農薬「グリホサート」、世界は削減・禁止の流れなのに日本は緩和!?

農薬「グリホサート」、世界は削減・禁止の流れなのに日本は緩和!?

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2019/09/21

◆世界各国が削減・禁止に動く中、日本は残留基準値を緩和

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グリホサートは農薬「ラウンドアップ」の成分

昨年から今年にかけて、農民連食品分析センターが国内で販売されている小麦粉やパン、パスタなど小麦製品の農薬残留検査を行ったところ、そのほとんどから農薬の成分グリホサートが検出された。(参照:国内で販売される小麦製品の約7割からモンサントの除草剤「グリホサート」検出

国内産の小麦からは検出されていないことから輸入小麦に原因があると思われる。安全な農薬と考えられてきたグリホサートだが、2015年にWHOの専門機関(IARC 国際がん研究機関)によって発がん性物質に分類されて以降、世界各国はグリホサートの使用削減・禁止に動いている。そんな中で日本は何の対策もとらないばかりではなく、食品残留基準値を緩和しているのだ。

◆グリホサート生産量は2002年の約3倍に

消費者にとってグリホサートは「除草剤耐性遺伝子組み換え作物」に使われる農薬「ラウンドアップ」の成分として知られている。日本では、1996年に遺伝子組み換え作物の輸入が解禁され、除草剤耐性大豆やナタネなど最初の遺伝子組み換え作物が食卓に上り始めた(食用の遺伝子組み換え作物は、消費者・生産者の反対が強いため、国内では栽培されていない)。

それから20年が経過し、除草剤耐性大豆やナタネの栽培面積は拡大した。大豆の9割、ナタネのほとんどは遺伝子組み換えとなった。遺伝子組み換え作物の栽培拡大につれて、グリホサートの使用量も増大。2002年に5000万トンだった生産量は約3倍に増えている。

◆体内のグリホサート量増加は、食品からの摂取が原因!?

除草剤耐性作物が増え、グリホサートの使用量が増えるにつれて、遺伝子組み換え作物の最大の生産国・消費国である米国では、健康への不安が高まっていった。

特に、ハワイ州には4つの島(モロカイ島、マウイ島、オアフ島、カウアイ島)に1141もの遺伝子組み換え作物の屋外試験圃場がある。モンサントやデュポンパイオニア、シンジェンタなど、遺伝子組み換え化学会社の試験圃場が米国一多く存在する「遺伝子組み換えの島」なのだ。

住宅地や学校など、生活の場の中に圃場があり、人々の住居や学校などと圃場の間には緩衝地帯もなく、フェンス1つで仕切られているような状態だ。1年中多量の農薬にさらされる住民たち、特に子どもたちへの健康への影響が懸念されている。

グリホサートの使用量が増えたことで、実際に人が曝露する量は増えたのだろうか。

カリフォルニア大学家庭医学と公衆衛生学のポール・ミルズ教授が1993~1996年、2014~2016年に、南カリフォルニアに住む50歳以上の高齢者の尿中のグリホサートを検査した。その結果、20年の間に尿中のグリホサート量は500~1000%増加していたという(2017年「ジャーナルJAMA」より)。

この増加が環境からの曝露によるものなのか、食品からの摂取によるものかは分かっていない。ミルズ教授は、食品からの摂取を疑っているという。

◆「子どもの体の異変はグリホサートの影響!?」と疑う母親たち

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「グリホサートではなく、より安全な代替品を使おう」と呼びかけるポスター

グリホサートによる健康への懸念はハワイ州だけの問題ではない。「グリホサートの影響で、アレルギーや自閉症、ADHD(注意欠陥多動性障害)など、子どもの体に異変が起きている」と感じている米国の母親たちが、『Moms Across America』を結成。子どもの食事から遺伝子組み換え食品とグリホサートを除去するために、グリホサートの代替品を勧め、有機食材を選ぶ運動などを展開している。

しかし、グリホサートが使われているのは遺伝子組み換え作物だけではなかった。1980年代から30年以上、小麦の収穫を容易にするために「乾燥」と呼ばれて収穫前に除草剤散布(プレハーベスト)が続けられてきた。その結果、小麦粉を使ったパンやパスタ、ピザなどからも残留農薬が検出されている。

◆「ラウンドアップは飲んでも牛乳と同じくらい安全」と開発企業

ラウンドアップの安全性に関しては、2002年の段階ですでにレイチェル環境基金が「ラウンドアップは先天性奇形の増加に関係があり、神経発達障害が3倍に増える」という、2つの研究について紹介している。

