菅氏は“首相失格”...党首討論で「思い出話」を語る総理では、日本経済は絶望的

菅氏は“首相失格”...党首討論で「思い出話」を語る総理では、日本経済は絶望的

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/06/10
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突然、「思い出」を語り始めた…

質問と噛み合わない菅義偉首相の答弁は、ほとんど聞くに耐えないものだった。6月9日に2年ぶり、菅政権としては初めて開かれた党首討論に、歯がゆさを感じた人は少なくなかったはずだ。というのも、菅首相のその言葉に「国民への思い」というものが感じられなかったからだ。

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党首討論での立憲民主党枝野幸男代表[Photo by gettyimages]

たとえば7月下旬に始まる東京オリンピック・パラリンピックに対して、十分な危機意識が窺えなかった。立憲民主党の枝野幸男代表が

「総理は月曜日の参議院の決算委員会で『国民の命と健康を守るのは自分の責任で、それがオリンピック開催の前提条件だ』と言ったが、最大のリスクは開催を契機として国内で感染拡大を招くことだ。開催の前提条件にこれを含むということで宜しいか」

と質問すると、菅首相は手元の資料に目を落としつつ、参加者の数の制限や数次にわたる検査、そしてGPSを付けた行動監視などの対策の他、日本国民との接触を禁止し、違反者には強制退去させることなどについてとつとつと答えていたが、突然1964年に開催された東京オリンピックについての“思い出”を語り始めたのだ。

「実は私自身、57年前の東京オリンピック大会、高校生でしたけれども、いまだに鮮明に記憶しています。それは例を上げますと、たとえば“東洋の魔女”と言われたバレーの選手、回転レシーブというのがありました。喰いつくようにボールを拾って、得点を上げておりました。非常に印象に残っています。また底知れない人間の能力というのを感じました。マラソンのアベベ選手も非常に印象に残っています。

そして何よりも私自身、記憶に残ってますのは、オランダのヘーシンク選手です。日本柔道が国際大会で初めて負けた試合でしたけれども、悔しかったですけれども、その後の対応をすごく印象に残っています。興奮したオランダの役員たちがヘーシンク選手に抱きついてくるのを制して敗者である神永(昭夫)選手に対して敬意を払った あの瞬間というのは私はずっと忘れることができなかったんです……」

菅首相はおそらく、自分なりのオリンピックへに対する思いがあることを述べたかったに違いない。確かに当時のオリンピックが国威発揚のセレモニーであり、東海道新幹線とともに戦後復興のシンボルで、夢があった。

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1964年の東京オリンピック男子柔道無差別級の表彰式。左から神永昭夫選手、オランダのアントン・ヘーシンク選手[Photo by gettyimages]

だがそれから半世紀以上を経て、オリンピック・パラリンピックはその性格を大きく変えている。ある時は国際政治の道具とされ、1984年のロサンゼルス大会以降はビッグビジネスとして開催時間や競技運営などに、スポンサーの意向を強く反映されるようになったからだ。今回の東京大会もその誘致から巨大な資金が動いたとされ、フランス検察の捜査の手は日本にも及んだ。

にもかかわらず、わずか45分間しかない党首討論で、聞かれもしない「ノスタルジー」を述べる必要があるのだろうか。国民がいま最も知りたいのは、生活に直結するコロナ対策であり、経済対策であるはずだ。それは総理の「センチメンタルな思い出話」で満たされるものではない。

一方、経済政策は穴だらけ

そして肝心の経済対策についても、菅首相の答弁は質問と噛み合っていなかった。コロナ対策として30兆円規模の補正予算を求める枝野氏に、菅首相は「実は本年度に繰り越している金額がおよそ30兆円ある。これを執行して、まずは全力で支援していきたい」と満額回答のつもりで答えたのだろうが、それだけの金額を残しているのなら、なぜすぐに思い切った対策を打たなかったのか。

そもそも政府は昨年来、大規模な補正予算を次々と作成してきた。2020年度の第1次補正は25兆6914億円、第2次補正は31兆9114億円にも上っている。これに2021年1月28日に成立し、2021年度当初予算とともに「切れ目なく歳出総需要に対応」するために作られた第3次補正予算は19兆1761億円で、額面では合計で76兆円を超えるのだ。

さらに本年度本予算の予備費が3兆9880億円残っていると、麻生太郎財務大臣が6月7日の参議院決算委員会で述べている。

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麻生太郎財務大臣[Photo by gettyimages]

確かにこうした財政出動には、一定の効果があった。内閣府が6月8日に発表した2021年1~3月期の実質GDPの2次速報値は前期年率3.9%減で、1次速報値の5.1%減から幾分か上方修正されている。第2回目の緊急事態宣言発令によって実質住宅投資を除く全てにおいて内需は前期比マイナスだったものの、実質政府支出や実質公共投資が押し上げたためだ。

だがこれでは全く不十分だ。実際にOECDが発表した2021年の日本の成長率(推定値)は、G7どころかG20でも最下位に陥った。ポストコロナ社会に向けて世界が猛スピードで経済を回復させる一方で、日本だけが衰退の沼に足をとられたまま沈みつつあるのに等しい。

こうした現実に危機感を抱く国民民主党の玉木雄一郎代表は、「ワクチンの接種が進む中で大型経済対策を打ったのがアメリカだ。今の日本は3か月前のアメリカと一緒。 このタイミングで大規模補正・経済対策を打つべきだ」と訴えた。重要なのは「高圧経済」を作り上げることで、一気に内需を拡大させることだ。

アメリカは今年3月に現金給付を含む1兆9000億ドルの経済対策法案を可決した上、バイデン大統領は2兆ドル超の「雇用計画」を発表した。そしてコロナ禍の2020年4月には14.7%と戦後最悪だった失業率が今年5月には5.8%まで回復。これらが内需を拡大させたため、2021年1~3月の成長率は前期比年率6.4%と急上昇する。

アメリカという格好の手本があるのだからその真似をすればいいと、玉木氏は言いたいのだ。にもかかわらず、菅首相は「昨年度の補正が約30兆円、新年度に繰り越している状態で、それを見ながら判断する」と枝野氏に対して述べた言葉を繰り返すばかりで、理解しようともしない。

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党首討論での国民民主党の玉木雄一郎代表[Photo by gettyimages]

そしてさらなる現金給付を求める声に答えようともせず、玉木氏の持ち時間を終わらせた。玉木氏は菅首相に「最後の一言」を促したが、菅首相は椅子から立ち上がろうともせず、持参したファイルから国民民主党への答弁分を抜き取った。

菅首相は感じているだろうか、その一挙手一投足を国民が注視していることを。そして知っているのだろうか、それが次の世論調査で内閣支持率に反映することを。その耳にコロナ禍に苦しむ国民の声が届いていないことだけは、間違いないようだが。

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