実はアジア3位のビール消費量。意外なビール大国「ベトナム」の独特なビール文化

実はアジア3位のビール消費量。意外なビール大国「ベトナム」の独特なビール文化

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2018/06/14
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ハノイのビア・ホイのハズレの店。全然冷えていないビールだった

キリンビールのサイトにある「キリンビール大学」によれば、2016年はビールの製造量が地域別ではアジアがもっとも多いものの、個人消費量は東欧などの国が目立ち、上位25位以内にアジアの国は見当たらない。必ずしも製造量と消費量は一致しないようである。国別消費量では中国が世界で最も多く、アジア2位の日本は全体の7位に留まる。

そんな中、アジア第3位がベトナムとなっている。ベトナムの消費量は2017年には前年比6%増の40億リットル(参照:「NNA Asia」)。なんと、東南アジアでは1位の消費量なのだ。

とにかくビールが安いベトナム

ベトナムのビール消費量が多いのは価格的なものもあるのではないかと思う。一般的なコンビニエンスストアで350mlの缶ビールは9800ドンで販売されている。日本円にしてわずか47円程度だ。物価が低水準なので安いのかと思われるが、同じ店舗にて同じサイズの炭酸飲料を見ると価格は9000ドン程度。つまり約43円で、ビールとソフトドリンクの値差がほとんどないことになる。屋台や食堂ではビールの方が安い価格設定になっていることもあるほどだ。

一方で、ウィスキーなどのほかのアルコール類は日本の物価水準から考えれば安いにしても、バーではビールが2万~5万ドン(約96~240円)である中、10万ドン(約480円)くらいになる。ベトナム政府はビールにかける特別消費税を上げて税収アップを目論んでいるため、政府のバックアップがあると推測もされるが、これだけ安ければビールを飲むようになるのは必然である。

もちろん、バドワイザーや欧州のビールも多数ベトナム都市部で見られるが、地元商店でも1.5万ドンはするのでベトナム・ビールの倍くらいとやや高くなる。とはいえ、ベトナムのビールも充分においしいものがあり、ビール好きには天国であることは間違いない。

ベトナムで飲むべきビールはこれ!

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ハノイで見かけたビア・サイゴンのスペシャル

今、ベトナムで人気の銘柄は「サイゴン・ビール」だ。ベトナム語ではビア・サイゴンと呼ばれる。これは名称通り、南部の銘柄で「サイゴンビール・アルコール飲料総公社(SABECO)」が製造する。ベトナムは地方ごとにビールの銘柄がある。かつては陸路移動も不便だった国柄で、各地で地ビールとして発展したものと見られる。

ビア・サイゴンはこの名称を名乗る銘柄だけで4タイプがある。一般的にビア・サイゴンというともっとも廉価な緑ラベルのラガータイプになる。それから赤ラベルの「エクスポート」。緑はあまり飲まれている様子が見られないが、価格とアルコール度数などのコストパフォーマンスから、南部の若者には赤ラベルがもっとも人気がある。さらに、モルト100%のプレミアビール「スペシャル」と、この上に「ゴールド」も登場しているが、ホーチミンでもあまり見かけないほどプレミアなビールのようである。

外国人にはスペシャルがよく飲まれる。そして、このスペシャルをSABECOはイチオシにしており、今やハノイの商店で見られるまでになった。かつてのベトナムでは「ビール!」と注文するとその土地の銘柄が出てきた。少なくとも2011年ごろはそれが常識だった。それが今やビア・サイゴン・スペシャルがベトナム全土を席巻していて、そこかしこで見られるようになっている。

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ハノイの銘柄はビア・ハノイ。瓶や缶、ロゴが色の違うタイプもある

ハノイでは「ビア・ハノイ」が主要銘柄になる。製造者は「ハノイ・ビア・アルコール飲料総公社(HABECO)」で、先のように以前はハノイで銘柄指定なしで注文をするとこれが出てきた。確かにあまり冴えない味わいという気はするが、筆者としてはハノイで飲む分にはあまり悪い気はしない。しかし、現状は驚くほどに人気がない。ビア・サイゴンがハノイに進出している一方で、南部の大都市ホーチミンでビア・ハノイを見ることはまずない。

ビア・ハノイは1890年、ビア・サイゴンは1875年ごろ(現ブランドの前身から数えて)に醸造が始まっている。大手醸造所はもうひとつあり、「ベトナム・ブリュワリー」社で、「ハイネケン」やシンガポールの「タイガービール」、中部ダナンで人気のビール「ラルー」を製造する。ラルーはフランス人醸造技師によって1909年に醸造が始まっている歴史のあるビールだ。

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中部の港湾都市ダナンで人気の銘柄はこのラルー

ほかにも小規模の醸造所が20箇所前後もあり、ベトナム最後の王朝である阮朝(ぐえんちょう)があったフエのビール醸造所は特に有名だ。

ベトナムを大きく分類すると、北部、中部、南西部、メコンデルタという地方がある。各地で人気ビールや地ビールが違うので、ベトナムはビールを求める旅という楽しみ方もある。