内でラウンドアップ(グリホサート)農薬を販売する日産化学工業は、この農薬について「急性毒性が低く、催奇性、奇形性、発がん性もなく、非常に安全性が高いことが国際的に認められている」と安全性を強調している。

さらに、ラウンドアップの開発企業であり、遺伝子組み換え作物を推進してきたモンサント社はこれまで「ラウンドアップは飲んでも牛乳と同じくらい安全」と言ってきた。

飲んでも安全な農薬があるとは思えないが、ラウンドアップの主成分であるグリホサートは米国環境省(EPA)によって「ヒトにガンを引き起こさない化学物質」に分類されているのが現状だ。

◆ラウンドアップに添加された補助成分が遺伝子を傷つける!?

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小型飛行機で散布される除草剤

2000年頃には、イタリアの国立ガン研究所が「ラウンドアップに添加されている補助成分(不活性成分)が遺伝子を傷つける」と報告。その後不活性成分「非イオン系界面活性剤ポリオキシエチレンアミン(POEA)」が、グリホサートの3倍以上毒性が強いということがわかってきた。

農薬にどのような不活性成分が使われているかは「企業秘密」であるとして、明らかにはされていない。しかし一部の研究者たちは、グリホサートとPOEAの混合物であるラウンドアップは「グリホサート単独の場合と比べて明らかに毒性が強い」として、「補助成分を含めたラウンドアップの安全性について当局は見直すべき」と主張している。

◆超低濃度でも先天性異常、脂肪肝を引き起こす!?

アルゼンチンやパラグアイなどでは、2000年頃から大規模に遺伝子組み換え大豆が栽培されるようになった。小型飛行機でラウンドアップの空中散布が行われるようになると、周辺住民の間で小児がんや先天異常、皮膚障害などが増えてきた。

ラウンドアップは「分解も早く催奇性がない」と言われてきたが、2010年にブエノスアイレス大学のアンドレス・カラスコ教授(医学部・分子胎生学研究所長)らが、「カエルや鶏の胚で実験した結果、極めて低い濃度であってもラウンドアップが先天異常を引き起こした」との研究結果を発表した。

さらに、大豆栽培が盛んなアルゼンチン・チャコ州政府は「グリホサートと、小児がんや脳腫瘍、先天異常などの発生は関連がある」とするレポートを発表している。

グリホサートは2015年にWHOの専門機関(IARC=国際がん研究機関)によって発がん性物質に分類された。2017年には、ロンドン大学の研究チームが「超低濃度のグリホサートでも、長期間摂取すれば脂肪肝を引き起こす」という研究結果を発表している。

2019年8月、産科医の国際組織である国際産婦人科連合(FIGO)は「グリホサートはガンや神経発達障害、先天性欠損症との関連が疑われる。またメチル水銀同様、胎盤を通過する可能性があり、予防原則の立場から使用を避けるのは社会的責任である」として、グリホサートの使用禁止を勧告している。

◆世界で広がるグリホサート使用禁止

20~30年にわたって大量に使い続けてきたグリホサートは、パンやパスタだけではなく、水道水やワイン、ビールや蜂蜜など、さまざまな飲食料品から検出されている。米国では子どものワクチンからも検出されて、母親たちに衝撃を与えた。

アジアではベトナム、スリランカがグリホサートの輸入を禁止、EUではオーストリアやドイツがグリホサートの全面禁止を決めた。フランスは2023年までに段階的に廃止する。チェコは2018年収穫前にグリホサート散布を禁止、デンマークもすべての作物の出芽後の散布を禁止している。イタリアは公共の場での使用を禁止、ベルギーやオランダは専門家以外への販売を禁止した。

ブラジルは昨年、連邦裁判所が「連邦政府が毒性を再評価するまでグリホサートの使用を禁止する」と決定。その他の国や地域、自治体、学校などでも、グリホサートの使用禁止や削減に取り組み始めている。インターネットの署名サイト「アバーズ」は、グリホサート使用禁止を求める署名を実施、全世界から140万件もの署名が集まったという。

それに比べて、日本政府は何の対策を取らないばかりか残留基準値を緩和、その使用量も増加している。日本の多くの環境NGOなどは「世界中で使われなくなったラウンドアップが日本に集まってくるのではないか」と恐れている。

<文/上林裕子>

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