【ベテラン記者コラム(57)】残念なホンダのF1撤退、新たな方向性示すべき

  • SANSPO.COM
  • 更新日:2020/10/16

今月2日、ホンダは自動車のF1シリーズへパワーユニット(PU)を供給する活動を来季限りで終了すると発表した。衝撃的なニュースだったが、私は同時に「ああ、またか」とも感じた。

モータースポーツを取材するようになって、ホンダのF1撤退を見るのは3度目だ。日本のメーカーでいえば2009年のトヨタ撤退もあった。「レースはわが社のDNA」とうたったり、社長がレース活動の応援団長を自認したりしても、大手メーカーは経営上の判断で容易に切り捨てる。実例は何度も見てきた。

ホンダはF1活動終了の理由として「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指し、燃料電池車や電気自動車の開発に経営資源や人材を振り向けるとしている。

自動車業界は100年に1度の変革期にある。

地球環境変動への対応で電気自動車などゼロエミッション車への移行は不可欠だ。欧州では今後20年以内に、ハイブリッドを含む内燃機関エンジン搭載車が販売禁止となる。自動車の大市場・米国のカリフォルニア州や中国の一部でも同様の方針を示している。

急速に発展する自動運転技術や、車と家電などをつなぐIoT(モノのインターネット)社会への対応も必要。自動車メーカーには家電メーカーやインターネットベンチャー企業との闘いが待つ。

こうした状況でホンダ経営陣の考えは理解できる。ただ、経営の内実は計り知れないものの、両立の可能性はないのかと寂しくも感じる。

創業者の本田宗一郎はレースを「走る実験室」と呼んだとされる。新技術や部品を実証し、課題を洗い出し、それを克服するサイクルを短期間にできる格好の場という意味だが、人材が急速に育成される効果もあると聞かされてきた。

八郷隆弘社長もF1活動で「エネルギーマネジメント技術の進化、ジェットや量産技術など社内の技術連携を得られた。カーボンニュートラル実現に貢献できる若い技術者が育った」と語った。だったらF1という“実験室”を、人材育成を図りつつ30年後の目標へ向けた技術開発の場とするよう生かせないのか。

14年に導入された現在のPU規定はハイブリッドで、自動車業界が今後目指す方向ではない。だがF1でも30年のカーボンニュートラル実現を目指し、26年までに新PU規定を導入する予定だ。「その作業部会にはホンダにも参加してほしい」とはF1の競技責任者、ロス・ブラウン氏。そうした場で業界の意思と整合する新たな方向性を示すのが、“DNA”を持つ者の役割だろう。ホンダに、そう期待するファンは少なくないと思うのだが…。(只木信昭)

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