最新のベンツCクラスに乗ってみてわかった長所と5つの欠点

最新のベンツCクラスに乗ってみてわかった長所と5つの欠点

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2023/03/19

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

クルマ好きの腕時計投資家、斉藤由貴生です。

普段、W140型Sクラスという、古き良き時代のメルセデスに乗っている私ですが、今回最新型のCクラス(W206)を3日間借りることができたため、最新のメルセデスベンツについてレビューしてみたいと思います。

◆ベンツの乗り味

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W206型 C200セダン

メルセデスベンツの味付けは、W220型Sクラスから日本車に近くなったといえますが、そうなったことにより、より多くの人に受け入れられる操作性になったといえます。

90年代まで、メルセデスベンツはステアリング機構に「ボール&ナット」式を用いていましたが、W210型Eクラスからは「ラック&ピニオン」を採用。ただ、W210は構造が変わったといえ、味付け自体はW202等、「ボール&ナット」を採用していた車種に近かったといえます。

それがW220型Sクラス以降からは、味付けが変化。それまでのベンツが「片手で運転しにくかった」のに対し、W220型からは、「マックのハンバーガーを食べながら、片手で運転できる」セッティングになったといえます。

W124等を愛する往年のベンツマニアからは、こういった味付けが嫌だという声もある一方、扱いやすくなったのも事実。私は、古いベンツも好きですが、片手で運転できるベンツは、「それはそれで楽で良い」と思います。

Cクラスは、2000年に登場したW203型から、イージードライブのほうへ舵を切ったといえるものの、W204型に至るまで、現行車と比べると、まだ「往年のドイツ車風味が強かった」といえます。

それが、現行の1つ前、W205型からは、さらに日本車に近くなり、乗った感覚を一言でいうならば「セルシオみたい」といった感じに。セルシオに近いとはいえ、コーナー時の踏ん張りなど、「ここぞ」という場面ではドイツ車らしさを見せるというのがW205の特徴だと感じましたが、今回のW206もそれに近いと思いました。

◆日本車に近くなったのは良いことか?

「日本車に近い」ということは、一見褒め言葉ではないように見えるかもしれませんが、決してネガティブな意味ではありません。

ベンツマニアが「名作」と認めるような古いメルセデスベンツ(90年代頃までの車種)は、初めて乗ったとき、「これのどこがいいの?」と思われるような硬さ、扱いづらさがある一方、長く乗っていると「だんだん良さがわかってくる」という感じがあります。乗ってから、1時間ぐらい運転し続けて初めて「良さ」が分かり、その後は何時間でも乗っていたくなるのがこの世代のベンツの特徴だといえます。

その一方で、それら古いベンツと同世代の日本車は、クラウンなどが代表するように「スーパースムーズ、イージードライブ」という味付け。当時のベンツとは真逆といえたわけです。こういった味付けの日本車は、乗り込んで運転し始めた瞬間は「すごく良い」となる一方で、30分も乗っていれば飽きてきて、2時間経てば体に疲れが出る、といった具合だったといえます。

つまり、90年代頃までのベンツは長距離が快適。一方、クラウンなどの日本車は、街乗りが快適だったわけです。

そして、現行Cクラスに代表されるような「日本車に近くなったベンツ」は、どうかというと、従来から定評のある長距離の快適性に加えて、街乗りといった近距離の快適性も「日本車並みに良くなった」ということになるわけです。

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1つ前のCクラス、W205後期最終型の内装

◆Cクラスの良さ

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中央の大画面はテレビの視聴がもっともメリットがあると感じた

今では、AクラスファミリーやBクラスなど、Cクラスよりも下のグレードがあるメルセデスベンツですが、かつて「Cクラスが最もエントリー」だった時代、「ベンツを買うならEクラス以上でしょ?」とかなどと揶揄されていたことがあります。

しかし、そのようにいわれていた時代のCクラス含め、歴代Cクラスは非常に良くできており、買う価値があるとても良いクルマだと思います。私は、これまで、自分のクルマ、家族のクルマ、友人のクルマや代車等、AクラスからSクラスまで様々なベンツに乗ったことがありますが、Cクラスは世代問わず「よくできている」と感じます。

Cクラスは、不思議とベンツの「味」が凝縮されているような感覚があり、どの世代に乗っても「良い」と思わせてくれる魅力があると思うのです。

今回のW206型も、前作であるW205をさらに良くした感覚があり、日本車のような扱いやすさの中に、ドイツ車のしっかり感をうちに秘めている、という感覚でした。「現行Cクラスは良いクルマか?」と言われたら、「良い」という答えになるでしょう。

◆欠点1 煽られる

ここまで、現行Cクラスを褒めてきたわけですが、ここからはダメなところを羅列していきたいと思います。基本は良くできているものの、「ここがダメ」という箇所がいくつかあったので、それらを以下にまとめました。

近頃のベンツは、一目見ただけで、どのクラスなのか分かりづらい傾向があります。現行Cクラスは、一見するとCよりも下のクラスに見えるようで、特定のドライバーからナメられてしまうようでした。

私が急ぎ目で運転していた際、トラックの前に入ったらパッシングされるなど、同じことをSクラスでやったら経験しないようなことをされてしまいました。意地悪してくるドライバーは、中年男性が多いといえますが、彼らは「自分よりも下」と感じる車種に意地悪するという傾向があるようです。これまで、多種多様な車種を運転した私は、同じ運転をしても大衆車だと意地悪されるのに、大型高級車だと意地悪されないという経験があります。

