米国一極支配の終焉...?「同盟国・日本」は捨てられるのか

米国一極支配の終焉...?「同盟国・日本」は捨てられるのか

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/19
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確かに米国は退潮している

「米国の一極支配はもう終わり。2030年頃には中国が米国を経済規模で抜いて、世界は多極化する。そして米軍は世界中から撤退し、日本は核を持った統一朝鮮、ロシア、中国に裸で直面する」というのが、この頃の通り相場。

確かに米国に行ってみると、下町や地下鉄の様相は、途上国を思わせる。危機感を持った白人達はトランプの周りに結集し、これまでの自由・民主主義・アカウンタビリティ等の価値観はどこの誰の話しかと言わんばかり。なりふり構わず、私利私欲の追及に走る。

70年代の白人中心の米国を知る筆者は未だに信じられない思いでいるが、こうなることは、30年以上前から予想されていたのである。

1965年、米国は移民法を改正し、それまで欧州の白人を優先していた民族ごとの移民数割り当てを廃止した。これで米国には非白人人口が急増し、白人の少数派への転落を予言する本が1980年代にはちらほらと出始めていたのである。

もう1つ、米国退潮の原因は、経済が成長のエンジンを失ったことである。

1970年代にかけて日本からの安価な輸入品が米国市場を席捲(この頃のことは誰も覚えていないようだが、当時の米国はmade in Japanの電気製品、雑貨であふれていた)、労組の要求で賃金や年金をつり上げてきた米国製造業は身売りするか、海外に移転するか迫られて、米国製造業は空洞化した。

それでも、半導体、航空機等の付加価値の大きい分野を押さえていたため、製造業の生産額では2010年頃中国に抜かれるまで、世界一を続けた(「エコノミスト」2012年3月10日)。

これによって米国経済は、製造業に依存している限り停滞することを運命づけられたのである。

従って1990年代、クリントン政権下で金融面での規制緩和が相次ぎ、金融バブルが米国の成長を支えるようになる。

マネー・サプライ2は1990年から2019 年の間に4.7倍となり(CEIC「米国マネーサプライM2」)、この間GDPは3.6倍になった。1960年から1990年の間は、マネー・サプライ2の増加が11倍弱、GDPが11倍であったのに比べると、近年のバブルぶりが如実である。

この金融バブルから生み出される(偽りの)富は、少数の者によって独占され、米国での所得格差は拡大する一方となった。そして金融バブルはほとんど定期的に破裂し、金持ちだけでなく社会全体を破滅させ、トランプのようなポピュリスト政治家を生み出す。

「国」は惰性

では米国はもうお終いなのか? しかし横須賀や横田の基地に行ってみれば、アメリカ人は以前と変わらぬ様子でそこにいる。巨大な空母、長距離ミサイルを発射できる原潜も停泊している。

つまり、近代の国民国家はそんな簡単には崩壊しない。多くの人間が1つの「国家」という仕組みの中で働き続ければ、その国家はなくならないのである。

筆者が昔、勤務したソ連もそうだった。1991年8月、保守派が焦ってクーデターを起こして(失敗して)いなければ、ソ連は今でも国家連合という形で存続していたことだろう。

ローマ帝国も、4世紀、シルクロードを伝ってやってきた天然痘などの疫病で都市人口の半分を失うような目にあっていなければ(Ian Morri “Why the West Rules”)、その後も続いていたことだろう。

1929年の大恐慌、そして2008年のリーマン金融危機の時も、米国が国家として崩壊したわけではない。

今日の米国の場合、当面予想される大きな打撃は、金融バブルの崩壊である。トランプのめちゃな政策(法人税大減税の傍らで国防費を大盤振る舞い、あるいは好況の中での利下げ強要等)のせいで、財政赤字が増大し、金利が高騰しつつある。これは債券市場の崩落を起こして、リーマン危機並みの恐慌をもたらしかねない。

あるいは、民主党の大統領候補のエリザベス・ウォレンの大統領当選が確実になってくると、法人税増税等の彼女の政策は企業の利益率を引き下げるので、株価は半値に落ちてもおかしくない。

そしてウォレンは、銀行が20倍、30倍のレバレッジをかけた金融商品に手を出すのを禁じようとしているので(1929年のグラス・スティーガル法の復活である)、そうなると1990年代の金融規制緩和は振り出しに戻る。

米国は金融バブルという偽りの富を失って(それは今のGDPの20%以上を占めている)、real economyで堅実に生きる国となる。

だがそれは表面的には、GDPが20%以上縮小することを意味し、現実的にはとても取れる政策ではないし、ウォレンの政策は、法律にする段階で議会の抵抗を受けて通らないだろう。

それは別にして、金融バブルが崩壊した場合、「覇権」は中国やロシアに移るだろうか?

