【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第11回:人口増加政策、増えた移民の就職事情

【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第11回:人口増加政策、増えた移民の就職事情

  • 政治山
  • 更新日:2017/12/06

オーストラリアには2000年代に入ると、前回の記事でお伝えした資源ブームと並んでもう一つブームがありました。それは出産奨励と移民受け入れ増加による人口増加ブームです。今回は、この人口増加ブームの中で大きな役割を果した移民の就職事情を見ていきたいと思います。

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この30年間の変化

オーストラリアのメルボルンの郊外にある現在の住居に住み始めたのは30年前のことですが、その頃は新興住宅地で他に家が2軒立っているだけで周りには何もなく、とにかく静かなところでした。それが今ではほとんどの土地が埋め尽くされ、すぐ近くの整備のされていなかった道路が並木の並ぶ大きな道路になり、行きかう車の騒音が良く聞こえるようになりました。少し行ったところにはショッピングセンターが4つくらいでき、新しい鉄道が敷かれ駅が作られ、学校も増えプールや運動場などのレジャー施設もあちこちに作られました。静かだった郊外が、活気溢れる町になったのです。何という変化だろうと驚くばかりですが、これが、この間にオーストラリア政府が取ってきた人口増加政策の現れなのです。

人口増加政策の2つの柱

日本を初めとする世界の先進諸国は現在、少子高齢化の問題に直面していますが、この問題はオーストラリアでも同じです。それに対しオーストラリア政府は人口増加政策を打ち出しました。この政策は2つの方策から成り立っています。一つは出産奨励による人口増加で、もう一つは移民受け入れによる人口増加です。

出産奨励政策は、2006~2008頃がピークで、その頃大蔵大臣だったコステロ氏が言った「子供は3人産んで欲しい。一人目は父親のために、二人目は母親のために、そして三人目は国のために」という言葉は有名になりました。出産奨励政策では、出産費用として一人の子供につき$4,000 ~ $5,000を授与するというものでしたが、その後その額は$3,000に減らされ、更には2014年の時点で取り下げられてしいます。その理由は、出産奨励政策はある程度の効果があり人口は増えたものの、期待したほどの効果ではなかったことです。

もう一つの人口増加政策である移民の受け入れは、オーストラリアでは、建国当時から続いている政策であり、今に始まったわけではないのですが、受け入れる体制が前とは違う点が特徴です。

以前の移民受入れ制度が抱えていた問題

2017年7月の「ビジネスインサイダー」の記事によると、オーストラリアの人口はこの25年間で710万人(41.1%)増え、現在の総人口は2400万人に達しているとのことです。この人口増加のうち移民の占める割合は60%にのぼり、2017年も19万人を受け入れると報道されています。移民の受け入れは今後も継続するとのことですが、近年のテロの問題もあり、2018年3月からは受け入れの条件に規制が掛けられることになっています。

このようにオーストラリアの近年の移民政策は、ベトナムの難民を受け入れ始めた頃の「家族呼び寄せ制度」から「スキル重視制度」に変わってきました。2016年の「シドニー・モーニング・ヘラルド紙」によると、15年前は、せっかく移民しても、例えば自国で取った歯医者の資格が認められず、仕方なく掃除夫をしているとか、自国で大学の講師をしていたのにその仕事に就けずタクシーの運転手をしているというようなケースが多かったとのことです。割合にすると、資格やスキルを活かして就職できた人は移民全体の20%しかなかったそうです。

要求される就労スキルと英語力のレベルアップ

もともとオーストラリアでは、移民の多数受け入れは、少子高齢化対策のためであり、また、世界で増大している難民救済の人道的な意味合いもあり、とにかく人を増やそうということで受け入れて来たのですが、上述のようにこの政策には盲点があったわけです。

テクノロジーの発展がまだ緩やかだった2000年前後は、この盲点もそれほど表面化しませんでしたが、近年になってテクノロジーの発展が急速になると、オーストラリア国内だけでは人の育成が追い付かず、すでにそうしたスキルを持った人を海外から入れようという動きに変わっていったのです。

また、このことは、移民をせっかく受け入れても、持っている資格やスキルが不適当で、オーストラリアの労働市場で職がみつからないという社会問題と重なり、オーストラリアの移民政策は、スキル重視の政策に変わっていきました。

世界の羨望の対象となる移民政策

そのため、2010年以降は正規の資格や証明書の認定を厳しくし、オーストラリアが必要としているスキルを持った人で英語力が規定以上ある人だけを受け入れるという体制に変わってきています。この政策が功を奏してか、自分の勉強した分野で仕事に就けている移民の割合は40%と、15年前と比べると2倍に増えました。ただ、こうした資格を持った人の大部分が、オーストラリアに来ていた留学生がそのまま永住ビザを取得して移住したり、そうした留学生が一度本国に戻ってから再入国したりというケースが多く、他国から直接移民してきたスキル労働者の数はそれほどないという問題が残っています。

以上のように、オーストラリアの移民の受入れにはまだ課題があり完璧きではありませんが、移民問題の専門家として国際的に知られているメルボルン大学のホーソン教授は、「世界各国の移民受け入れ政策を見た時、オーストラリアのスキル重視の受け入れ政策は各国から羨望の対象となるものだ」と述べています。

実際、アメリカや日本、またヨーロッパの諸国では、移民が国民の仕事を奪うと懸念されていますが、オーストラリアの移民政策を見る限り、移民の受け入れは経済の発展に貢献していることを物語っているように見えます。

記事制作/setsukotruong

提供:nomad journal

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