
講談社コミックス別冊フレンド『ライフ』第20巻 (講談社)
アニメや漫画ではしばしば、見ているこちらの胸が痛くなるようないわゆる「胸糞展開」が描かれることがある。それは少年向けのバトル漫画の敵たちの非道な行為だけでなく、恋愛や人間関係を物語の軸としている少女漫画においても内容が濃かったり露骨だったりするものが珍しくない。大人になった今振り返っても胸がズキズキと傷んでしまう、名作少女漫画の「胸糞描写」をいくつか紹介したい。
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■いじめに立ち向かう女子高生の姿を描く『ライフ』
まずは2007年にはドラマ化され大きな話題となった、すえのぶけいこ氏による漫画『ライフ』から。2002年に『別冊フレンド』で連載がスタートした同作のテーマは「いじめ」だ。主人公・椎葉歩は、中学生のころに友人とのいざこざが原因で心を病み、高校に入ってから安西愛海と仲良くなり次第に明るさを取り戻すが、愛海の彼氏を横取りしようとしていると逆恨みされ、憎悪を向けられるようになってしまう。
ドラマでの「おめえの席はねーから!」が非常に有名なセリフとなったが、愛海のいじめはエスカレートし、「あんたの席ないから」と机を窓から投げ捨てるのは序の口。担任も巻き込み、歩をいじめ抜く。しかし、次第に愛海はクラスから白い目で見られる。
怒りに飲み込まれた愛海は、想い通りに動かなかった担任の目潰ししようとするほどになっていく。全身に怒りのオーラを纏う愛海や担任の姿もまた、ホラー漫画のようで恐怖心を覚えたものだ。
愛海が親に自分がいじめられていると思わせるために自らの体を汚すシーンは、胸をえぐられる描写の一つだろう。公園の前を通った愛海は、砂の山を作っている子どもたちを見て何を思ったか猛ダッシュで砂の山に頭から突っ込んでいったのだ。
当然子どもたちは驚き、持っていたシャベルを投げつける。愛海は子どもたちを凄まじい形相で睨み、シャベルをブランコに投げつけて子どもたちを泣かせたのだ。このときの躍動感はかなり恐ろしかった。
■ドラマも大ヒット、恋愛漫画の金字塔『花より男子』
次に紹介する神尾葉子氏による『花より男子』も、国内でのドラマ化だけでなく海外でも実写ドラマ化されている人気作品。1992年に『マーガレット』で連載がスタートした、同誌を代表するラブコメ作品だが、こちらも胸をえぐられる描写が少なくない漫画でもある。
主人公は、女子高生の牧野つくし。英徳学園に編入した彼女は、学園を牛耳る道明寺司・花沢類・西門総二郎・美作あきらからなる「F4」の存在を知る。負けん気の強いつくしはと何かと衝突しつつも、道明寺・花沢との淡い三角関係が始まっていくのだった。
イケメン・超絶金持ちというハイスペックゆえ、周囲に口答えをする者がいない無敵の「F4」はやりたい放題だった。「赤札」を気に入らない生徒の下駄箱に張り、その赤札を見た生徒たちは一丸となって対象をいじめるのだ。つくしも対象になり、生徒たちからいじめを受けてしまう。
このいじめのシーンが、かなりエグいものであった。生徒たちがつくしの顔に向かって卵を投げつけてみたり、両手を布で縛りながら、校内を車で引きずろうとしたこともある。つくしの精神力が強かったから良いものの、見ているこちらの胸が傷んだ。
つくしへのいじめはF4が直接手を下すわけではないが、道明寺は過去に赤札対象の生徒をプールに沈めたり、お腹を蹴って内臓破裂させたりもしている。さらに、この学園には陰湿ないじめを繰り返すリリーズと呼ばれる3人組の女子もいた。彼女らはつくしに対しても一切反省の色がなかったので、F4よりも底意地が悪いかもしれない。
■1人の生徒がクラス崩壊を招いた『こどものおもちゃ』
最後は、1994年から『りぼん』で連載された小花美穂氏の漫画『こどものおもちゃ』に登場した羽山秋人を紹介する。同作は、小学生の恋愛だけでなくいじめ、捨て子といったヘビーな問題を取り扱っており、人気子役として活動していた小学生の倉田紗南とクラスメイト・羽山秋人との恋や彼女自身の複雑な生い立ちを、大人目線ではなく子どもならではの視点から描いている。
倉田紗南と親しくなる前の羽山秋人は、家庭の事情もありとても荒れていた。彼らのいた6年3組は羽山のせいで、崩壊寸前まで追い込まれてしまっていたのだ。男子は羽山を崇拝し、同級生ながら「羽山さん」と敬うほどであった。
羽山たちのいじめの対象は、主に自分の悪口を言っていた生徒や担任である。女性だろうと容赦なく、担任の女性教師には男子みんなでインク入りの水鉄砲を当てたり授業妨害をしたりして毎日泣かせていた。
半面、自分に対して正面からぶつかってくる紗南のことは苦手だった。先生いびりを止められたときも、中心となった紗南ではなく後ろから「オニの子っ 鬼ヶ島に帰れっ」と野次を入れたマミちゃんをターゲットにしている。
このときのマミちゃんに対するいじめがなかなか辛い描写だった。男子数人で取り囲み、池に落としたのだ。さらに、上がってこれないようにほうきで頭を押さえつける鬼畜ぶりである。池の藻を飲むほどにパニックになっていたマミちゃんが不憫でならない。
今回紹介した3作品は、いずれもいじめの度合いがひどく読者の心を締め付けた。心をえぐってくるリアリティのある胸糞描写は、少女漫画ならではかもしれない。ただ、これらの漫画はつくし・紗南・歩といった主人公がみな逞しい点が救いである。悪の元凶に立ち向かう強い姿に勇気をもらった読者も多いのではないだろうか。
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ふたまん+編集部