「あの日、私たちはプライドを片づけた」こんまり夫妻が初めて語る、世界進出の裏側

「あの日、私たちはプライドを片づけた」こんまり夫妻が初めて語る、世界進出の裏側

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2023/01/27

独自の片づけ法を編み出し、著書『人生がときめく片づけの魔法』は世界で1400万部の大ベストセラーに。Netflixの冠番組は昨年、米テレビ番組最高峰であるエミー賞を受賞。

本日発売の『Forbes JAPAN』3月号の表紙を飾るのは、いまや“世界で最も有名な日本人”となった近藤麻理恵と、彼女のプロデューサーとして事業の成長を牽引してきた夫の川原卓巳。

2人は本誌のインタビューで、「地球の未来を変える事業」として世界的VCから期待を寄せられたビジネスの裏側を、初めて明かした。その一部を紹介しよう。

日本一から世界一へ。その過程を体感した者にしか見えない景色がある。

近藤麻理恵と、夫の川原卓巳は、その景色を目にした数少ない日本人だ。2人を新たな境地に向かわせたのは、米国で出会ったVC(ベンチャーキャピタル)、セコイア・キャピタルだった。アップルやグーグルを無名時代から支えた世界最強のキングメーカーとともに築いた、異次元の戦略とは─。

持ち物一つひとつを手に取り、「ときめくもの」だけを残す。それによって大切なものを見極める感覚が研ぎ澄まされ、キャリアや人間関係など人生におけるすべての選択に変革をもたらす。そう説いた近藤の著書『人生がときめく片づけの魔法』は、世界40カ国以上で出版され、累計1400万部のベストセラーを記録。

Netflixで制作したドキュメンタリー番組「KonMari〜人生がときめく片づけの魔法〜(Tidying Up with Marie Kondo)」では、近藤が米国各地の家庭を訪れ、片づけによって彼らの人生を激変させる様子が190の国と地域で配信された。

2021年には新シリーズも始まり、昨年、同番組は「テレビ界のアカデミー賞」といわれるエミー賞(デイタイム部門)を受賞。まさに世界規模の活躍だ。

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2019年1月に世界190の国と地域で配信が始まった「KonMari人生がときめく片づけの魔法」。依頼人の片づけの悩みを独自のメソッドで解決するリアリティー番組で、配信が始まるや大きな反響を呼んだ。Netflixで独占配信中。

その端緒は2010年、片づけコンサルタントとして活動していた近藤が、最初の著書『人生がときめく片づけの魔法』を日本で刊行したことにある。

「このとき私は、この本を絶対にミリオンセラーにするという目標を掲げていました。単なるお片づけテクニックでは、一部の限られた読者にしか届けることができない。『ときめく』という言葉を使い、精神性や人生観を意識する本にしたのも、より多くの人にメソッドを届けるためです」(近藤)

この戦略が功を奏し、同書はたちまち150万部を突破。しかし近藤はこの成功に慢心しない。次に掲げたのは、1000万部という途方もない数字だった。

--{気づいたら、問い合わせメールのほとんどが英語に}--

「目標はかなり明確に立てる」という近藤。非現実的ともいえるこの数字を打ち出したとき、彼女の目は、すでに世界を見据えていたのだろう。

学生時代からの知り合いだった川原と結婚し、公私ともにパートナーとなったのは14年。同年、『人生がときめく片づけの魔法』が米国で翻訳出版された。米「ニューヨーク・タイムズ」紙のコラムで紹介されて人気に火が付き、書店イベントや講演依頼が次々と舞い込むようになる。

川原は当時の状況をこう述懐する。

「あるとき、問い合わせメールのほとんどが英語になっていたんですよ。僕は英語が全然できなかったので、英文のメールを翻訳サイトに流し込んで内容を理解し、日本語で返事をつくってまた翻訳サイトに入れて英文で送るということを繰り返していました。その数が週200件に上り、もう必死でした」

日米を行き来するようになり、次第に年の半分は米国に滞在する生活に。そして15年、米『TIME』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれると、忙しさはピークに達した。

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近藤麻理恵◎1984年、東京都生まれ。19歳で片づけコンサルティング業務を開始し、独自の片づけ法「こんまりRメソッド」を編み出す。著書『人生がときめく片づけの魔法』は累計1400万部のベストセラー。新著は川村元気との共作小説『おしゃべりな部屋』。

川原卓巳◎1984年、広島県生まれ。人材教育系の会社を経て、近藤のマネジメントと世界展開のプロデュースを担当。オンラインサロン「SENSE -自分らしさ研究室-」「PRODUCERS」主催。著書に『Be Yourself 自分らしく輝いて人生を変える教科書』。

