奨学金、毎月11万円の返済。コロナで残業もボーナスもない31歳の苦悩

奨学金、毎月11万円の返済。コロナで残業もボーナスもない31歳の苦悩

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2020/10/18

コロナ失業や収入減により、ローンの支払いに困窮する人がかつてないほど増えている。今回は奨学金。コロナ禍で返済に追われる人の姿を追った。

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佐伯俊徳さん(仮名・31歳)

◆約50%が受給する奨学金。就職後も続く地獄の借金

▼佐伯俊徳さん(仮名・31歳 鉄鋼メーカー 未婚)

年収600万円⇒450万円/ローン残債700万円/月の返済11万円

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利用割合は48.9%と、約半数もの学生が受給する奨学金(’16年、日本学生支援機構「学生生活調査」より)。返済が滞れば、ほかのローンと同様に延滞金が発生するほか、一括返還の請求や財産の差し押さえに発展することもある。

鉄鋼メーカーに勤める佐伯俊徳さん(仮名・31歳)の奨学金残債は計700万円。大学院卒業以来、毎月11万円の返済に追われてきた。

「女手ひとつで育てられてきましたが、経済状況は良くなく学費と生活費を出せる余裕は皆無。しかも進学直前に母親が体を壊し、母の生活費の足しにもなればと無利子の1種・有利子の2種どちらも申請。

そうやって大学院卒業までの6年間で借りた額に利息を加えると、返済総額は1300万円に膨らんでいました。今思えば24歳でこれだけの残債を背負うことは恐怖でしかない。でも、当時は『勉強させてもらった分これから必死に働こう』と前向きでした」

◆残業もボーナスもなく、年収150万円減

そんな決意を胸に年収600万円の会社で必死に働き続け、現在までに600万円を返済。「同僚らが旅行やゴルフを楽しむのを尻目に、ひたすら節約してきた」と言うが、コロナの影響には個人の努力で抗いようもなかった。

「残業ができなくなり手取りは5万円減。業績の悪化を受けてボーナスも出ない見込みで、150万円近く年収が減る計算です。家賃や生活費を考えると返済はもうできない。連帯保証人の母に知られて心労をかけるのが怖くて、先月はカードローンで借金をして返済しました……」

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地道に返済してきたが、それでも完済は12年後。

「でもここで延滞し一括返済を求められると、すべてがパーですよね……」

◆制度の不備と金融事業化、奨学金の構造に問題あり

そもそも奨学金とほかのローンは「返済能力がわからないときに借りる」点で大きく異なる。学生時代に多額の奨学金を受けても、将来それに見合った収入が得られる職につけるとは限らない。

「そのため、ほかのローンよりも柔軟な返済制度や救済策が揃っていなければならないのに、現状まったく仕組みができていない」と語るのは、弁護士の岩重佳治氏だ。

「返済期間を猶予する措置はあるものの、条件が年収300万円以下、延滞があると利用を制限されるなど、適用はかなり限定的。返済額や延滞金を減額できる制度もこの調子で、要件が複雑かつ厳しい。背景にあるのは、’00年代以降、奨学金事業を手がける日本学生支援機構が回収強化策に乗り出したことです。

延滞3か月でブラックリストに登録、延滞4か月に債権回収会社に回収を委託、法的措置を取る段階も延滞9か月に早められました。『延滞があると猶予が制限される』といった扱いも、規則ではなくその時々の運用によって適用されています」

金融事業としての色合いを年々濃くしていった結果、今や奨学金は未来ある若者への投資でなく、ただの借金だ。佐伯さんも支援機構に返済猶予を求めたが、年収450万円では「要件を満たしていない」と門前払いを食らうばかり。

◆増え続けている奨学金受給者

その一方、受給者は増え続けている。

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’80年代から’90年代にかけて20%台だった奨学金受給率は、納付金の増加とともに年々上昇。’12年には50%に到達した 出典:文部科学省「学校基本調査」

文部科学省の「学校基本調査」による、大学初年度納付金と奨学金受給率の推移では’80年代から’90年代にかけて20%台だった奨学金受給率。

「学費の高騰に比例して奨学金受給者も年々増加。’10年代からは50%前後で推移しています。制度が変わらなければ、今後も奨学金で破綻する人が続出するのは想像に難くありません」(岩重氏)

コロナの影響で加速する奨学金破綻。だがその構造的問題は、想像以上に根深い。

【弁護士・岩重佳治氏】

’13年に「奨学金問題対策全国会議」を設立。事務局長として返済困難な利用者の支援を積極的に続ける。著書に『「奨学金」地獄』(小学館新書)など

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[[ローン破綻]の現実]―

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