営者もいる一方で、最近ではデジタル技術の導入により、課題解消に繋がったという事例も見聞きします。

課題解決のためには、まず課題を正しく認識することが必要です。

そのためには、上記の図や先に述べた5つの人材育成における多くある課題を把握しておき、会社がどの状態に当てはまるか考えると良いでしょう。

課題解決は早急に

人材育成における課題を放置したままでいると、次の2つの問題に直面します。

労働生産性の低下

従業員の労働意欲の低下

労働生産性の低下は、会社の経営目標に資する人材が育たず、売上が向上しないことで引き起こされます。

従業員の労働意欲の低下は、賃金・待遇・業務内容等の設定において従業員が不公平感・不利益感を覚えることで起こり、最悪の場合離職に至ります。

わかりやすいケースとして、正社員と非正規社員がいる職場で正社員のみ人材育成を行っていたところ、非正規社員の約3割が6カ月で離職していた事例があります。

課題が経営上の大きな問題へ発展する前に、早急に解決することが望まれます。次に、2つの課題と解決策について解説します。

人材育成の課題と解決策①

課題「人材育成に充てる時間確保」

人材育成に悩む経営者で取り上げたように、時間確保については多くの経営者が頭を悩ませている課題です。

人材育成は、会社の理念や人材育成方針を従業員に理解してもらった後に、従業員各々が人材育成目標に取り組みます。

人材育成方針を理解してもらうための機会や、目標達成への取り組みなど時間を要する場面は多々あります。

人材育成の時間が確保できない要因としては、「手順が具体化されておらず取り組みにくい」ことが挙げられます。

「目の前の業務に追われ、人材育成目標に取り組めない」という従業員の声もあるかもしれません。

ですが、目標達成のための手順を細かいレベルまで具体化すれば、何かしら1つの行動には繋がります。

解決策「人材育成目標の再設定と手順の具体化」

解決策としては「人材育成目標の再設定と手順の具体化」があります。次の手順で見直しを図ってみましょう。

会社の理念や経営目標を明確にする

人材育成方針を定める

人材育成方針と目標設定の期間を従業員に周知する

人材育成目標を設定する

人材育成目標を達成するためのアクションプランを作る

経営者・従業員ともに、つい目標を過大に設定してしまうことが多いです。

人材育成目標を設定する際には、予め会社の人材育成方針を伝え、期間に沿った内容の目標を設定するようにしましょう。

労働政策研究・研修機構が労働者10,000人を対象に実施した「勤務している会社の人材育成や能力開発の方針は明確か」という調査(PDF方式:1.47MB)では、39.8%が「どちらとも言えない」、25.5%が「そもそも方針があるかどうかわからない」と回答しています。

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記者発表「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(企業調査、労働者調査)2021年2月5日|労働政策研究・研修機構(JILPT) p.19

人材育成目標の設定を従業員に委ねる場合には、会社の人材育成方針を繰り返し伝え、会社が求める人材と人材育成目標に乖離が発生しないようにしましょう。

役に立つサービス「キャリア形成サポートセンター」

従業員の人材育成目標を設定するのに役立つサービスが厚生労働省委託事業の1つ「キャリア形成サポートセンター」です。

会社に対しては人材育成や人事評価についての助言・指導を行います。従業員に対しては、職業生活設計の専門家であるキャリアコンサルタントが各従業員の自己理解を促進し、キャリア目標設計を助けます。

本サービスを活用することで「現実的に実行可能な人材育成目標の設定」に近づくことでしょう。

利用料は無料です。ただし、一定の上限等があります。「キャリア形成サポートセンター」の公式サイトはこちら。

解決事例

人材育成目標の設定を従業員に委ねており、自己評価の平均目標達成率が約70%という会社がありました。

従業員の声として多かったのはやはり「日々の業務に追われ目標に取り組む時間が無い」というものでした。

その会社はまず評価する役職階層について、会社理念と部下に過大な目標を求めないようにミーティングを実施し、その後従業員が作成する「目標管理書」について極力5W1Hでの記載をするように促しました。

What(目標)

When(いつまでに)

Where((時間的な)どこで)

Who(教育者・関係者など)

Why(なぜこの目標か)

How(どのように)

