「菌付きトング」でO157感染、死者も... あなたは大丈夫?

「菌付きトング」でO157感染、死者も... あなたは大丈夫?

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/10/12
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バイキングや惣菜店で普段、何気なく使っている「トング」。だが9月に死者まで出した感染事件では、この身近な道具が菌を媒介したと見られている。思わぬ経路で感染する細菌から身を守るには?

誰が触ったかわからない

「はっきり言って食品を売るような環境ではありませんでした。調理の段階で食材を二次加工、三次加工するのは当たり前。

例えば、中華料理で売れ残ったものを水洗いして、次の日に中華スープの具材にして販売していました。余った煮物も洗ってフードプロセッサーにかけ、細かくして白米に混ぜる。そうすると、五目ご飯にしてパック売りできるのです。

賞味期限という意味では問題ありませんでしたが、お客さんをだましているようで、気持ちよく仕事ができる店ではありませんでしたね」

こう語るのはフレッシュコーポレーションがチェーン展開する「でりしゃす」系列店で働いていた元従業員の男性だ。

このような杜撰な管理体制ゆえか、8月に埼玉県と群馬県にある「でりしゃす」の店舗で販売された惣菜を食べた22人が相次いで病原性大腸菌O157に感染。9月上旬には8月11日に惣菜を食べた3歳の女の子が死亡した。

問題発覚当初は、被害者たちが共通して購入していたポテトサラダが原因だと見られていた。

しかし、死亡した女の子がこのポテトサラダを食べていなかったこと、市の立ち入り調査の結果、サラダの製造工場から菌が検出されなかったことから新たに感染源として疑われたのが、客が食品を取り分けるトングだ。

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市の担当者によるとトングの使い回しなどにより「調理後に店内で販売する段階で、別の惣菜や客から菌が付着し、二次感染が起きた可能性がある」という。

感染者の一人は「買おうとしたサラダの皿にトングがなかったので、別のサラダ用のトングを使った」と証言している。

実際の店舗での管理体制はどうなっていたのか。前出の元従業員の男性が語る。

「トングに関しては汁物に完全に浸ってしまっていたり、手元が汚れていたりしたら交換していましたが、数時間おきに定期的に入れ替えるということは行われていませんでした。

正直、スタッフの数も少なかったので、ゆっくり掃除をする時間がとれず、食品を管理する冷蔵庫の中や、調理場も清潔ではなかった」

レジ担当もおらず、調理場の人間がそのままレジを打っていた。調理場から客の状況が見えるので、客が売り場に来たらレジに行って、客が帰ったら調理に戻るという具合だった。

前橋市には調理担当者が手袋をつけたままレジ打ちをしていたという苦情も寄せられている。

「基本的に料理の交換はなく、朝11時くらいに出したものを夜8時まで蓋のない状態で出していました。料理は1時間ほど放置すると表面が乾いて、見た目も悪くなるので定期的にトングを使って混ぜ返してごまかしていました」(元従業員)

気軽に立ち寄れるという雰囲気が逆にあだになったともいえる。

「お客様のなかには、揚げ物を直接手で取ったり、黒い埃まみれの作業着のまま入ってきたりする人もいました」(同前)

不特定多数の人が、自由に食べ物を扱えるという状況が危険だった。トイレで手を洗わない客がトングに触る可能性もあったわけだ。

もう常識は通用しない

O157は強力な細菌として知られている。記憶に残るところでは、'96年7月に大阪府堺市の小学校で起きた学校給食からの集団感染がある。当時、学校給食による感染が確実であると判断された患者は9523人。結果として3人の小学生が死亡している。

大腸菌の一種であるO157は、主に牛などの家畜の大腸に生息しており、生肉が危険だと言われてきた。言いかえれば、熱に弱いため、食材によく火を通しさえすれば、O157感染のリスクは大幅に下がると考えられていたのである。

もし今回の事件の原因がトングにあるとすればこれまでの常識は通じず、生モノを避けても感染からは逃げられないことになる。

スーパーの惣菜コーナーやファミリーレストランのサラダバーなど日常生活で使うトング。

これまで不特定多数の客が食品を取り分ける形式が、食中毒につながるとして問題視されたケースはほとんどなく、売り場でのトングの扱いについては業界内でも注目されてこなかった。

