妻の「裏切り不倫」を疑ったせいで、すべてを失った年収2000万医師の悲劇

妻の「裏切り不倫」を疑ったせいで、すべてを失った年収2000万医師の悲劇

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/08/01
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賃貸不動産と会社を相続

親から財産を相続できる人は幸せだ、それも自宅以外の収益不動産を相続できるのならそんなラッキーなことはない――多くの人はそう思うでしょう。しかしなかには、大きな不動産を引き継いでしまったために幸せな家庭まで失う人もいます。今回紹介するのは、そんなお話です。

東京都下に住む勤務医の中田さん(現在56歳)が、父親から複数の賃貸不動産とその管理会社を相続したのは今から10年前のことでした。

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〔PHOTO〕iStock

母親はさらに5年前に亡くなっていましたし、中田さんは一人っ子。このため相続人は、中田さんご本人だけでした。

父親の死後、不動産管理をだれが引き継ぐのかについて、親戚が集まり会議が開かれました。中田さんはこう振り返ります。

「選択肢はいくつかありました。私が医者を辞めて家業をつぐか、父が亡くなる前から家業の土地の一部を共有で持っていた叔母に継いでもらおうかとか。でも、私も医者として年収2000万円ほど稼いでいましたし、医業の傍ら不動産業を継ぐのはどうも自信がない。叔母も叔母で『私も60代だし勘弁して』と。そこで、私の妻の彩香なら専業主婦だし時間もあるだろうということになったんです」(中田さん)

彩香さんは当時、30代半ば。明るく朗らかな1児の母で、周囲も認める美人です。しかも頭の回転が速い、まさに才色兼備。周囲の親族はこのご夫婦を「光と影」と呼んでいたとかいないとか…。

当時、彩花さんは長男の子育てのまっ最中。しかも2人目の子供を身ごもっており、つわりもあって彼女も決して時間に余裕があるわけではありません。中田さんそのことは充分理解していました。それでも彼女に任せることにしたのは、理由がありました。

父親は所有する土地にアパートを何棟も建てていました。生活も派手でしたから、てっきり経営は健全なものと思っていたのですが、建物の建設費などに何億円もの借金が残っていました。それをきちんと返済できるほど利益を出せるかどうか。中田さんはその自信がなかったのです。

結局は親戚たちが彼女を推していることもあって、父親の代から雇っていた数名の従業員と一緒に妻の彩香さんに任せるのが一番と考えたのです。

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始まった嫉妬

親戚中から白羽の矢が立てられるだけあって、彩香さんは、徐々に事業を成長させました。基本は都内で不動産賃貸業を営んでいましたが、日々の不動産の管理はもちろん、空いた住戸のリノベーション、客付け、苦情対応まで、彼女なりの工夫と努力でこなしていきました。

保有していた物件の中には築40年以上の古い物件もありましたが、女性の視点を生かして小ぎれいにリフォームして、周囲の物件との差別化を進めていったりもしました。

その甲斐もあって、空室は埋まり入居率が7割を切っていたものが、98%程度まで回復。しかも、主婦のコスト意識を生かしてリフォームには無駄なお金を使わないなど、抑えるところはきちんと抑えた結果、借金は彼女が引き継いでからの10年間でほぼ半分にまで減ったのです。

しかしここで問題が起きます。

不動産業の業績が良くなるに従い、従業員が中田さんを飛び越えて、すべて彩香さんに相談するようになったことに、中田さんが嫉妬を感じるようになったのです。

「そりゃあ妻が仕切っているのは事実です。しかし所有者はあくまで私。それなのになにかあるとすべて妻に相談して、私は完全に蚊帳の外。みんな妻に洗脳されているんじゃないかと思いました」(中田さん)

洗脳とはさすがに考えすぎでは、と思うでしょうが、彼がそう感じるのにも理由がありました。実は少し前、叔母から妻についてある噂を聞かされていたのです。なんと、彩香さんが会社のお金を使って男達とお酒を飲み歩いているとか、経費を個人的な買い物に使っているといった内容です。

彩香さんには仕事に見合う充分な給料を払っているつもりでした。まして、自分が医者として人の命を救うために日々頑張っている間に妻が別の男と会っているはずがない。当初は中田さんも叔母の言葉を受け流していたのですが、社員たちにないがしろにされるようになり、それは事実かもしれないと思うようになっていったのです。

彩香さんが実際にやっていたこと

実は叔母が、彩香さんの悪口を言うのにも、わけがありました。

前にも書きましたが、中田さんが相続した土地は、父親が存命の時から叔母も共有名義になっており、相続後も父親の名義が中田さんに変わったものの、叔母の名義はそのままでした。これは、相続の専門家である私に言わせれば、最悪です。土地が共有名義になっている場合、将来的な建て替えや売却をしたいと思う時、共有者間の合意がなければ実施できません。ここでトラブルが起きる可能性が非常に高くなります。