ベトナムの独特な「生ビール」文化

ベトナムのビール文化において生ビールを忘れてはいけない。

北部では「ビア・ホイ」、南部では「ビア・トゥオイ」と呼ばれ、中部では一部で「フレッシュビール」として販売されている。日本でも見かけるような、バーや飲食店で飲めるものもそうだが、ベトナムの生ビールがおもしろいのは、専門の屋台で飲むことにある。

例えばハノイの旧市街と呼ばれるホアンキエム地区では道端や食堂に「BIA HOI」と書かれた看板が散見される。ベトナム語は英語のアルファベットに声調記号がついたもので、正しい発音はできなくても、なんとなく読める。ビア・ホイも同様で、アルファベット読みならすぐにわかる。ハノイでは5000~7000ドン(約24~34円)が相場で、外国人向けのビア・ホイだと1万ドン(約48円)を取る場合もある。

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ビア・ホイはダイレクトに樽からグラスに注ぐ

注ぎ方が実に原始的で、日本の居酒屋で見かけるような生ビールの銀色の樽は同じでも、サーバーなどの装置がなく、樽からダイレクトにホースでグラスに注ぐ。元々ベトナム・ビールの味わいが薄めだが、ビア・ホイはさらに薄く、炭酸も少ない。要するにビールとしてはあまりいい品質ではないにしても、屋台で飲む感覚や安さがよくて外国人に人気がある。

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ハノイ旧市街のビア・ホイ屋台。半年後にはこの老婆はビア・ホイをやめて瓶に専念し始めた

しかし、ハノイではビア・ホイ屋台が減りつつある。そもそも味がよくないと言われるだけでなく、悪い噂も多いからだ。例えば、ビア・ホイ業者は飲食店を周り余った瓶ビールや生ビールを集めて樽に詰めているだとか、賞味期限切れのビールを詰め替えて売っているなどの話がある。ベトナムの若者たちにすればまずいし、怪しいし、なによりもダサいということで、ハノイではビア・ホイを好む人が減りつつある。

一方で外国人が多く洒落たパブなどが多い旧市街にベトナムの若者が流入している。彼らにするとおしゃれということなのだろうが、ベトナム人客が増えたことで旧市街の商店や屋台がビア・ホイをやめて、ハイネケンなどの若者ウケする商品に切り替えを進めている。

「ビア・ホイ」も復活の兆し

また面白いことに、文化的な背景やベトナム戦争のころは別の国だったこともあってか南部では生ビール屋台はほとんど見かけない。安宿街のブイビエンに唯一ビア・トゥオイの看板を掲げる店があるが、わざとなのか、供給量が少ないのか、1週間に1日程度しか生ビールがないほどだ。2018年3月にはもう1軒、生ビールを売りにした店が同じ通りにできたが、どちらかというと地ビールの生で、3万ドン(約144円)と高額であり、元来のビア・トゥオイとはかけ離れている。

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ホイアンの飲食店には確かに看板に3000ドンとあった

中部でも生ビールはあまり見かけないが、古都ホイアン(ダナンから車で40分ほど南下した場所にある街)ではフレッシュビールという名称で生ビールを扱っていた。しかも価格が3000ドン(約14円)とベトナム最安値水準。後日、南部で知り合った中部出身のベトナム人に話しても「それはキミの見間違いではないか?」と、価格設定を信じてもらえなかった。それほど安い。筆者が入った店がその料金で、ほかの飲食店では同じ3000ドンで、2杯か3杯注文すると1杯が無料といたサービスもあるようで、屋台系の生ビールはホイアンが最安値だと推測する。

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ホイアンで飲んだ14円の生ビール。安いのにちゃんと冷えてた

それだけ安いのでさぞ怪しいものが来るだろうと思えば、ちゃんとしたジョッキで、しかも冷たいビールが来た。ハノイのビア・ホイはプラスチックのカップに常温のものが来ることもあるので、ホイアンはレベルも高い。

これだけおもしろいベトナムの生ビールも若者には相手にされず衰退しつつある。しかし、ハノイの在住日本人からの情報では、今改めてビア・ホイが復活しつつあるという情報が入った。

「売価が安いということは原価も安いわけですよ。そこに目をつけた企業が、自社の大型飲食店などで採用し始めています。焼肉の食べ放題店などの飲み放題ビールにビア・ホイを使うんです。ただ、たくさんの客を収容する大型店ですので、中心部ではなく郊外で展開していますが」

その日本人曰く、近くビア・ホイが見直されて、また旧市街辺りにビア・ホイ屋台が増えるのでは、という。いずれにしても、ベトナムはビールがおもしろいのだ。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)>

たかだたねおみ●タイ在住のライター。6月17日に近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)が刊行予定

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