歩行や運動の要は「正しい姿勢」と「フィットした靴」 膝関節や股関節を守ろう

歩行や運動の要は「正しい姿勢」と「フィットした靴」 膝関節や股関節を守ろう

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  • 更新日:2023/09/19
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関節への負担が少ないボール体操を指導する太藻ゆみこさん(撮影/大崎百紀)

がんばって歩きすぎたために、関節症を発症する人もいるようだ。ロコモティブシンドローム予防に大切なことは。AERA2023年9月18日号より。

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歩行や運動する際の注意点について「大事なのは姿勢です」と日本股関節研究振興財団の理事長で上馬整形外科クリニック(東京都世田谷区)院長の別府諸兄さんは強調する。

「女性は50歳を過ぎると骨粗鬆症になりやすく、脊柱が変形します。腰部脊柱管狭窄症や変形性膝関節症、O脚の方などなど、皆さん姿勢を含め、歩行能力が違ってきますから、まず姿勢チェックをすることです。円背(猫背)や頸部の垂れ下がり具合や、両側の大腿四頭筋の筋力、歩幅や歩隔を知る。日常的な活動量も考慮して、おのおのの体に負担のないように歩くことが大切です」

■「歩く」にこだわらない

歩くことにこだわらなくてもいいそうだ。上馬整形外科クリニックでは、医師の診察をまず行い、加齢による運動器の障害で移動機能が低下するロコモティブシンドローム(運動器症候群)の予防のためにバランスボールを使った体操を行っている。

「股関節を制するものは整形外科を制す、という言葉があります。中高年になると股関節が硬くなり可動域も狭くなります。それにより股関節だけでなく下肢全体の筋力が低下し、歩幅や歩隔、歩行速度にも影響を及ぼします。足が上がらなくなればおのずとすり足歩行になり、ちょっとした段差にもつまずき、転倒しやすくなります」

同クリニックでボール体操を指導する太藻(たいそう)ゆみこさんは、歩く際の注意点をこう補足する。

「足の付け根からひざを伸ばし、骨盤を落とさないようにかかとをつけ歩きます。歩くペースは軽くおしゃべりができるような速さの『ニコニコペース』が良いでしょう」

足を1歩前に出した時、よろけずにまっすぐ姿勢を保持するためにも、片足立ちトレーニングが必要という。

「股関節を含め、おなか周りにも筋肉をつけることが大切。みなさんには『自分のコルセットを作りましょう』と言っていますが、腹部を締めきゅっと力を入れると動きも軽やかになります。おなか周りが固くなれば足が出やすくなります」

■足にフィットした靴を

安定した歩行には、足指や足の甲の力をつけることも必要だ。足指の筋肉を鍛えるにはタオルを足指を使ってつかむ「タオルギャザー」が有効だという。

「100歳までウォーキング」は股関節症や膝関節症、腰痛などの障害がある人でも、メディカル・ノルディックウォーク(2本のポールを用いるウォーキング)や水中ポールウォーキングなどを通して保存的治療を行い、100歳になっても介助なしにウォーキングできる体づくりを目指している。

「足と靴と健康協議会」(東京都台東区)事務局長の木村克敏さんは、自分の足にあった靴を履かないと、足の蹴りや、踏み出しなどに影響して正しい歩行がしづらくなると指摘する。

「多くの方が実際のサイズより大きめの靴を選ばれている印象です。そうなると靴の中で前滑りしてしまい、正しく踏み込めません」

足部のトラブルはひざや腰、股関節にも影響するという。

「靴でなった病気は靴で治せます。まずは自分の足のサイズを知ること。足長、足囲、足幅を測り、自分の足にフィットした靴を選びましょう。紐靴であれば、紐を一度ほどいて足を入れてからもう一度紐を結び直して履く。これだけでも違います」

歩きか走りか、目的によって選ぶ靴も変わるというが、足の負担の軽減という意味では「初心者用のジョギングシューズがお薦めですね」(木村さん)。

クッション性がある靴がいいという。

歩きすぎから変形性股関節症となり、近く人工関節手術を控えた女性は、こう呟いた。

「モノには限度があると身をもって知りました。もう1日1万歩は歩きません。これからは歩いても5千歩ぐらいかしら。水中ウォーキングでもいいかな」

(ライター・大崎百紀)

AERA2023年9月18日号より抜粋

大崎百紀

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