そうはならない。2008年の場合、中国は60兆円分もの内需拡大で一挙に世界の先頭に躍り出たが、その手はもう使えない。財政赤字が年間約40兆円分(野村総合研究所「Financial Information Technology Focus」2016年5月)に達し、対米輸出も急減しているからだ。

だから、米国経済が沈めば、中国経済も共に、いやもっと激しく沈むだろう。ロシアもそうで、世界が不況になれば原油価格が急落するから、ロシア経済はたまったものではない。2009年には、GDPを7.8%減少させている。

一方、米国の金融バブルが破裂しても、ドルは使われ続けるだろう。世界の貿易・金融取引の多くはドルで決済されているので、2008年のリーマン危機の際も、ドルは投げ売りされるどころか世界的にドル不足が生じ、プレミアムをつけて買い集められた。

米国は、ドルをほしいままに増刷し、先進国の中でいち早く景気回復を果たしてしまったのである。

そして米国は、世界最大の輸入国、直接投資の受け入れ国であり続ける。

日本にとっては中国への輸出も大事だが、実は日本から中国に輸出する多額の部品類は、日本、あるいは欧米が中国に輸出した機械によって組み立てられ、その多くは米国に輸出されている。従って、米国は日本にとっても相変わらずダントツの輸出市場なのである。

だからこそ、米国が定めるコンプライアンス規定、あるいは対ロ・対中先端技術の輸出規制などは、日本企業も守らないと、米国がその企業の製品輸入を禁止し、その企業の米国工場の操業を禁止することになる。

ロシアの大企業ルスアルは、ドル決済を禁じられて、一時パニック状態に陥った。こうして経済面での米国の法制の網は、日本、いや全世界の企業に投げかけられ、あたかも世界国家が成立しているかのような様相を見せているのである。

このように、好むと好まざるにかかわらず、米国は当面経済面での覇権を維持するだろう。5G 等で中国が技術面でも米国を抜くとか言われているが、ファーウェイ社は5Gの技術そのものより、5Gのシグナルの伝達をうけおう無線基地、交換機を生産するだけで、5G を実際に利用する技術(自動運転等、まだどの国でも完成していない)では、中国は米国にまだ劣る。

そしてあらゆる工業製品の基礎である半導体の80%をいまだに輸入に頼っている現状では、科学技術の面でも米国を抜くことはできないだろう。

米国は同盟相手を捨てるのか?

10月6日、トランプはシリアの米軍を撤退させると発表した。これは彼の選挙公約なのだが、発表はいかにも唐突で、「米国はこれまでISISを叩くため共に戦ってきたクルド人を見捨てるのか。米国は同盟国も同じように扱うのではないか」という非難と危惧の声を世界で高めることになった。

フランスのマクロン大統領は、これまで米国に協力してきたにもかかわらず、撤兵について事前の通告を受けていなかったことに言及し、「NATOの米欧同盟は『脳死』の状態にある」とまで言った。

さらにトランプは9月25日、ウクライナのゼレンスキー大統領に電話。

ウクライナ政府が、バイデン前副大統領がウクライナとの関係で地位を濫用した(自分の息子をウクライナ企業の取締役に押し込んだ)ことの証拠を自分に渡さなければ、(東ウクライナで親ロシア系勢力と戦うための)兵器供与は行えないということを言った。

ウクライナがロシアの侵略と戦うのを助けるより、自分の大統領選挙の方が大事だというのである。

この2つのことで、トランプの「外交」に対する内外の批判、警戒心は臨界点に達し、米議会は弾劾への動きを強めた。

しかし、世界は引っ繰り返っていない。米国の同盟体制、世界への軍の展開は、外交官、軍人、そして予算に支えられていて、トランプの鶴の一声ではなかなか変わらない。

別の言葉で言えば、トランプは政府の内部で十分練り、調整した結果を発表しているのではなく、細部をよく調べもせず、勝手にツィッターで政策をぶち上げるので、実際には実行できない部分が多くなる、ということなのだ。

例えばアフガニスタンからの米軍撤退は、トランプの数度にわたる発言にもかかわらず進んでいないし、シリアでも米軍はクルド系が抑える油田、南部のヨルダンとの国境地帯にそれぞれ200名程の兵力を残している(「BBC.com」10月23日)。

そして東ウクライナでは、トランプ外交の迷走をいいことに、ロシア側勢力がカサにかかってウクライナ側を攻めるようなことはなく、ゼレンスキー大統領が進める両軍引き離しに応じようとしている。

トランプ米国はEUを経済面での競争相手として(と言うか、ドイツがEUの名の後ろに隠れているからだが)EUを敵視し、BREXITをあおるなど、EU弱化のためには努力を惜しまない。

だが、安全保障を司るNATOにおいては、ドイツやフランスの防衛努力が足りないことをなじりつつも、ロシアに近接するバルト諸国、ポーランドやルーマニアへの米軍、その他NATO加盟国軍の配備を増強し、2020年には一説に1個師団分とも言われる大兵力が大西洋を渡る、D-Day並みの大規模演習Defender 2020を行うことを計画している(“Defense News”2019年10月7日“World Socialist Web Site”2019年10月8日)。

