「石油元売り」大手3社が最高益に。原油価格上昇でもなぜ儲かるのか

「石油元売り」大手3社が最高益に。原油価格上昇でもなぜ儲かるのか

  • bizSPA!フレッシュ
  • 更新日:2022/06/23

輸入した原油をガソリンなどの石油製品に精製し、主にガソリンスタンドで販売する「石油元売」業界ですが、2022年3月期の業績は純利益最高額を更新するなど大手3社とも好調なようです。

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画像はイメージです(以下同じ)

仕入れ値が上昇すると利益が目減りしそうな印象がありますが、石油業界はなぜ儲かっているのでしょうか。石油元売の仕組みから、同業界にとって逆境ともいえる脱炭素への取り組みまで探っていきます。

大手3社はどんな事業を展開しているのか

石油元売業界の売上高トップ3はENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングスです。いずれも石油産出国から原油を輸入し、ガソリンなどの燃料、エチレンなどの基礎化学製品として精製し、販売するビジネスモデルをとっています。3社ともガソリンスタンドを展開しているため、社名は消費者の間で広く知られているところです。

例えばENEOSホールディングスの場合、事業セグメントは以下のようになっています。

【ENEOSホールディングスの事業セグメント】
1)エネルギー事業(81.8%):ガソリン、灯油などの燃料およびエチレン等の基礎化学品の精製・販売
2)石油・天然ガス開発事業(2.2%):油田、天然ガス田開発
3)金属事業(11.8%):金属鉱山開発、金属販売
4)その他(4.1%):アスファルト合材の製造・販売

※()内は2022/3期売上高10兆9218億円に占める割合

出光興産、コスモエネルギーHDも同様に、燃料のほか基礎化学品事業や油田開発、電力事業も手掛けていますが、売上高の7割以上を燃料関連事業が占め、石油元売業界の業績は特に燃料需要によって左右されることになります。

コロナ禍でも好調の各社

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ENEOSホールディングス ©tamayura39

そしてコロナ禍の近年は3社とも業績が好調なようで、2019/3期から2022/3期までの業績は以下のようになっています。

【ENEOSホールディングス(2019/3期~2022/3期)】
売上高:11兆1296億円→10兆0118億円→7兆6580億円→10兆9218億円
営業利益:5371億円→▲1131億円→2542億円→7859億円
最終利益:3223億円→▲1879億円→1140億円→5371億円

まずは、ENEOSホールディングスにおける売上高の推移を見ていきましょう。2020/3期は期末から国内でコロナの感染が広がり、前年度より燃料需要が低下しました。また、需要低下に伴う燃料価格の下落も影響し、売上高の減収につながっています。

翌2021/3期は1年中コロナの影響を受けた形です。外出控えによってガソリン需要が減少、航空機用ジェット燃料や工場で使われる産業用燃料の需要も減少したことで大幅な減収となってしまいました。一方、2022/3期は依然コロナの感染が続いていたものの、経済活動は平常に戻りつつあり、燃料需要が回復しました。

また、急な需要回復によって世界中で燃料価格が著しく上昇し、売価の高騰がそのまま増収に貢献したようです。ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料費高騰も影響しているでしょう。

出光とコスモも2022/3期で回復

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©yu_photo

【出光興産(2019/3期~2022/3期)】
売上高:4兆4251億円→6兆459億円→4兆5567億円→6兆6868億円
営業利益:1793億円→▲39億円→1401億円→4345億円
最終利益:815億円→▲229億円→349億円→2795億円

出光興産の場合は2020/3期で大幅な増収を迎えていますが、これは同じく石油元売だった昭和シェル石油を子会社化したためです。翌2021/3期に合併以前の水準まで落ち込みましたが、2022/3期に回復しました。吸収合併の件を除けば元売大手はいずれも同じく景気に左右されていることがわかります。

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©yu_photo

【コスモエネルギーHD(2019/3期~2022/3期)】
売上高:2兆7704億円→2兆7380億円→2兆2333億円→2兆4405億円
営業利益:947億円→139億円→1013億円→2353億円
最終利益:531億円→▲282億円→859億円→1389億円

