おじいちゃんの頭に真っ赤なリボン、はーい、素敵な飾りつけのできあがり!

おじいちゃんの頭に真っ赤なリボン、はーい、素敵な飾りつけのできあがり!

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2021/02/21
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心の奥にしまった引き出しは、どんな頑丈なカギをかけても、ふとしたことがきっかけで、かんたんに開いてしまう。

朝のバス通勤中、食器洗い中、それは突然、何の前触れもなく。

でも、この記憶は、思い出す度にくすっと笑ってしまうと同時に、「ごめんね」とつぶやいてしまうのだ。

「私もお母さんも25歳で出産したのにあんたが崩したね」と祖母に言われた

いたずら少女の私が、おじいちゃんの家で見つけたのは

子どものころはいたずら好きな女の子だった。おてんばで、外で動き回ることが、何より楽しかったけれど、その日はお家の中で遊んでいた。

おじいちゃんのお家へ行っていたのだ。

孫のわたしは、ひとり遊びをしばらくしていたが、飽きてしまった。

そんな時、とても魅力的なモノを見つけたのだ。

それは、七五三や、お着物を着たときにつけるような、髪飾り。華やかで、彩り鮮やかなつまみ細工のそれらに、わたしは一気にトリコになった。なんてかわいいのだろう。

つけてみたいけれど、おてんばなわたしには、うまくできない。

キョロキョロ辺りを見渡し、見つけたのは、おじいちゃんだ。

真っ赤なリボンは、頭のてっぺんに。はーい、素敵な飾りつけのできあがり!

ちょうど、どこからか電話がかかってきて、昔の電話機の前に座って誰かと話していた。その座高が、幼いわたしにはぴったりの高さだったのだ。

箱の中には、たくさんの髪飾りが入っている。

おばあちゃんは和装が好きだったから、それぞれのお着物に似合うものを集めていたのだろう。

ひとつひとつ、じっくりと眺めながら、おじいちゃんの髪に挿していく。

地味なグレイヘアが、どんどん、色とりどりになった。

まるで、これからお祭りにでも行くかのようなヘアスタイルに、わたしは楽しくって仕方がなかった。

一番大きくて真っ赤なリボンは、頭のてっぺんに。

はーい、素敵な飾りつけのできあがり!

今から思えば、ごちゃごちゃでまとまりのない頭だっただろう。

あれだけ興奮しながら飾りつけていたのに、挿し終えると、その気持ちはどこへやら。

おてんば娘の興味は、途端に違うものに向けられていった。

リボンをなびかせて自転車をこいだおじいちゃん。笑ってくれたけれどきっと

「おーい、なんやこれは!」

玄関で声がした。

名前を呼ばれて大急ぎで向かうと、おじいちゃんが大きな赤いリボンを手に立っている。きょとんとするわたしに、おじいちゃんは苦笑いをしながら続けた。

「赤いリボン、つけたままやった…」

ボソっと言った一言に、背筋が凍る思いがした。

聞くと、電話を切り、出かける用事ができたおじいちゃんは、わたしがつけた髪飾りを外し、自転車で走っていた。

踏切が開くのを待っていると、知り合いの人に声をかけられたという。

「これ、なんですのん?」

大恥かいたわ!と笑いながら怒られたけれど、本当は、孫のいたずらのせいで、顔から火が出るほどだったんだろうなあ。

あとから、お母さんにもチクリと言われた。

遊ぶだけ遊んで、外してあげなかったわたしが悪かった。

でも、当時は、自分のやってしまったことが衝撃的すぎて、ちゃんと謝れなかったのだ。

人は、自分が悪いと頭ではわかっていても、驚きすぎてしまうと、「ごめんなさい」の言葉がうまく出せないみたいだ。

幼いわたしには、なおさらだった。

あれから時は流れ、わたしも大人になり、おじいちゃんは十数年前に亡くなってしまった。

でも、今でもふと、当時の記憶がよみがえる。

ごめんね、おじいちゃん。

心の中で、後悔の念がリボンのように揺れている。

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