国内初、公立日本語学校で外国人の移住を促進 :北海道東川町の取り組み

国内初、公立日本語学校で外国人の移住を促進 :北海道東川町の取り組み

  • アゴラ
  • 更新日:2021/07/22
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kudou/iStock

深刻化する高齢化と人口減少によって、介護や農業の現場を中心に労働力不足が喫緊の課題となっています。また、都市部への人口流出と少子化によって歯止めがかからない人口減少に悩む地方の自治体も数多くあります。そのような中、北海道上川郡東川町では、国内初の「公立」の日本語学校の開校によって将来日本で働く労働力を養成しながら、町内への外国人の移住促進によって他に類を見ない人口増加を実現しています。本レポートでは、東川町の取り組みについて現地での学びを報告させて頂き、農村部における外国人との多文化共生に向けた糸口を考察します。

1.人口増加を続ける北海道東川町

東川町は、北海道第2位の中枢都市である旭川市に隣接し、のどかな田園風景が広がる自然豊かな町です。北海道内の多くの自治体で人口減少が続く中、東川町の人口は、2021年2月時点で8,445人となっており、28年前(1993年時点)の6,973人から約2割も増加しています。その要因の1つが、2015年に新設された東川町立東川日本語学校による外国人の移住増加であり、東川町では2021年2月時点で390人の外国人が住民として生活しています。

2.国内初の「公立」の日本語学校の狙い

東川町立東川日本語学校は、国内初の「公立」の日本語学校として2015年に開校しました。建物は、2014年に移転・新築された東川小学校の旧校舎を再利用しており、2019年には長期コース(6か月・1年)で99名、短期コースで380名の留学生が入学しています。

松岡市郎町長は、「元々は外国人の定住を図るものではなく、外国人が東川町に一時的に移住し、何かを得て、国内外で働く人材育成を目指している」と語り、日本語学校の卒業生は実際に母国に戻って日本語の先生をしたり、国内各地の介護現場等で活躍しています。日本の介護現場で働くためには、日本語によるコミュニケーション能力が不可欠です。介護福祉士の養成施設に入学する段階においても日本語能力試験のN2レベル相当が要求されることから、日本語学校の拡充は外国人材確保に向けた入り口として非常に重要であると言えます。

同校は公立であるため、授業料は年間80万円(そのうち半額は町が奨学金として助成)で民間の日本語学校と比較しても安価であり、公立という安心感もあるため、留学生からは非常に人気が高いようです。

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東川町を訪問(右から2番目が松岡市郎町長、3番目が筆者 2021.6.28東川町役場応接室にて撮影 ©筆者)

3.日本語だけではなく、日本人の心を学ぶ

町に暮らす外国人が増えることで、治安の悪化や、文化・習慣の違いによる生活マナーの問題が懸念されることが多くあります。実際に、住民約5,000人のうちの半分以上を外国人が占める埼玉県川口市の芝園団地では、「ごみの分別が出来ておらず、ごみ捨て場にごみが散乱する」、「夜遅くに広場で騒ぐのがうるさい。玄関のドアを開けっぱなしで騒いでいる」等の生活トラブルが目立っています。

その一方で、東川日本語学校では、「単に日本語を教えるだけでなく、日本の生活習慣を学ぶ機会や、茶道体験等を通じた日本人の心を学ぶ機会を設けており、日本人の住民とのトラブルや苦情はあまり聞かない」という点が特に印象的でした。同校の奥山富雄校長は、「留学生には小中学校の国際交流教科の時間や、地域の盆踊り・敬老会などにも積極的に参加してもらい、町民との交流も深めている」と語ります。小さな町だからこそ、お互いに顔の見える関係の中で多文化共生が上手くいっているようにも感じました。

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東川町立東川日本語学校の奥山富雄校長を訪問(2021.6.28東川町立東川日本語学校前にて撮影 ©筆者)

4.「和敬清寂」の精神で多文化共生社会の実現を

介護や農業現場での人手不足は深刻さを増しており、農村地域においても外国人との多文化共生を真剣に考えなければならない時代にあります。同校の校訓である「和敬清寂」は茶道の言葉ですが、お互いの心を和らげてつつしみ敬う「和敬清寂」の精神こそ、共生社会の実現に向けた最も重要な姿勢ではないでしょうか。

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東川日本語学校での授業の様子(2021.6.28東川町立東川日本語学校教室にて撮影 ©筆者)

波田 大専

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