米市場が年初来安値、その背景は?インフレ見極めのために押さえるべき2つの経済指標

米市場が年初来安値、その背景は?インフレ見極めのために押さえるべき2つの経済指標

  • MONEY PLUS | くらしの経済メディア
  • 更新日:2022/05/14

5月の「FOMC」では予想通り通常の倍の0.5%の利上げと、6月から保有資産の圧縮開始が決定されましたね。6-7月も0.5%の利上げの可能性が示されているものの、0.75%のトリプル利上げに関してはパウエルFRB議長が慎重な姿勢を示しました。とはいえ、通常0.25%ずつ利上げすることを考えると急ピッチの金融引き締めであるといえます(FOMCについて、詳しくは連載第5回をご覧ください)。

その背景には、あまりにも高いインフレと、インフレ抑制に迅速に動く必要性があることや、労働市場がきわめてタイトであることなどが、FOMC後のパウエル議長会見で伝えられています。

インフレを表す消費者物価指数

インフレとは、全体的な物価水準が持続的に上昇する状態を指します。例えば、今まで100円で変えていたパンが120円に上昇します。すると、同じパンを買うのに1.2倍のお金が必要になるので、お金の価値が下がったと言えます。しかし、物価が上昇すると企業の収益も高まり賃金として消費者にも還元されるので、消費活性化=好景気に繋がります。このように、一般的に経済が成長していく過程では適度なインフレ率の上昇を伴いますが、過度なインフレ(高インフレ)は物価上昇に対してお金の価値が下がりすぎて消費が抑制されるため、経済にとって危険となります。今まで100円で変えていたパンがいきなり300円にまで値上げしてしまうと、さすがに手が出せなくなってしまいますよね?

冒頭お伝えしたように、いま米国では高インフレの抑制を目指し、過去数十年で最も積極的な引き締め策が講じられるわけですが、ということはインフレの動向を把握することが今後の経済を予測する上で重要となってきます。どのくらいインフレが進んでいるのかを見極める上で重要な経済指標の一つ、消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が5月11日に発表されました。

CPIは、インフレ状況を把握するために多くの国で一般的に採用されている指標で、小売物価の変動を月次ベースで追ったものです。全国の世帯が実際に購入している製品や使っているサービスの価格が平均的にどう変動しているのかを測定した指数です。物価は消費が促進されていると上昇(値上げしても売れる)し、消費が抑制されていると下がる(値下げしないと売れない)という傾向にあるため、CPIはインフレ率に関する重要な指標となります。

11日に発表された4月の米CPIは前年同月比8.3%上昇。伸びは前月の8.5%を下回ったものの、エコノミスト予想の8.1%を上回っています。CPIが上昇するということはインフレ傾向にあるということですし、米国の金融政策ではインフレターゲット2%を目標としていますので、8.3%という数字を見るとかなり深刻なインフレ状況が続いているといえます。この結果を受けてFRBの金融引き締めがより早まるのではないかという懸念が高まりました。

また、多くの国では消費者物価指数と並び、生産者物価指数(PPI:Producer Price Index)を公表していますが、これは小売業者から生産者に支払われた価格の変動を追ったものです。一般的にPPIは、インフレのサイクルの中では比較的早い段階で上昇する傾向があります。12日に発表された4月PPIは前月比0.5%上昇と市場予想と一致しましたが前年同月比では11.0%上昇となっています。

高インフレの主な原因は、物価の急激な上昇です。原材料や資材・エネルギー価格が上昇すれば、商品の製造やサービスのコストが全般的に上昇します。特に原油価格の上昇は経済に対して広範な影響を与えますので、現在の地政学リスクによるエネルギー価格の高騰継続はコストとして消費者、企業にとってより直接的に重くのしかかることとなります。

なお、日本のCPIは原則として毎月19日を含む週の金曜日、午前8時30分に公表していて、次回は5月20日(金)に発表予定となっています。

「米小売売上高」に注目

インフレ動向を把握する上でもう一つ、注目したい経済指標があります。

5月17日に発表される「小売売上高」は、その名のとおり小売の売上高を示した主要マクロ経済指標の1つです。毎月、米国商務省が発表し、米国の百貨店やスーパーの小売のほか、サービス業の月間売上高が集計されており、米国の個人消費の動向を把握することができます。つまりインフレにも関連する経済指標なのです。

米国は世界一の消費大国で、GDPの約70%を占めるのが個人消費のため、インフレのみならず米国の個人消費の動向を知ることが米経済、そして世界経済を予想する上で重要となるので、市場の注目度が非常に高い指標となっています。

米小売売上高には「小売売上高」と「コア小売売上高」があります。小売売上高は全てをカバーしているので、米国の個人消費で割合が高い自動車や、自動車関連の部品の影響が大きくなります。コア小売売上高は、変動の多い自動車・ガソリン・建材などを除いたもので、GDPの個人消費の構成要素に近いため、GDPの予想に用いられるため、より注目されています。

5月9日週「相場の値動き」おさらい

米市場では主要3株価指数指数(ダウ、ナスダック、S&P500)がそろって年初来安値を更新しました。5月のCPIの結果を受けて、エネルギー価格高止まりと労働市場がきわめてタイトであることから、FRBの金融引き締めがより積極的になるのではとの懸念が高まった模様です。地政学リスクの長期化懸念や、中国のゼロコロナ政策も売り材料となっています。

今週の日本市場では決算発表が本格化しましたね。為替相場の円安が寄与した企業も多かったようです。

トヨタ自動車(7203)が5月11日に発表した2021年度連結決算では、売上高、純利益がともに過去最高を更新。ただ原材料費高騰は大きな問題となっているようです。ソニーグループ(6758)の2021年度の売上高、営業利益は過去最高で、営業利益は前年比25.9%増 1兆2023億円と初の一兆円越えでした。

また、原油やガス開発国内最大手であるINPEX(1605)の22年12月期第1四半期の連結経常利益は、前年同期比2.6倍の2778億円に急拡大。通期の経常利益も過去最高益予想をさらに上方修正したほか、グローバルで旺盛なアルミ需要を追い風に、アルミニウム圧延メーカーのUACJ (5741)は過去最高益を達成しており、22年度も増収増益を見込んでいます。

一方で12日午後にソフトバンクグループ(9984)が発表した2022年3月期連結純損益は1兆7080億円の赤字に転落。前期は4兆9879億円と国内企業で過去最高の巨額黒字でしたので一転して……という状況です。

週末5月13日(金)の日経平均株価の終値は、前日比678円93銭高の2万6427円65銭と大幅反発。前週末5月6日(金)の日経平均株価は2万7003円56銭でしたので、週間では575円91銭の下落となります。週間では下落しましたが、財務省が12日(木)に発表した対外及び対内証券売買契約などの状況によれば、円安などを背景に海外投資家が4月に日本株を3カ月ぶりに買い越している模様です。

5月16日週は、17日(火)に米小売売上高が発表されるほか、18日(水)に日本のGDP速報値が発表されます。注目してみてください。

(三井 智映子)

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