【意見】定着も想定し被害抑制を 阿部芳久氏

【意見】定着も想定し被害抑制を 阿部芳久氏

  • 西日本新聞
  • 更新日:2017/08/11

◆ヒアリ対策

外来種の定着を防ぐ鍵は、侵入した初期に発見して徹底的な駆除を行うことである。有毒で南米原産のヒアリが5月以降、兵庫県や愛知県、大阪府、東京都、神奈川県、福岡県、大分県で相次いで発見されたことは、本紙などの報道によりご存じの読者も多いであろう。今月9日には岡山県でも確認された。今後は博多港のような国際貿易港から貨物が搬入されるまでの地点にヒアリが侵入していないか環境省と国土交通省、地方自治体が協力して継続的に調査することが望まれる。飛行機のコンテナや貨物にも注意を向ける必要がある。

ヒアリは漢字で「火蟻」と書くように、刺されるとやけどのような強い痛みを感じるが、本種の毒によるアレルギー反応(刺されて数分から数十分の間に起きる呼吸困難や激しい動悸(どうき)、めまいなどの症状)を起こす人もいるので注意しなければならない。環境省が2009年に発行した「ストップ・ザ・ヒアリ」という冊子には、ヒアリに刺された場合、まず安静にして、もしも容体が急変したらすぐに近くの病院を受診することがすすめられている。ヒアリの侵入が確認されたことを受け、厚生労働省は6月に都道府県を通して各地の医療機関に、ヒアリに刺された場合の医療的留意事項を伝達した。7月に福岡市内で中国から輸送されたコンテナの荷下ろし作業をしていた人がヒアリに刺されたが、診察の結果、軽症であったという。われわれは冷静な対応が求められている。

ヒアリが定着した場合には、健康被害以外に農林畜産業への被害や、土着の生物多様性の減少といった生態系への悪影響などが懸念される。定着してからの歴史が長い米国やオーストラリアでは、ヒアリによるさまざまな被害が報告され、経済的なコストも計算されている。徹底的な駆除によりヒアリの日本への定着が防止されることを願っているが、これらの国々の事例を参考に、わが国へのヒアリの定着という事態も想定して、予測される被害を抑えるための対策を検討しておくことも必要ではあるまいか。

現在はヒアリに耳目が集まっているが、日本への侵入・定着を恐れる昆虫の外来種はほかにも数多くいる。健康被害を与えるものでは、ヒアリ以外の有毒なアリ類や、重篤な病気を引き起こすウイルスを媒介する蚊の仲間などが例としてあげられる。今後、これらが脅威になる可能性も考えられるので、引き続き水際対策が望まれる。

◇      ◇

阿部 芳久(あべ・よしひさ) 九州大大学院比較社会文化研究院教授 1962年生まれ、東京都出身。九州大大学院農学研究科修了(農学博士)。2007年から現職。専門は昆虫学(分類学・生態学)。

=2017/08/11付 西日本新聞朝刊=

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