さらに名義人が死亡して、相続が起きると、もめ事が複雑になる危険性も高いのです。彩香さんは、それを知っていました。そこで、将来、叔母が亡くなって相続が発生したときに備えて、「現物出資」という方法を使って、不動産名義を中田さん単独名義に変更していたのです。

不動産の名義を外してもらうためには、不動産の価値に見合う何かを渡さなければいけませんが、中田さんには残念ながらそれだけの現金はありません。そこで、現金ではなく「自社の株」を叔母に渡し、叔母の方は不動産の共有持ち分を中田さんの会社に渡すという手法を使いました。これが現物出資で、現金がない中で土地の共有問題を解消する裏技的手法です。将来の相続争いの芽を摘むためのベストな方法と言っていいでしょう。

しかし、これを叔母は内心快く思っていなかったようなのです。株をもらったとはいえ、不動産を奪われたと感じていたのでしょう。

こうして夫婦の間にギクシャクしたムードが漂い始めた時、ある事件が起きます。それは家族で食事に出かけた時に発した彩香さんのある言葉がきっかけでした。

「不動産もいっぱいあるんだし、そろそろ開業は考えてないの? あなたの同期の人も開業されてうまくいっているんじゃない?」

この言葉に中田さんはキレました。

「今は昔ほど開業もラクじゃないんだ。不動産が余っているからと言ってそう簡単に開業できるもんじゃない。そもそも俺は開業医になりたくて医者になったわけではない。お前は妻なのに俺のことを何もわかってくれていない。不動産の仕事がうまくいっているからと言って、調子に乗るな! 俺をバカにしているのか!」

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突然、病院を退職

いつもはおとなしい夫の激しい言葉に驚いた彩香さん。その場では「ごめんなさい。決してあなたのことをバカになんかしていません。許して」とひたすら謝りまりました。その様子に中田さんも一旦は怒りを静めたかに見えたのですが、そうでもなかったようです。それから数か月後、中田さんは予想もしなかった行動に出ました。

なんと、彩香さんには一言の相談もなしに、勤務先の病院を退職したのです。

中田さんは言います。

「妻をぎゃふんと言わせてやろうと思ったんです。退職してすぐ、父から継いだ会社に乗り込んで宣言してやりましたよ『ここの会社の株主は誰だ?! オレだ! 今日から妻じゃなくてオレの言うことを聞いてもらう!』と」

驚いたのは従業員です。今まで一切仕事に口を出したことがない、しかも彩香さんとくらべて商才もなさそうな中田さんが、会社を取り仕切るというのですから。

中田さん夫婦の別居が始まったのも、この直後でした。

こうして社長に突然就任した中田さんですが、結果は火を見るよりも明らかでした。あれやこれや社員に指示を出すものの、その結果何か面倒が起きると、「あとは頼んだ!」と社員に丸投げでどこかを消えてしまうのです。

あきれた古参の社員は続々と退職してしまいます。それでも、誰かが経理や物件の管理をしなければいけません。会社の窮状をどこからか聞きつけて調子のいいことを囁く業者に管理を任せたものの、それが更に会社の経営を悪化させていきました。修繕費用などの経費はどんどん高くなっていったからです。

結局、妻が正しかった

しかも、そんな時に限って厄介ごとは起きるものです。なんと所有していた古いマンションで、高齢者の孤独死が起きてしまったのです。発見されたときにはすでに腐臭でひどい状態でした。

彩香さんたちが管理をしていた頃は住人たちと密な連絡を取っていましたから、マンション内でかん口令を徹底するなどして、情報が外に漏れないようにできたでしょう。しかし中田さんにはそんな芸当はできません。そのまま放置していたら事故物件サイトにも記載されることになり、そのマンションの評判はガタ落ち。

賃料も下げざるを得なくなったばかりか、ほぼ満室がウリだったのに入居率は大幅ダウン。会社の業績が悪くなると、元々気が弱かった中田さんの精神状態は不安定になり、数か月の別居を経てついに夫婦は離婚することになったのです。

ここまで来ると中田さんは、到底仕事に集中する気力はありません。このまま不動産は手放してしまうことも考えたのですが、それもできません。

なぜなら、最悪なことに、現物出資によって解消していた不動産の共有名義を叔母の口車に乗せられて元に戻してしまっていたからです。叔母に相談したものの、叔母が反対したため、売却も出来ません。結局、当分は中田さんが社長を続けるしかないものの、このままでは引き継いだ不動産の価値の低下は避けられないでしょう。

肩を落として中田さんは言います。

「結局、妻が言っていたことが正しかったんだと思います。今となっては妻が浮気をしているとか会社のカネを使い込んでいるという話も本当なのかどうかもわかりません」

中田さんが死ぬか、もしくは叔母が亡くなった時、この共有名義という時限爆弾が動き出し、泥沼の相続争いが繰り広げられることがないことを祈るばかりです。

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