入院前日、苦手な後輩から届いた一件のLINE。心細さに染みた彼女の申し出〈思いがけない助け舟1〉

入院前日、苦手な後輩から届いた一件のLINE。心細さに染みた彼女の申し出〈思いがけない助け舟1〉

  • 婦人公論.jp
  • 更新日:2021/10/14
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イメージ(写真提供:写真AC)

病気や自然災害、家庭のトラブル。困ったときに救いの手を差し伸べてくれるのは、心を許した友人か、家族か──。もしかしたら、まったく予想もしなかった人かもしれません。会社員の香苗さん(仮名)はある時、医師から「放置すれば余命3ヵ月」と宣告を受けてーー。(取材・文=武香織)

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「空いている部屋があるから、うちにいらっしゃい」

いざというときこそ、自分に必要な人間関係が見えてくる。私は今、そう確信している。

息子が中学生時代に起立性調節障害という病気を患い、その体験を綴った本を9年前に上梓した。2年前、一人の読者からお手紙をいただいた。奈良県に暮らす愛子さん(80歳)。事情により自ら育てている中学生の孫が、同じ病気なのだという。

高齢でありながら、孫と真摯に向き合い孤軍奮闘する彼女のエネルギーに感銘を受け、少しでも力になりたくて、自宅の住所をお伝えした。以来、私たちは途切れることなく手紙を交わしている。

ところが、この文通だけの関係だった愛子さんから、私は多大なるアシストを受けることになる。

いっこうに収まらない更年期の症状や仕事への不満など、いくつもの澱が蓄積して心がはち切れそうになった昨年末。ふと「しばらく田舎のほうで療養するつもり」と彼女に漏らすと、「それなら空いている部屋があるから、うちにいらっしゃい」と言ってくれた。

そのお言葉に甘え、半年前から愛子さんのお宅に居候させていただいている。優しいご家族と豊かな自然に囲まれて、体調の回復を少しずつ実感する今日この頃だ。

意外な人に救われた経験は、大なり小なり誰にもあるはず。実際に思いがけない相手から手を差し伸べられたという方たちに、お話を伺ってみた。

入院前、苦手な後輩から1件のLINEが届いた

疲れやすくてふさぎがちだった会社員の香苗さん(49歳・仮名=以下同)は、3年ほど前に中度の抑うつ神経症と診断され、長期休職を余儀なくされた。「1、2ヵ月で復職できるだろう」と高を括っていたが、摂食障害の一種、神経性痩せ症を併発。医師から「放置すれば余命3ヵ月」と宣告を受け、入院することに。

入院の2週間前、かねて約束していた6人の同僚との食事会に参加した。彼女たちとは所属する部署が違っても、3ヵ月に1度は集まる20年来の仲だ。香苗さんは、近々入院する旨を正直に伝えた。

「みんなピンと来なかったみたい。当時、体重30kgとかなり痩せていたけど、私がジムで鍛えていることを知っていたし、食欲は健在でしたから。『お見舞い、行くね』と軽い反応でした」

ところが、5歳年下の後輩・有希さんだけは違った。食事会の後、LINEで「入院する日、会社を休んでつき添います」と連絡をくれたのだ。いつもボーイッシュな服装に身を包みアクティブな彼女は、インドア派の香苗さんにとって少々苦手なタイプ。1対1で会う機会もなかった彼女からの申し出に、戸惑いを隠せなかった。

「とはいえ、独身なので頼れる家族もいないし、初めての入院で心細かった。大袈裟にしたくなくて病気のことは旧友にも伝えていなかったので、素直に彼女を頼らせていただこう、と。でも、彼女が所属する部署は忙しい。申し訳ないと伝えたら、『全然大丈夫ですよ!』と、あっけらかんとしている。スッと肩の力が抜けました」

私も、こういう大きな人間になりたいな

入院当日、有希さんは電車で1時間以上かけて迎えに来てくれた。

「いざスーツケースを持ち上げようにも、体力が落ちてびくともしない。きっと一人では出かけられなかった。彼女は、私の体を見て介助が必要だと察してくれたんですね。本当に助かりました」

入院中、誰よりも多くお見舞いに訪れたのも有希さんだった。3日に1度は顔を出し、「足りないものはないですか?」と確認。「院内が寒いので」と、カーディガンやインナーまで差し入れてくれた。退院の日も当然のごとく病院に駆けつけた有希さんを目の当たりにして、「私も、こういう大きな人間になりたいな」と実感したという。

「困っている人がいたら迷わず行動に移し、しかも相手に負担を感じさせないさり気なさを持つ人に、です。この先、一人では抱えきれない困難に陥ったとき、相談するとしたら間違いなく彼女。今では全幅の信頼をおいているんです」

体調が回復し、仕事に復帰した香苗さん。有希さんとの間にあった壁は、すっかり取り払われた。

《ルポ》窮地に立たされたとき思いがけない助け舟が
【1】入院前日、苦手な後輩から届いた一件のLINE。心細さに染みた彼女の申し出
【2】腰の激痛で絶体絶命。離婚して独り身だった高齢男性の元に駆けつけたのは
【3】きっかけは脱走した《猫》。女子大生と茶飲み友達になった60代女性
【4】夫の不倫発覚で家出した女性。助けを求めたのは10年前に絶縁した親友だった

武香織

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