コスモエネルギーHDも2020/3期でやや落ち込んで2021/3期で減収幅が拡大し、2022/3期で回復するという同じ流れを汲んでいます。

原油価格は上昇しているのに過去最高益の不思議

次に利益面を見ていきましょう。3社とも2020/3期に最終赤字となり、コロナ禍で大幅減収となったはずの2021/3期に黒字に転じています。そして原油価格がさらに高騰した2022/3期に3社とも過去最高益を記録しました。なお、2019/3期末から2022/3期末時点での月平均原油価格(ドバイ原油)の推移は以下の通りです。

【ドバイ原油価格(2019/3期末~2022/3期)】
ドバイ原油価格(ドル/バレル):66.80ドル→33.75ドル→63.95ドル→113.11ドル

売上高が減少したり、仕入れ品である原油価格が上昇すると石油元売の利益は目減りしそうな印象がありますが、実際には2021/3期のように売上高に関係なく原油価格上昇局面で増益となっていることが分かります。これは通常の製造業や問屋と違い、石油元売業界は仕入れから供給までの間にタイムラグが発生するためです。

日本では原油をタンカーで輸入するため、産油国で購入した原油が日本に入るまで約1か月程度かかります。つまり製油所では過去に購入した原油を原価として計上することになります。燃料需要の回復局面では原油価格とガソリン等の燃料価格が連動する形で上昇するため、高い売価を確保しつつ低い原価を計上することで利益を拡大することができるのです。

もちろん景気後退局面では、原油価格とガソリン価格が共に下落するため2020/3期のように大幅な減益となってしまいます。

会社の命運を左右する脱炭素への取り組みは?

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さて、昨今よく聞かれる脱炭素ですが、再生エネルギー発電の導入による脱火力発電や自動車のEV化が進めば石油元売業界の業績は悪化することが容易に予想されます。

そして直近ではガソリン車の燃費向上や製造業における効率化・省エネ化が影響し、2025年まで重量当たり年率1~2%台で国内の燃料需要が減少すると予想されています。脱炭素が進むなか、大手3社も将来の収益化を狙って脱炭素の取り組みに力を入れているようです。

ENEOSホールディングスは風力・太陽光といった再生可能エネルギー発電を手掛けるジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)を約2000億円で買収するなど、再生可能エネルギー分野に対し、3年間で4200億円を投じる計画を立てています。JREは2012年設立の企業で、すでに国内各地に太陽光発電所を多数設立しています。

出光興産は事業セグメントとして「電力・再生可能エネルギーセグメント」を設置しています。2022/3期末の売上高は1400億円程度で、同セグメントの大部分は火力ですが、米国やフィリピンで大型の太陽光発電所を完工するなど海外で力を入れているようです。

コスモエネルギーHDも国内で風力・太陽光発電所を運営し「再生可能エネルギー事業」セグメントを設置していますが、2022/3期の売上高は131億円に過ぎません。当然ながら3社とも主要事業である燃料精製事業と比較できるほどの規模には至っていないようです。

有望な技術はライバルが多い

石油元売がEVを製造したり、蓄電池を生産したりするのはほぼ不可能であり、脱炭素分野で投資するにはやはり再生可能エネルギー発電があげられます。同分野では太陽光・風力発電が主力ですが、国土が限られる日本では環境や景観を損ねるなど負の側面が謳われています。

そこで近年注目されているのが広い海を活用した洋上風力発電です。秋田県沖の洋上風力発電について政府による公募・入札が進んでおり、2021年の第1弾ではコストで優る三菱商事が選定されました。第2弾ではENEOSが狙うほか、青森県沖の入札でコスモエネルギーHDが応札するなど石油元売業界も必死なようです。

しかしながら各公募への参加企業を見ると東京電力や大阪ガス、丸紅など商社やエネルギー業界から多数のライバルが参入しており、さながら椅子取りゲームのような様相です。国内の燃料需要が減少し続ける一方、脱炭素といった新分野への参入も競合に阻まれるなど、石油元売業界は今後、新しい稼ぎ頭を見つけられず規模縮小が続くことが予想されます。

<TEXT/経済ライター 山口伸 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

【山口伸】

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナーTwitter:@shin_yamaguchi_

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