美容アカウントの異様な熱狂――Twitterで“美人になりたい女”の権力争いが勃発する理由

美容アカウントの異様な熱狂――Twitterで“美人になりたい女”の権力争いが勃発する理由

  • サイゾーウーマン
  • 更新日:2017/11/12
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2015年、Twitterユーザーの女子の間で一大旋風を巻き起こした“キラキラ女子”を覚えているだろうか。ハイスペックで優しい彼氏や取り巻きの男を従え、贅の限りを尽くした生活を送る若くて容姿端麗な女子――彼女たちの日常をつづったツイートには、たくさんの批判が寄せられたものだが、一部熱狂的な信者を生み出したのも事実だ。

しかし15年末、キラキラ女子アカウントの代表的存在だったばびろんまつこ氏が、詐欺と商標法違反で逮捕。セレブツイートが、全て“虚飾”だったことが発覚し、同時にTwitter上のキラキラ女子ブームは去っていった。

■何が何でも美しくなりたいという強迫観念

そして、そんなキラキラ女子に取って代わるように、現在一部のTwitterユーザーの女子から注目を浴びているのが、“美容アカウント”である。主に化粧、スキンケア、ダイエット、整形など、美容に関する情報をツイートするアカウントで、「美容垢」と呼ばれている。

アカウントの主は、中高生から20代の女子が中心で、「このコスメがよかった」「○○というサプリは美白効果が高い」などといった情報のほかに、石原さとみや乃木坂46・白石麻衣といった芸能人の化粧分析、自身のダイエット記録などをツイートしている。一見“美容意識の高い女性”というだけで、キラキラ女子のようなインパクトはないように思えるが、彼女たちのツイートを読んでいると、「私はブスだから、努力して何が何でも美しくなければいけない」といった強迫観念を感じる。その一方、美容意識の低い人を見下すツイートも散見されるのが特徴である。

美容アカウントの中には、フォロワーが数万人を突破する者も生まれるなど、まるで教祖と化している者も存在する。2ちゃんねるの「美容、整形アカウント」という掲示板では、特定の美容アカウントがウォッチ対象となっており、顔を晒してないアカウントの顔写真が流出すると、「あんないばってツイートしてたのに、ブスだった」などと嘲笑されるケースも。“あのアカウント主は、実際にどんな顔をしているのか”は大きな関心事のようで、ネット上では「美容垢の中の人はブスばかり」などと偏見の目を向ける者も少なくない。

そんな異様な盛り上がりを見せる美容アカウント。「私もかなりのメイク好きなんですよ(笑)」と語る著述家の湯山玲子氏は、このブームをどのように見るのだろうか? 湯山氏はまず、実は日本人は“美容意識が高い”点を指摘する。

「先日、ヨーロッパを訪れたとき、化粧品などが売っているドラッグストアのようなお店に入ったところ、驚くべきかな、なんと化粧水が置いてないんですよ。保湿アイテムも、棚に数本あるだけ。ドレスアップ時やデート以外はフルメイクもしないしね。それに比べると、日本は異様ですよね。マツキヨの棚で、化粧水だけで一体どれくらいあるのよ? という感じ」(湯山氏、以下同)

当然、ヨーロッパにも美容意識の高い人はいるだろう。しかし、日本のように、誰もが気軽に入れるドラッグストアのような場所には、美容アイテムが集まっていないというのだ。「女は美しくあった方がいい」――日本女性の多くが、そういった価値観の上に立っていることが浮き彫りになる。

「日本人女性は、『みんなと一緒でいたい』という思いを持ちつつ、『共通の価値観上で、ちょっとだけマウンティングしたい』といった面を持っているように思います。そもそも日本では、『マウンティングはいけないこと』とされ、実力で上に行く人物を、嫉妬で引き摺り下ろすようなところがある。さらに現在、世の中が不景気なので、上に行くようなチャンスすらない。ただ、そんな中でも、ちょっとだけ『あなたと私は違うのよ』というのを示したいという欲望があるのではないでしょうか。そういった女の一面を、美容アカウントには感じますね」

なぜ、こうしたマウンティングのネタに美容が使われるのだろうか。湯山氏は、「私の青春時代は、まさに差異の時代で、『人と違った方がいい』とされ、ファッションで違いを出そうとしていました。今は、むしろ個性に繋がるような差異を嫌がる。ファッションはお金がかかるし、あまりにファッショナブルになると、周りから引かれて、グループを追放されてしまう」と述べた上で、「美容は、ファッションに比べて手を出しやすい」と分析する。

「美しい女という存在は、メディアなどから、みんなに共通の価値観がある、ということが重要なのです。そこを全員が信じているわけだから、マウンティングがしやすい。化粧品は値段的にお手頃だし、お金ではなく、努力で美しくなることもできるので、誰でもそのマウンティングに参戦できるんですよ。それに、自分の顔と向き合ってきれいになっていくのを実感でき、他人から称賛され、話題の中心になれるのは快感なんでしょうね。本当に、日本人って向上心が大好きなんですよね(笑)。あと、『女は美しくあった方がいい』『若くて綺麗な女は最強』という、古くからあって、今も廃れていない価値観が根付いているのもポイントです」

確かに美容アカウントを見ていると、メイクを「自分の個性を表現するもの」ではなく、「美人になるためのもの」と認識しているきらいがある。そんな美人になりたい女たちがTwitterに集まり、その中でヒエラルキーが形成されるのだ。

「不況に陥ると、『おとなしく思考停止状態になった方がいい』『エネルギーが低い人の方がうまくいく』といった処世術がはびこります。そんな時代において、“エネルギーのある女”は生きにくくなっている。エネルギーがあって、“勇気”もスキルも健康な野心もある女は、起業したりして社会的に成功するけど、エネルギーだけがあってそれを実人生に生かすべくの勇気や実行力のない女は、小さな世界のプチ権力者になっていくんですよ。ママ友グループでボスになる、職場でお局になる……Twitterで崇められる美容アカウントは、それと同じなのかもしれません。そんなマウンティングをするエネルギーがあったら、もうちょっと自分の人生を実り豊かにできそうな感じがしますよね。だって、自分で納得のいく化粧品をつくってもいいわけだから。でも、そういうことはしない。面倒臭いし、成功するかわからないし」

女が健康的にエネルギーを発散できない理由には、男社会の影響もあるようだ。女が社会において、権力を持ち、上に行くことがよしとされない……そんな背景から、小さな世界での“プチ権力”を得ようと躍起になってしまうのかもしれない。

ただ、美容アカウントによって美しくなり、プチ権力を得たとして、「果たしてゴールはあるのか?」と、湯山氏は疑問を呈する。

「美容アカウントのような現象を見ていると、女性が“逃避”しているようにも思えるんです。会社も親も世間の常識も、もう自分の生き方を決めてくれない今の時代において、若い女性は『自立すること』を強く求められ、『あなたは何をやりたいの?』と問われ続けている。親の教育によって、小さな頃からそういった自立の訓練をしてきた人はいいけれど、だいたいがうまくいっていない印象があります。そこで、“美”という価値観にすがり、『女は美しくなれば幸せになれる。玉の輿にだって……』と、宝くじ当選みたいな可能性を追いかけている。なぜなら、その間は“夢”を見ることができるわけですから」

美容アカウントブームが浮き彫りにする、女が置かれている切実な現状。ブームが去ったとしても、また新たな“女たちがプチ権力を奪い合う逃避の場”が生まれるのかもしれない。

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