現役続行には批判も多い斎藤佑樹、それでも野球を辞めない“精神的な図太さ”

現役続行には批判も多い斎藤佑樹、それでも野球を辞めない“精神的な図太さ”

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  • 更新日:2021/01/14
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今季でプロ11年目となる日本ハム・斎藤佑樹 (c)朝日新聞社

日本ハム・斎藤佑樹はなぜ現役にこだわるのか?

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アマチュア時代の栄光はすでに色褪せたと言ってもいい。『ハンカチ王子』の呼称すら今や完全に過去のものとなった。今オフには、シーズン中に右ひじ靱帯を断裂していたことを明かすなど、満身創痍の状態だ。しかし2021年も契約を結び、復活を目指すと言う。一部のファンを除き、周囲からは批判や雑音しか聞こえてこない。

「日本ハムという球団が本当に信じてくれて、待ち望んでくれている、結果を。そういう意味では、来年で11年目ですけど、必死に頑張るしかないのかなと思います。客観的に見ても、立場として……普通ならあり得ない。(中略)最後まで自分のやらなくちゃいけないこと、目の前にある野球に対して、真摯に取り組まなきゃいけないと思いますね」(12月30日付・日刊スポーツ)

昨年末、独占取材記事が掲載された。内容を見る限り、置かれた状況を自身では客観的に把握している。在籍させてくれる球団への義理を果たすため、できることに注力する覚悟だと言う。撮り下ろし写真は、靭帯断裂からの復帰を目指す投手とは思えないほど、清々しいものだった。

「自分自身の状況と置かれている立場を、ちゃんと把握しているつもり。ただ、それでもやっぱり『野球はやりたい』という気持ちが強かった」(斎藤)

12月9日、日本ハムでのプロ11年目が決定した。今年で33歳になる右腕はファームでの生活が長く、ネット上などでは2軍の本拠地がある場所から、“鎌ヶ谷の主”などと呼ばれている。今季はプロ10年目で初めて1軍登板なしに終わり、3年連続で未勝利。2軍戦でも19試合に登板して1勝3敗、防御率9.31の結果に終わった(19回1/3を投げ、打者103人、被安打29、被本塁打4、19与四死球、11奪三振、自責点20)。

「数字が表しているが、投球内容が悪過ぎる。もともと球を動かして打者の芯を外す投球スタイル。だが真っ直ぐだけでなく、全ての球速、球威がない。打者は手元まで引き付けて打ち返せるので、打撃投手と同じような感覚で打てる。2軍でここまで酷ければ、1軍なんて口に出すこともはばかられる。特に夏場以降は酷い状態だった」(在京球団スコアラー)

ここ数年、オフには必ず戦力外の話が出ていた。球界関係者の間でも同様であり、右ひじの状態が悪いことも周知の事実であった。しかも今回、右ひじ靱帯断裂の重傷だったことが公表された。日本ハムがもう1年の契約延長に踏み切ったことには驚きの声も上がる。

「球速はそこまであるタイプではなかったが、ここ2~3年でガクッと落ちた。年齢的なものもあるだろうが、極端だった。靭帯断裂となると、手術の有無を抜きにしても回復に時間がかかる。それでも契約を結んだということは、復帰へ向けて可能性はあるのだろう」(在京球団編成担当)

今季は右ひじ痛に悩まされたが、故障との戦いはプロ入り当時から続いている。今回の右ひじ靱帯断裂も、プロ2年目の右肩関節唇損傷が影響しているのでは、という声もある。これはソフトバンクの大エースだった斉藤和巳も引退の引き金になったもの。腕と胴体のつなぎ目の関節部分(関節唇)が剥がれ、肩の安定性が失われる。そうなることで投球時に肩の違和感などを感じるようになる。

「右肩をかばって来た影響があるかもしれない。投球は人間の通常動作に反する動きを伴い負担が大きい。関節唇が剥がれると腕のスムーズな動きができない。身体の他部分により無理を強いることにもなる。長年の蓄積が右ひじに大きなストレスを与えていたことも考えられる。本人も相当な違和感や痛みを感じていたのではないか」(元在京球団トレーナー)

