ミドリガメが、「特定外来生物」に指定されます

ミドリガメが、「特定外来生物」に指定されます

  • TBSラジオ
  • 更新日:2023/05/26

TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!

5月25日(木)放送後記

6月1日から、ペットとして身近なミドリガメが、「特定外来生物」に指定されます。

これにより、「逃がすのは禁止」、「売り・買いも禁止」となり、「いま、ご家庭で飼っている分は寿命まで飼い続けて下さい」ということになります。違反者には、3年以下の懲役、又は300万円以下の罰金が科されるようになり、重い罰則となりますが、なぜ規制強化なのか?

それは、ミドリガメは外来種で、各地で大繁殖しているのが問題になっているからです。

松江市の元船頭が、ミドリガメ退治

では、現場は実際にどんな状況なのか?

島根県松江市でミドリガメの駆除活動を行っている、遠藤 修一さんに伺いました。

「まつえワニの会」代表 遠藤 修一さん
松江はですね、お城があります、国宝「松江城」。その周りにですね、お堀がたくさん残っちょーだ。内堀、中堀、外堀と。で、その周りに河川がたくさん残ってて、そこにですね、ミドリガメがですね大繁殖しちょーだ。僕、堀川の船頭さんしとった、遊覧船の。お城の周りぐるーっと回るんですけどね、13年間やってたんだわ。その時に、すごい数でね、ミドリガメが。大きくなると30センチぐらいになるんだわ。甲羅干しはもうね、鈴なり。岸辺に上がってくるんだわ。それでねお客さんもね、よく知ってるんだわ。「あれ外来種かね?」っちゅう質問がよくありましたですね。それで「そうだよ」ってさ。「みっともないが」なんて言いながら、回っておりましたね。

▼松江城のお堀には、ミドリガメが大繁殖

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▼カメは陸に上がるため、水を抜く「かいぼり」をしても、効果は薄いそうです

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水の都「松江」。遠藤さんはそのお堀をまわる、「堀川遊覧船」の船頭をしていたのですが、ミドリガメが大繁殖!生態系を乱している状況です。

そこで、船頭仲間を集めて、3年前から駆除活動を開始。

お堀にワナを仕掛けるなどして、一昨年はおよそ2000匹、昨年はおよそ4000匹、捕獲しています。

▼かごあみに餌を入れて、カメを捕獲

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でも、これだけ駆除すれば、根絶も近いのかな?と思いましたが、ミドリガメの繁殖力は凄まじい。

ミドリガメ(正式にはミシシッピ アカミミガメ)は、年に2~3回、多くて5回、産卵します。そして、一回に産む卵の数は、多いと20個。松江のような天敵がいない場所では、爆発的に、増加します。

元をただせば、お祭りの「亀すくい」などが流行りましたが、そうしたペットのカメを手放す人が、大きな原因の一つですが、40年ぐらい長生きするので、捨ててしまう人も多くいるのが実態です。

そこで、遠藤さんたちは、「ミドリガメの天敵 ワニのように頑張るぞ!」という思いを込めて、自分たちのチームを「ワニの会」と名乗り、活動はまだ道半ばということです。

カメ退治・先進地域では、お堀の「蓮」が復活!

そんなカメとの格闘について、全国でも例のない「根絶」に近づいている地域もありました。

兵庫県丹波篠山市・農村環境課の、山口 達成さんのお話。

兵庫県丹波篠山市・農村環境課 山口 達成さん
かつてですね、篠山の中心地にある「篠山城跡のお堀」にはですね、篠山に生えている特有の「蓮」という、蓮の花とかレンコンとかが有名ですけれども、そういったものが、一度消失してしまったんです。その要因として「アカミミガメ」が考えられておりまして、それを駆除するために、予算を市の方でかけておったり、国さんとか県さんからお金をもらいながら、活動を2014年から継続しております。2019年頃に蓮が復活しまして、そこから倍々に増えていって、現在は約8割程度まで復活しております。一度お金をかけた後は、細く長く続けるというのも、重要かなというふうに感じております。

10年の駆除活動が、ようやく功を奏しました。

そして、この地域でも、やはりカメの住処は「お堀」で、もともと、お堀一面に、蓮が広がっていたそうですが、ミドリガメが食べつくしてゼロになりました。

それが、10年かけて復活し、ようやく元の風景に戻ってきたそうです(定期的にドローンを飛ばして状況を観察)。

さらに、丹波篠山はワナ作戦だけでなく、「カメダイヤル」を開設。

カメの事なら何でも相談できる、相談窓口で、例えば、「用水路でカメを見つけました」「地面を歩いていました」「ポンプにつまっていました」など問い合わせると、市役所が引き取ってくれる仕組みを作っています。

活動資金が行政から出ず、ボランティアは限界

でも、当然この活動にはお金もかかります。

当初、年間100万円規模の経費を投入。さらに現在も、年間30万円の予算をあてて、住民も巻き込んで活動を続けてきた成果が、ようやく実を結びました。

一方で、先ほどの松江の元船頭・遠藤さんは、「丹波篠山は、特別なんだよ」と話していました。

「まつえワニの会」代表 遠藤 修一さん<
行政のね、「島根県」「松江市」がですね、やる気があるかないかです。予算がつかないんだわ。外来種の駆除のやる気がないということ、要するに。この「カメ獲り」は、毎日(現場に)出るんだわ。毎日出ないと、カメが網から逃げちゃうんだわ、破って。なのに、今年は全然予算がつかなくてね、また。僕らも「今年はやらないよ」って宣言して、やってない。だけど、僕は代表だけん、ボランティアでやります。僕だけ!丹波篠山みたいにね、市が率先して、あんなふうにやらないと、減らない。何とかならんのかなと思うけどな…難しい!

▼ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)の捕獲会(遠藤さん提供)

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やる気があるのかないのか、島根県に取材したところ、「予算が限られている中で、ヒアリなど、優先的に駆除しなければならない生物も多くいる中、ミドリガメだけに潤沢な予算は割けない。ただ、今回、指定が特定外来生物に変わったので、今後、予算のバランスを考えていく必要は、あるかもしれない」ということでした。

ちなみに、特定外来生物の駆除は、基本的に、誰もが自由に行うことができるが、その後の処分が難しいため、まずはその場所の管理者や行政機関に相談してくださいと、環境省のホームページに記載されています。

ちなみに、この6月からルールが変わるのは、ミドリガメの他に、アメリカザリガニも同様。身近な生物の取り扱いが変わるので、注意が必要)

今回の規制強化を機に、行政も駆除活動に積極的になって欲しい。

また、駆除も重要ですが、まずは、「捨てない」、「拡げない」意識を持つことが前提。

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