中東では、イスラエルのネタニヤフが政権を失ったり、湾岸産原油への米国の依存度が低下したりと、米国の関与を薄める要因が出現しているが、だからと言って対イスラエル支援の弱化や、湾岸地域での米軍のプレゼンスを削減する動きにはなっていない。

そしてアジアでも、トランプは既存の同盟体制を大きく揺さぶるような挙にはまだ出ていない。

北朝鮮の核武装を黙認した上で平和条約を結んだり、中国と適当なところで妥協して米株価の維持をはかるような動きは(まだ)見られないのである。

しかしトランプは、10月24日のペンス副大統領スピーチに見られるような戦略的な考えに基づいて、中国と対立しているわけではない。大統領選をにらんで、北朝鮮や中国と無原則に妥協してしまう可能性は残されている。

世界では、「米国が引いたところ(特に中東とウクライナ)にロシアが乗り出してきている。ロシアの関与なしに中東の問題を解決することはできなくなってしまった」という声が喧しい。

しかしシリアに米軍やISISがいた時は、ロシアも軍を少し置いておくだけでアサド政府から大いに感謝され、世界にも強い印象を与えたが、米軍が去ると、ロシアはシリアを丸抱えで助けてやらざるを得なくなるだろう。

プーチンは柔道の名手。小柄だから相手に押させ、その力を利用して相手を投げ飛ばす戦法の名手なのだが、その相手がいなくなると、自分の非力が身に染みるだけ。自力だけでは大したことはできない。

それは中国も同じことだ。飛ぶ鳥を落とす勢いだった中国の外交も、対米関係悪化を契機とする経済力の低下で、これからはしぼみ気味になるだろう。

そしてインドもブラジルも、経済が伸び悩む。米国の金融バブルが破裂すれば、これら諸国の経済も沈むので、とても米国の覇権に取って代わることはできない。

日米同盟関係はどうなるのか?

トランプは同盟国日本を捨てるのでないか、と心配する者が多い。確かに彼は、日本が米軍の駐留費用をもっと払わないなら、米軍は出ていくかもしれない、ということを言ったことがある。しかしその後、彼は、「米軍は出ていくかもしれない」ということは、決して言わない。

さすがの彼も、米軍の日本駐留は、日本を「守ってやる」ためだけではない、むしろ米軍の中東に至るまでの展開の重要な拠点になっていることに気が付いたのだろう。

それに、米軍の日本駐留に値をつけるようでは、米軍が日本の傭兵になってしまう。日本にとっては、ロシアの傭兵を雇う方がよほど安いことだろう。

しかし日米の安保協力は、双方に益がある。軍人、役人が緊密なネットワークを築き、それは両国の予算で裏付けられている。トランプが何か言っても、それは両国の当局間の話し合いで、落ち着くべきところに落ち着かされることだろう。

一方、トランプが同盟体制に冷たいことは、日本がこれまでの過度の対米依存性を改善する、かっこうのチャンスでもある。

日本を抑えつけ、その経済力・金融力を米国自身のため、そして米国の対アジア外交のために役立てる、日本の基地を米軍のグローバルな展開のための一大拠点として確保しておく、というのは戦後、米国の対日政策の柱だった。

日本は自主防衛力を強化し、集団自衛権の行使も自らに許せば、対米依存を緩和できたことだろうが、平和主義の世論に縛られ、それはできなかったのである。

しかし中国が尖閣諸島周辺での動きを強め、北朝鮮が核武装国家になった今、日本の世論は自主防衛力の強化をむしろ求めるようになっている。

以前はとても考えられなかった、ヘリ空母「いずも」の空母化、中距離の巡航ミサイルの入手まで、予算が国会ですんなり通ってしまう時代になっているのだ。

ここはトランプ大統領の恫喝をむしろ利用して、日本の自主防衛力を強化するべき時だろう。北朝鮮・中国・ロシアを念頭に、核抑止力も整えなければならない。

それでも、日米同盟は維持した方がいい。それだけで、中国やロシアは日本に手を出しにくくなる。抑止力になるのだ。そして自主防衛力を強化し、日本を守る米軍を、集団自衛権を適用して守ることができるようにすれば、米国も日本に経済・金融面での、あこぎな要求をやりにくくなるだろう。

トランプ政権下では以上の通り、米国の覇権や日米同盟に大きな変更はないだろう。

もし次の大統領選で別の者、例えば民主党のエリザベス・ウォレンが大統領になったら、どうなるだろう。やはり、国内政策第一の姿勢は変わるまい。

それでもウォレンは、2018年3月に来日した時には自らのツイッターに、「日米同盟は重要」と書いている。

そして彼女の政策顧問Ganesh Sitaramanは、「(従来の民主党の)民主主義を広めるための外国政権転覆工作はやらない」と言っている。これは、同盟国との協力を重視する一方、ネオコンに見られた、上から目線の介入政策は行わないということで、日本や西欧諸国にとってみれば、協調しやすい相手となるだろう。

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