「コロナというのはもちろんありますけど、僕自身はひじの状態も最終的によくなく、最後は投げることすらできなかった。毎年のことですけど、悔しい気持ちですね。結果を出すことを一番に考えているので、まずはひじを治すことを最優先に考えていきたい。痛みは、あった時とない時と。今回のことで、またいろいろと自分なりにも勉強したんですけど、いわゆる靱帯が切れていても投げられる選手はいるみたいで、その一例だと思うんですけども」(斎藤)

契約更新時にひじの状態について聞かれ、表情を曇らせながら説明した。しかしシーズン後に受けたPRP(自己多血小板血しょう注入)療法の経過が良好で、現在は痛みなどはない状態。手応えを感じつつあるのか、冒頭インタビューのように、本人も明るさを取り戻しつつある。

「人気選手の場合、結果を出さなくても年俸1500万円が採算分岐点と言われる。1軍未勝利だが(2019年に)11試合に登板した昨年が1600万円だったのも妥当な線。コロナ禍でどの球団も経営難。今年の1250万円は格安ともされるが高く感じてしまうほど。復帰の可能性があるとはいえ、日本ハムは思い切った決断。温情ではなく、可能性を見ているからではないか」(在京球団編成担当)

「現在の2軍でリハビリしている斎藤を取り上げても数字は取れない。特集を組んだりする番組などないだろう。『引退』となれば大々的に取り上げられる。それでも1年間契約をしたということは、球団は復活を期待しているからではないか。仮に復活となれば、ベタですが『フェニックス(=不死鳥)斎藤』とかで、大盛り上がりでしょうね」(在京テレビ局関係者)

松坂大輔(現西武)が中日と契約した18年の例を見ても分かるが、1500万円前後ならばチケット、グッズなどの収入でペイできる。斎藤の来季年俸はそれを下回るが、世間的情勢を見れば高額であることは間違いない。また選手が露出すれば球団の宣伝になる、という考えもある。しかし以前はキャッチーなコメントも出していたが、それらも出尽くした感がある。商品価値がなくなれば、周囲の人々も波が引くようにいなくなる。これまでは『ハンカチ王子』ブランドの余韻はあったが、それすらなくなっている。球団もそれらを冷静に判断した上での契約だったはずだ。

「期待しているのは投手としての経験と精神力。アマとはいえ日本一を決める大舞台に、斎藤ほど数多く立った人間はいない。そして周囲から叩かれようと、めげずに現役を続行する精神面の図太さ。普通、ここまで叩かれれば心が折れる。そういった部分を評価しているのではないか。一部で話題になった横手投げ転向など、まだまだ選択肢はある」(日本ハム担当記者)

高校から現在までの野球キャリアは天国から地獄のようだった。早稲田実業時代はライバルと言われた田中将大(昨季までヤンキース、当時は駒大苫小牧高)との対決が話題になった。夏の甲子園制覇の立役者となり、進学した早稲田大でも活躍。そして10年、4球団競合の末ドラフト1位で日本ハムに入団した。新人年には6勝を挙げ、翌12年には開幕投手にも抜擢された。完ぺきではないものの順調にプロのキャリアを歩んでいるかのように見えたが、そこまで甘くはなかった。加えて故障にも悩まされ、思うように投げられない日々が続いた。

「これは野球を辞める時に話すことだと思いますけど、日本ハムというより、日本ハムの中にいる人が好きな人が多い。漠然とファイターズじゃなくて、ファイターズの中にいる人たちが、人として尊敬できる人たちが多い。そこに対して、ちゃんと義理を果たしたいという思いは強いですね」(12月30日付・日刊スポーツ)

斎藤ほどの知名度があれば、他の業界でも十分に声はかかる。だが、ここまで来たら、野球選手としての最後の意地を見せるしかない。結果が出せず、故障を繰り返し、批判を浴びながらここまで来た。それでも現役にしがみつく心意気は買いたい。

「考え方が甘い」という言葉を耳にする。多くの人がそう感じている面もあったのだろう。

「人の性格は余程がないと変わらない」とも言われる。しかし今がその時かもしれない。「21年、斎藤が何かを見せてくれることに期待をしたい」、というのは甘い考えなのだろうか。

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