まさに手順の具体化です。直後の自己評価平均目標達成率は約90%に上昇したことから、その会社では次期も同様の目標管理書を作成してもらうようです。

課題「人材育成に充てる時間確保」へのポイントまとめ

人材育成方針と目標設定期間を社内で共有する

→目標を過大なものにしない

人材育成目標達成のための手順を具体化する

→具体的であればあるほど行動までに時間がかからない

キャリア形成サポートセンターを活用するのも手

→無料で利用でき、社員のモチベーションアップになる

人材育成の課題と解決策②

課題「人材育成にコストをかけられない」

ここで言うコストは金銭といった費用のほか、時間・管理的コストを指します。

費用:研修費用、講師費用、場所レンタル費用、新規ツール導入費用

時間:受講者側・教育者側の労働時間

管理:紙資料の保管場所、マニュアル等のバージョン管理の手間

人材育成というヒトへの投資効果は事前に算出できるものでもなく、予算が限られているうえ、同じヒトに対する投資区分の「採用」と比べて優先順位が低い場合もあります。

離職率が高い職場だと、会社は定着する可能性が低い人材に対してコストをかける気持ちになれず、従業員としては「人材育成に力を入れていない」、「自分はこの会社や仕事を通して成長できない」と考え離職する、というループに陥る危険性があります。

解決策「研修内容・業務マニュアルの見直し」

解決策として次の2つを挙げます。

研修内容・回数の見直し

研修の内容が前年のままということはありませんか?研修後には受講した従業員からアンケートを必ずとるようにして、年度毎に研修内容・回数の見直しを行いましょう。

例えば、新型コロナウイルス感染症の影響により窓口業務が減少し、顧客電話対応を増やしたにも関わらず、窓口対応研修を前年のまま行い、電話対応研修を行っていないのは研修費用のかけどころが誤っている可能性があります。

現時点での業務内容に即していない内容の研修を行っても余分に研修費用がかかってしまいます。

e-ラーニングやオンライン研修の種類が各段に増え、サービスの価格帯も豊富になった2021(令和3)年度は研修内容の見直しに適していると言えます。

業務マニュアルの作成・見直し

業務マニュアルが無いと、OJTを実施する際に教育者の時間を多く消費することとなり、その間の作業効率が低下します。

マニュアルがあった場合でも、内容がアップデートされていないと、誤ったオペレーションをしたりフォロー従業員の時間を消費したりします。

業務マニュアルの作成や刷新を行ったうえで、グループウェアやクラウド上でマニュアルを確認できるようにすると、マニュアル管理コストの削減が期待できます。

役に立つサービス「中小企業デジタル化応援隊事業」

研修やマニュアルのオンライン化・デジタル化に役立つサービスが「中小企業デジタル化応援隊事業」です。

中小企業庁が管轄する中小企業基盤整備機構の事業で、ITに関する課題を持つ中小企業等とIT専門家を繋ぐプラットフォームとなっています。

中小企業は500円/時間(税込)の費用負担でIT専門家による支援を受けることができます。

2020(令和2)年はテレワークやe-ラーニングが急速に進みました。

オンライン研修の環境作りやマニュアルのクラウド共有化をしたくとも何から手をつけていいのか迷われている経営者の方は、本事業に支援を求めてみてはいかがでしょうか。

中小企業デジタル化応援隊事業の公式サイトはこちら。

解決事例

海外でチェーン展開をしている飲食店で、人材育成のネックとなっていたのは教育者の交通費とマニュアル作成・印刷に係る費用でした。

この会社ではマニュアルのペーパーレス化としてマニュアルに関するITツールを導入し、タブレットでマニュアルを動画で確認できるようにしました。マニュアルの印刷費用だけでも85%の削減に至ったようです。

課題「人材育成にコストをかけられない」へのポイントまとめ

研修内容・回数、業務マニュアルの作成・見直しを行う

→前年のまま、古い内容のままになっていると無駄なコストがかかっている可能性大

研修のオンライン化やマニュアルのデジタル化を図る

→交通費、場所代、印刷代といった費用のほか、時間や管理の手間の削減

人材育成で課題を発生させないためには

初めての取り組みには課題がつきものです。人材育成の課題発生を防ぐためには、会社が人材育成の方針を明確に定め、計画立てることが重要だと思います。

詳しくは記事「人材育成で育てる能力とその手法、経営者が気を付けたいポイント」の「経営者に求められることは何か」をご覧ください。

緒方瑛利

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