「周りを巻き込み、周囲の協力を得る」ポケモンGO開発者・野村達雄さんの仕事術

「周りを巻き込み、周囲の協力を得る」ポケモンGO開発者・野村達雄さんの仕事術

  • @DIME
  • 更新日:2017/08/11

全世界でのダウンロード数7億5000万回を突破したメガヒットゲームアプリ『ポケモン GO」が、今年の7月22日で日本国内のリリースから一周年を迎えた。その仕掛け人となったのは、ナイアンティック社の野村達雄さんだ。中国の片田舎で生まれ育ち、1995年に一家で日本へ移住。小学4年生で「ポケットモンスター」に魅了された少年は、やがて、大人になり世界的な一大プロジェクトをプロダクトマネージャーとして導いた。

そんな野村さんが初の著書『ど田舎生まれ、ポケモンGOをつくる』を出版した。幼少期からの来歴を振り返ると共に、Google社での経験、さらに、ナイアンティック社への移籍後に手がけた『ポケモン GO」の開発秘話などを追った一冊だ。本書をきっかけに野村さんへのインタビューを敢行。後編では、野村さんの抱く仕事や生き方についての“哲学”を紹介していきたい。

※前編はこちら

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野村達雄(のむらたつお) 中国黒龍江省出身。東京工業大学大学院卒業。2011年にソフトウェアエンジニアとしてGoogle Japanに入社、Google マップの開発に携わる。 2013年に米国Google本社に移籍し、『ポケモン GO』のきっかけとなったエイプリルフール企画『ポケモンチャレンジ』などを手がける。 その後、『Ingress』の開発を行うNiantic Labs(現Niantic, Inc)に移籍し、ゲームディレクターとして『ポケモン GO』の開発を指揮する

◎言葉だけではなく実際のモノを見せて周囲を納得させ巻き込む

――自著の中にある「Leading by influence(影響力によって率いる)」という言葉が印象に残りました。野村さんが担当したGoogle社のエイプリルフール企画や、『ポケモン GO』のプロジェクトでもこの精神はやはり活かされたのでしょうか?

野村:そうですね、もちろん活かされたと思います。僕は『ポケモン GO』でプロダクトマネージャーという役割でしたが、部署を超えて調整する上では「プロダクト(成果物)に責任を持つ」というのが仕事だったんです。例えば、関わる「エンジニアチーム」や「デザインチーム」にもマネージャーがいて、それぞれは並列の関係だから何かを命令して作るというのがそもそもできない仕組みになっているんですね。

だから、プロダクトマネージャーとしてはまず関わる人たちを納得させるのが大きな役割になるんです。その上で、影響力をもたらすためには一つのプロジェクトについて「なぜやるのか」「なぜおもしろいのか」をていねいに説明しなければならないし、それができなければ仕事にならないと思っています。

――見えるものを作る、というのは、やはり影響力によって率いる、もしくは、周囲を巻き込む上で心がけているのでしょうか?

野村:まずは実際にモノを見てもらうというのは、一貫して心がけていることですね。文章や写真で企画書をまとめても、それぞれがイメージするモノも異なってしまう気がするんです。僕の場合はプログラムでしたが、異なる物事であってもやはり、プロトタイプを作り実物で確かめてもらうというのは大切だと思います。

また、デモを作る場合にはできるだけ短い時間で作ることが大事だと思っています。1年かけて作り込んでしまうと取り返せなくなるかもしれませんが、3時間であれば捨てることもできる。代償の大きな投資はせず、失敗してもよい段階でアイデアをまず形にするというのは常に実践しています。

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◎意見を出し合う場面で大切なのは「アイデアを否定しない」こと

――自著の内容や今回のお話から、野村さんにはどこか“人を巻き込む力”があるように映ります。例えば、多くの人びとのアイデアを具現化するために、心がけていることはありますか?

野村:自分からもアイデアを出し、さまざまな人からのアイデアをやはり集めるということかもしれません。『ポケモン GO』はそれこそ、ナイアンティック社、ポケモン社やゲームフリーク社といった多くの人たちが関わる大きなプロジェクトで、いろいろなアイデアをどんどん出していきました。

現在の機能はほとんどがブレインストーミングから生まれたもので、例えば、ARで実際の背景を映してポケモンを捕まえるという機能も、社内のデザイナーがデモをまず作り、みんなに見せてくれたからこそ実現したものですね。

――アイデアをみんなで出すという場面では、いわゆる“日本的な会議”のイメージだと発言できない人もいるのではないかと思います。ブレインストーミングのお話が出てきましたが、そんな場面で野村さんが意識していることはどういったものでしょうか?