「衛生管理の意識が高い店では、トングを定期的に交換するとか、使用前、使用後で使い分けるなどして注意していると思いますが、判断基準はあくまで自主的なもの。厚労省はトングなど売り場で扱う器具に関しての法令や、ガイドライン、規約などは作っていません。

というのも、現在の法令やガイドラインでは感染源が食品事業所に入ってこないようにすることが重要視されており、製造工程や殺菌工程で厳しくルールを設けることばかりに注力しているからです」(NPO法人「食の安全と安心を科学する会」の山崎毅理事長)

役所の対応が後手に回っている以上、自分の身は自分で守るしかない。できるだけリスクを小さくするために私たち消費者にできることはないのだろうか。

まず大切なのは、危険な店を避けることだ。「店を見極める際に重要になるのは『5S』だ」と語るのは食品ジャーナリストの河岸宏和氏である。

「洗浄、殺菌のことを頭文字をとって2Sと言います。それに加えて、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの5Sがあります。作業着がパリッとしていなかったり、厨房の中が整理整頓されていないと、洗浄や殺菌などできっこない。

まず、作業着がきれいか、整理整頓がなっているか、調理担当が時計や指輪をつけたままではないか、など5Sを見る。そうすれば外からうかがい知ることのできない2Sの徹底具合を見極められるでしょう」

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実際、5Sという点から見ても申し分ない帝国ホテルでは厳しい自主基準が設けられている。

「『インペリアルバイキング サール』には複数のお客様がご自身でサーブするエリアもありますので、トングは15分でお取り替えすることを目安に運用しています。

また料理ごとに使うトングの形も違うので、使い回されることもない。見た目もそうですし、お料理の取りやすさ、サービスの向上という観点でも行ってきたことです」(帝国ホテル広報)

トングの材質にも注意

しかし、一般の店にこれだけの対応を求めるのは現実的ではない。では惣菜店やファミリーレストランに関してはどのような点に注意して店を選べばよいのだろうか。

今回の「でりしゃす」のように不特定多数の人間が同一のトングを使う形式の店は当然、リスクが高まる。

それに対し百貨店の惣菜売り場などはトングを扱うのがスタッフだけに限られ、対面販売になっている点で安心だと言える。ただし、注意が必要な場合もある。

「個人的に危険だと思っているのが、コロッケ、唐揚げなどのコンビニのホットスナックです。店員が提供してくれるのですが、多忙ゆえに衛生管理がなおざりになりがちです。

店員がおカネを触った手で、そのままホットスナックに触るケースを実際に見たことがあります」(南清貴氏・フードプロデューサー)

客が各自でトングを使う形式の店の場合、注意すべき点は何か?トングで扱う食材によっても、菌の繁殖のしやすさ、感染のリスクは変わってくる。ポイントは「水分」だ。

「トングを介してどれほどの菌が付着するかは食材、料理によって差があります。パンなどは乾いていますし、焼いた後のものに菌が繁殖することはないでしょう。

それに対して惣菜は水分が多く、菌が繁殖しやすい。トングに触れる面積も大きいため、菌が付着しやすいのです」(久住英二氏・医療法人社団鉄医会理事長)

トングが汁に長時間浸っているような惣菜は避けたほうが無難だろう。

トングの材質にも注意する必要がある。

「素材がステンレス単体でないトングは衛生的とは言えません。

例えば、ステンレスの周りの持ち手のところにプラスチックがついていると、その隙間が殺菌できていないことがあります。プラスチックはヒビができやすく、その隙間も殺菌しにくい。

竹、木など自然素材のトングも、ステンレス製に比べると非衛生的です」(前出・河岸氏)

今回の事件を受けて、レストランや惣菜店が使い回しを避けようと、トングを大量購入。品薄が伝えられる。

裏を返せば、これまでトングは衛生管理上の盲点だったのだ。安心して食事を楽しむためにも、万全の注意を払いたい。

「週刊現代」2017年10月7日号より

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