クラフト・ハインツに難題、消費者の嗜好の変化

クラフト・ハインツに難題、消費者の嗜好の変化

  • WSJ日本版
  • 更新日:2018/02/13
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【ダベンポート(米アイオワ州)】米クラフト・フーズ・グループは1872年に建てられたアイオワ州ダベンポートの6階建て元食肉処理場で何十年にもわたり、「オスカー・マイヤー」ブランドの加工肉を製造していた。

システム全体が過去の遺物のようだった。大だるに詰めたハムや七面鳥肉、鶏肉を従業員がフォークリフトに乗せ、貨物用エレベーターで次の加工作業を行うフロアまで運んだ。七面鳥の胸肉を生肉からパック詰めスライス肉にするまでに通常、エレベーターを4回乗り降りする必要があった。不具合が生じれば、たちまち生産が滞る可能性があった。

2015年にブラジルの大手投資ファンド、3Gキャピタルがクラフトを買収。クラフトと3G傘下のHJハインツが合併してクラフト・ハインツが誕生すると、20億ドル(約2170億円)規模のコスト削減計画が始まった。非効率性が目立った同工場は、閉鎖対象の7拠点の一つとなった。

過去2年半の間に数千人が失職し、オスカー・マイヤーの本部などクラフトを象徴する建物が閉鎖・売却された。コスト削減計画はほぼ終了し、クラフト・ハインツは今や米食品業界でも最高水準の営業利益率を誇る。

ただ、この成功は新たな、より厳しい課題を突きつけている。しかも3Gが専門知識を発揮できない分野だ。加工肉市場そのものが縮小しつつある中、クラフト・ハインツのシェアも低下している。より新鮮で自然に近い食べ物を求める消費者の嗜好が響いているのだ。3Gが得意とするのは米国の有名ブランドを買収し、コストを最低限まで絞り込む手法だが、売り上げを伸ばすことや、特に消費者の好みに合わせた製品作りでは実績がない。

3G 出身者が大半を占めるクラフト・ハインツの経営陣が販売拡大を主導できるのか、ウォール街は不安視している。同社の株価は先週、2年ぶり安値をつけた。この1年間では21%下落。同期間にS&P 500種株価指数は13%上昇した。

3Gはクラフトのダベンポート工場について、同社が大幅な経費削減だけでなく、ブランドに投資する方針であることを示すための計画の重要な部分だと話す。

加工肉の生産ラインは約16キロ離れた用地に建てる2億2500万ドルの新工場に移転し、6月から稼働する予定。5年前にHJハインツの買収によって食品業界に参入して以来、3G が建設段階から手がける初の米国工場となる。

数週間で生産が本格的な軌道に乗れば、同工場の生産能力は1週間に1270万トンと、旧工場の約17%増となる。その一方で、従業員は500人少ないという。

3Gが買収する前の2014年にクラフトを退職した元運輸責任者のマイク・コール氏は、クラフトの以前の経営陣は「ささやかな一歩」しか変化に取り組もうとせず、大量解雇や大規模な工場閉鎖には消極的だったと話す。「新しい会社が関与すると、何ごとも弾丸並みのスピードになる」

クラフト・ハインツは全米の生産体制を見直す中で、原料をどこで調達するか、最終製品をどこから出荷すべきか、また労働力や他のリソースにかかる費用や入手しやすさを分析するためにコンピューター・モデリングを活用し、そこから工場や倉庫の理想的な立地を割り出した。

より論理的な見地から生産ラインのグループ分けが実施された。旧ダベンポート工場にあったボローニャソーセージの生産ラインは、原料と加工方法が似ているとの理由で、ミズーリ州カークスビル工場のチョップドハムの生産ラインに統合された。ボローニャは1970年代から80年代の最盛期に比べて需要が弱まり、ここ数年は生産量が減る傾向にある。

同社の北米サプライチェーン責任者、トロイ・シャナン氏は「製品は基本的に一つの工場に押し込められ、必ずしも機能性の面で最適化された設計ではなかった」と言う。

消費者の自然志向

だがクラフト・ハインツは効率化だけでは解決できない問題に直面している。加工肉製品の米国市場での売上高は、15年の219億ドルから昨年は213億ドルに減少。「オスカー・マイヤー」ブランドの市場シェアは5年前の18%から昨年は17.5%に低下した。

自然食やオーガニック食品のブランド、さらに地元農場から直接仕入れる小規模なブランドが少しずつ市場に食い込んでいる。「消費者は手作り、もしくは手作りに見えるものを求めている」と食肉加工会社のコンサルタントを務めるクリス・フラー氏は指摘する。

ダベンポート工場では新たに「抗生物質不使用肉」の生産ラインを立ち上げる予定だ。パッケージのデザインを一新し、自然志向の原料を前面に押し出すという。またスティック状に成型加工された肉を用いず、「食卓で切り分けたような」高級な七面鳥の胸肉を生産する。同社によると売れ行きの良くない製品を取りやめ、革新的な製品に注力するほか、最も将来性の高いブランドを積極的に売り込むという。

ファクトセットによると、16日に予定されるクラフト・ハインツの決算報告では、2017年第4四半期の1株当たり利益(EPS)が前年比8%増となる一方、売上高は0.7%減の263億ドルになると予想される。オスカー・マイヤーを含む食肉部門は、米国での売上高のおよそ20%を占める。

3Gはこれまで2、3年ごとに買収を繰り返し、買収企業のコスト削減を実現してから、次の標的に向かうというパターンだった。1年前に同社が英蘭系食品・日用品大手ユニリーバに1430億ドルの買収を持ちかけた際、同じ事が繰り返されるかに見えた。だがユニリーバはこれを拒否し、買収提案は白紙に戻された。

そのため3Gはいまだ問題を抱えたままだ。大幅な節約を成し遂げたものの、クラフト・ハインツの増益につながる展望が見えてこない。

「買収は必須だ。市場はそれを期待している。それが3Gの戦略の一部だ」とスターン・バリュー・マネジメントの業界コンサルタント、マーティン・シュウォルツ氏は話す。

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