野村:僕は、アイデアは現実的なものではなく「果たして実現できるのか?」と疑いたくなるようなものでもいいと考えているんですね。だから、ブレインストーミングの場面ではとにかくさまざま人がアイデアをどんどん出し、風呂敷を広げるだけ広げます。そして、今ある制限の中で何ができるのかを選んでいっています。

そのためには、何よりも「アイデアを否定しない」ということを重視しています。どれほどバカバカしく思えても、否定はせずとにかく「おもしろそうだね」と受け入れる。海外ではよく会議中に「クール」という言葉が飛び交うのですが、自分がせっかく出したアイデアが否定されてしまえばそれ以降ちぢこまってしまうだろうし、そうならないための環境を作ろうと意識しています。

◎苦労しそうだけど自分なりに“学び”のある物事にチャレンジしたい

――野村さんとお話をしているとものすごく前向きに生きてらっしゃるイメージを受けるのですが、ご自身では自分がどんなタイプだと思われますか?

野村:どうなんでしょう……。ただ、とにかく「まずはやってみよう」というタイプかもしれません。仕事の上ではもちろんですが、たいていのことは何をやっても死なないので考え込まずにやってみようと思っているかな(笑)。

昔からモノを作ったりするのが好きで、自分でソリを作ったり、分解してモノの仕組みを調べたり。大学時代には構造を知りたいという好奇心からファミコンを自作したりと、昔から根っこでは「興味のあることに突き進む」性格だったかもしれません。

――憧れる生き方だと思います。プライベートの場面で、その気持ちから何か取り組んだことはありますか?

野村:4年ほど前に、思いつきでピアノを始めたことがありました。小さな頃から憧れはあったんですけど、家にお金もなかったし、教室に通うというのも口に出しませんでした。社会人になってからピアノをやりたくなって始めました。

9月くらいにピアノを始めたのですが、その年の12月にあるホリデーパーティの出し物を探していた中で、「ピアノを発表する」とみんなの前で宣言したんですよ。友だちから譲り受けた電子キーボードで、楽譜やYoutubeの演奏動画を参考に必死に練習したんです。少しずつできるようになる快感もあり、パーティー当日にはおかげさまで、ニュース番組「NEWS23」のテーマ曲だった『Put Your Hands Up』を披露できました。

――有言実行を貫いたわけですね。意思を示し進むという中では“失敗を恐れる”気持ちもつきまといそうですが、最後に、仕事やプライベートを問わず野村さんなりに意思決定の基準をお伺いできますか?

野村:あとになって振り返り後悔するのは「嫌だな」と感じているんです。やった後悔よりやらなかった後悔の方が大きくて、「逃した魚は大きい」という言葉の通りですね。僕はチャレンジングな物事の方が楽しくて、少しずつうまくできるようになる、これはいいことだと思います。

先ほどお話ししたピアノも、当初はただ鍵盤を叩いてるだけでしたが、今ではある程度表現ができるようになった感じはあります。苦労してやっているわけではなく、楽しいんですよね。これからも、やったことのなかったことや“学び”があることに挑戦したいと思います。

さて、前編と後編にわたり『ポケモン GO」の仕掛け人であるナイアンティック社の野村達雄さんへのインタビューを紹介してきた。老若男女の誰もが愛するメガヒットゲームアプリの背景にあったのは、失敗に怯えず、とにかくまずはやってみて人を巻き込むという野村さんの“力”だった。

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©2017 Niantic, Inc. ©2017 Pokemon. ©1995-2017 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

その力により具現化した一大プロジェクトは、今年6月には強敵のポケモンにトレーナー同士が協力して立ち向かう「レイドバトル」を実装、さらに、8月9日〜15日に横浜で開催されるイベント「ピカチュウだけじゃない ピカチュウ大量発生チュウ!」でも『ポケモン GO』のイベントが開催されるなど、さらなる展開も期待される。

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ど田舎生まれ、ポケモンGOをつくる

小学館集英社プロダクション 1200円+税

『ポケモン GO』開発リーダー、野村達雄の人生に迫る。『ポケモン GO』開発秘話も余すところなく収録。現在も『ポケモン GO』のゲームディレクターとして活躍する野村達雄氏が『ポケモン GO』開発に至るまでの半生に迫ります。

取材・文=カネコシュウヘイ

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