同時に第1子が誕生し、幼な子を日本に残して海外出張することもためらわれ、米国への移住を決意。シリコンバレーとハリウッドに拠点を置いた。

「だから英語もほとんどできない状態でアメリカに進出することになっちゃったんですよ」近藤はそう苦笑するが、話を聞いていくうちに、その飛躍が決して偶然ではなかったことに気づかされる。

例えば、出張で米国に行くたびに、近藤はホテルだけではなく民泊をたびたび利用した。現地の住宅の構造や暮らし方を知りたかったからだ。

「正直なところ、アメリカは日本と違って家も広いし、片づけに困ることなんてあるのかなと疑問に思っていました。でも、実際に人が暮らしている家を見ると、日本では当たり前にある下駄箱がなくて靴はクローゼットの床に散らばっていたり、広すぎるガレージにモノがぎっしりで家もう1軒分の量になっていたり。日本の当たり前がアメリカの常識ではないのだと知った半面、アメリカでもお片づけへのニーズがある、と実感できたのです」(近藤)

川原も、現地の空気を敏感に感じ取ってきた。

「アメリカで『こんまりRメソッドは、ZEN (禅)のようだね』と言われたことがあったんです。『ときめき』が体や心の声に耳を傾けるという点が、禅の考え方に通じると。これが大きなヒントになりました。

スティーブ・ジョブズが禅に大きな興味をもっていたことはよく知られているし、ちょうどマインドフルネスが注目を集めるなど、アメリカで禅的なものに対するブームが来ていた。現地で生の声を聞くことが、ビジネスに気づきを与えてくれたのです」(川原)

--{日本人が「世界で戦えない」理由}--

日本人が「世界で戦えない」理由

しかし、いざ米国でビジネスを始めると、商習慣の違いに直面する。そのひとつが、交渉の仕方だ。

「日本では、言葉に出さずとも、最初からある程度最終的な妥結点が見えていて、2~3回やり取りすれば合意に達することが多い。でもアメリカでは、最初に高い球を投げて交渉のベースを上げ、そこから徐々に落としどころを見つけていく。日本人はそのテクニックを知らないから、最初から手の内を見せてしまうんです」(川原)

これまでにも日本の数々のコンテンツが海外進出を果たしているが、本来のよさが生かされていないケースをたびたび目にしてきた。日本一になれても世界では戦えない―。その原因は交渉術にあることを、川原は痛感した。

海外進出をゴールと捉えているから、その先の展開を見据えずに、かたちにしたい一心で不利な条件をのんでしまうのだ、と。だからこそ、こんまりメソッドの伝え方は絶対に妥協したくないという思いがあった。

前述のNetflixの番組制作をめぐっても、その姿勢を崩すことはなかったという。

「僕らにとってアメリカ進出はゴールではなく、ひとつの通過点にすぎない。僕らが本当に目指していたのは、こんまりメソッドを本来のかたちで、ひとりでも多くの人に伝えていくこと。それが受け入れられないなら、企画が流れても構わないという強い姿勢で交渉に臨みました」(川原)

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前作から約2年半の時を経て始まった新しい劇的改造シリーズ「KonMari “もっと”人生がときめく片づけの魔法」。仕事と家庭の両立に悩む人たちに、近藤がときめきあふれる片づけ術を紹介する。Netflixで独占配信中。

実に2年に及んだというNetflixとの交渉。特に「どの程度内容の決定に関与できるのか」というクリエイティブコントロール面と、「どの国や地域で何年まで放映されるのか」という権利面については一歩も引かなかった。あまりにタフな交渉に相手側が音を上げて、一度話が白紙になったという。

「そんなに要求を貫こうとすると、チャンスを逃してしまう、と周囲に忠告されたこともありました。でも、本当に価値のある企画なのだから相手も手を引かないだろうという確信がありました」(川原)

ここから2人の本当の戦いが始まる──。VCと向き合い、緻密な戦略を立て、新たなミッションを掲げて動き出した川原と近藤。エミー賞獲得、著書1000万部超という夢をいかにして現実のものとしていったのか? インタビューの続きは、本日発売の『Forbes JAPAN』3月号にてお読みいただけます。

近藤さん衣装:ブラウス¥374000、スカート¥231000(ジョルジオ アルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン 03-6274-7070)、ピアス¥35200(ジジ/ホワイトオフィス 03-5545-5164) 川原さん衣装:スーツ¥418000〜※オーダー価格(ジョルジオ アルマーニ/ジョルジオアルマーニ ジャパン 03-6274-7070)、シャツ・スタイリスト私物

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