そういった意地悪ドライバーから見た今回のCクラスの判定は、どうやら「ナメてかかる見た目」らしく、意地悪されたのが残念でした。新車価格600万円もする高級車ながら、道路上でのカーストはあまり高くないというのは、お得感が弱いといえます。

◆欠点2 後ろが見づらい

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リアウィンドウが小さく、後方視界はかなり悪い

リアウィンドウがびっくりするほど小さく、目視で後方を確認するのに支障をきたしています。リアビューカメラ等のデジタル装置が充実しているといえ、リアルは重要。これだけリアガラスが小さいと、見通しが利かない範囲が広く、覆面パトカーや白バイに捕まりそうだといえます。逆にいうと、白バイ隊員からすると、W206型Cクラスセダンは、かなり捕まえやすいといえます。

◆欠点3 デジタル売りはやめてほしい

Sクラス含め、W206型Cクラスの「売り」の1つが、ARナビゲーション等のデジタル技術だといえます。しかし、自動車メーカーのデジタル技術、はっきりいうとGoogle等のIT企業には勝てません。新型Cクラスのナビよりも、スマホのGoogleナビを使ったほうが遥かに快適です。

使う前、ARナビは便利そうと思った私ですが、実際に知らない道を走ってみたところ、見事に行く方向の道を間違えました。結局、普通の地図を見たほうが、「どの道を曲がればよいか」がひと目で分かるといえます。また、ナビはiPadの地図そのままのようで、走っていて重要な道が「どれ」なのかを瞬時に判断できず使いづらいと感じました。

さらに、目的地を設定するのも非常にやりづらく、音声入力は「ほぼ機能しない」状態。検索しても、検索結果のチューニングがスマートではなく、目的地を設定するのにイラつきました。

純正ナビの道案内は、Googleマップのような「抜け道」を攻める傾向があり、私個人としては「歓迎」だったのですが、このクルマのメイン購買層である50代、60代の方々からは不満が出そうだと思いました。

いずれにしてもナビ機能はスマホを使ったほうが便利。目的地に早く着きたいならgoogleマップで攻めた道を走り、走りやすい道を行きたいならYahoo!カーナビを使えば良いと思います。

結局、新型Cクラスの中央にそびえ立つ巨大画面で「メリットがある」と思ったのは、テレビがきれいなことだといえ、それ以外は本質的にスマホに勝てていないといえます。

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最新型メルセデスベンツの売りであるARナビ

◆欠点4 ISGが怖い

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C200セダンのリア

マイルドハイブリッド的な機能を果たしているISGは、エンジンの美味しいところを活かすという機能も果たしているようですが、実際に運転していて効果の実感はありませんでした。また、街乗り燃費もリッターあたり9kmと、以前私が乗っていたW202型C240の8kmよりわずかに良い程度。ISGの良さとして、アイドリングストップからのスタートがスムーズになったという点が有りましたが、実感できたのはそこぐらい。通常のアイドリングストップ機能は、OFFにしたいぐらい不快ですが、ISGであればアイドリングストップがストレスになりません。ただ、それが燃費に寄与しているかというとそうでもないようで、将来的なISGの故障リスクやバッテリー交換代等を考えると、ISGは、メリットよりもデメリット部分のほうが多く感じました。

◆欠点5 ハンドルの位置

最後に、最も残念だったのがハンドルの位置です。前作のW205型Cクラス含め、往年のメルセデスベンツは、ハンドルが中央寄りにセットされているという特徴がありました。つまり、右ハンドル車であればハンドルは“やや左寄り”、左ハンドル車であれば“やや右寄り”にセットされていたのです。運転していると、目線は中央寄りになるため、ハンドルが車両中央に寄っているというのは、運転のし易さにかなり寄与していたといえます。

ただ、日本人の感覚からすると、そういったハンドル位置は「ずれている」などと批判されてようで、今回そういった声を取り入れたのか、不思議とハンドルは「どセンター」になっていました。このハンドルの位置だと、運転がやや疲れ気味になり、先程とは異なり、悪い意味で「日本車に乗っている」ような感覚になります。

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赤線部分は従来のメルセデスベンツのハンドル位置。新型は完全センターになった。

以上、新型Cクラスの評価をしてみたわけですが、まとめますと、基本的には良い車だといえます。ただ、後方視界の悪さや、一部のドライバーからナメられてしまう部分は特に「不満」だといえました。ただ、それら不満点は、ステーションワゴンを選択し、ボディカラーを黒等にすれば解決できる部分かもしれません。

また、余談ですが、今回借りたC200セダンの製造国は南アフリカ。ステーションワゴンを選択するとドイツ製がデリバリーされる可能性があると思われるので、made in Germanyが良いという方はワゴン一択となるでしょう。

よってCクラスを買うならば、ワゴンの必要がなくても、あえてステーションワゴンを選んだほうが、何かと良い結果になるのではないかと感じました。

とはいえ、新車価格600万円は私からすると「高い」と思ったのも事実。近代的なベンツを買うのであれば、現行型(前期)のE400エクスクルーシブが総額320万円程で売っているため、私はそっちを買いたいと思ってしまいました。ディーラー認定中古車でも総額450万円程度であるため、E400エクスクルーシブという、狙い目最新ベンツを見つけて嬉しくなった次第です。

<文/斉藤由貴生>

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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