25年の節目を迎え、クラウド企業になったアドビ

25年の節目を迎え、クラウド企業になったアドビ

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  • 更新日:2017/12/06
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今回のことば

「今年は日本法人設立から25周年目の節目。隠していたわけではないが訴求してこなかった。12月からの新年度では、米本社の35周年とともに積極的に提案していく」(アドビシステムズの佐分利ユージン社長)

アドビシステムズ(以下アドビ)の日本法人が1992年3月に設立して以来、今年で25周年を迎えている。外資系IT企業としては日本で長い歴史を持つ企業の1社だ。

だが、これまでの期間、同社では「日本法人設立25周年」を積極的に訴求してこなかった。むしろ、なにも発信していなかったといった方がいい。

「隠していたわけでもなく、もちろん忘れていたわけでもない」と、アドビの佐分利ユージン社長は笑いながら「実は2017年12月には、アドビが1982年に創業してから35周年を迎える。2018年1月からは日本法人の25周年と、米本社の創業35周年とあわせて訴求しようと考えている。そこで、2つの節目にあわせた新たな提案をしていきたい」とする。

そして「まずはこれを社内のクリスマスパーティーのメインテーマにして、社内を熱くしてから、社外にも訴求しようと考えている」と語る。これからどんな提案が始まるのかに期待したいところだ。

いまは顧客体験の時代

振り返ってみると、この間、アドビは大きな転換を遂げてきた。

創業時はPostScriptやIllustratorといったDTP(デスクトップパブリッシング)の企業としてスタート。その後、PhotoshopやAcrobat、アルダスの買収によるPageMakerなどにより、この分野の製品を強化。リーダーとしての座を強固なものとし、クリエイティブおよびドキュメントの分野において、事業拡大していった。

その後、オムニチュアなどの買収など、数々の買収戦略を経てデジタルマーケティング分野へと参入。これが現在のAdobe Experience Cloudへと進化し、同社の新たな事業の柱になっている。

そして、いまではクラウド専業ベンダーとして展開。これもアドビの変化を象徴するものだ。

佐分利社長は「IT業界はERPなどの活用によって、企業全体の最適化を追求したバックオフィスの時代から、従業員の生産効率を高めることを主眼においてフロントオフィスの時代へと変わり、いまではカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の時代を迎えている」と前置きし、「顧客体験の新たな時代においては、バックオフィスとフロントオフィスの効率化の経験を生かしながら、最適な形で、いかに顧客の満足度を高めるかが重視される時代に入ってきている。そうした時代の変化にあわせて、アドビが提供するサービスも変化している。そして2017年は、顧客体験の時代に向けた製品や技術が揃い、大きな影響を与えられる企業になった」と語る。

さらに「顧客体験の時代では、コンテンツやデータが重視される。これはアドビが持つクリエイティブのDNAを生かすことができる時代に入ってきたともいえる」と続ける。

顧客情報を活用したデジタル体験の提供

アドビは2017年3月に米ラスベガスで開催したAdobe Summitにおいて、Adobe Experience Cloudを発表し、Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloudとともに、3つのクラウドサービスを提供する体制を整えた。

佐分利社長は「企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するのがアドビの新たな役割。その中核になるのが、Adobe Experience Cloud」と位置づける。

Adobe Experience Cloudは、Adobe Marketing CloudやAdobe Analytics Cloud、Adobe Advertising Cloudなど、8つのソリューションで構成される包括的なクラウドサービスだ。

日本においては丸井がAdobe Experience Cloudを活用。パーソナライズ化した情報の提供を開始したのに加えて、店舗で試着をしてもらい、実際の商品は翌日や翌々日に届けるというリアル店舗の強みを生かした提案によって、eコマース専業に対抗する取り組みを開始している。

さらに丸井ではアドビが新たに提供を開始した人材育成サービス「アドビデジタルマスターズワークショップ」により、デジタル人材を社内で育成。人材不足の解消に取り組もうとしている。

イオン銀行では顧客の属性情報を活用して、ウェブや店舗を横断した形で、顧客一人ひとりにパーソナライズしたデジタル体験を提供。各地域ごとの店舗キャンペーンの告知などができるようになったという。すでに「イオンカードセレクト」の申し込み数が約1.5倍に増加したり、各商品のコンバージョン率が2~3倍向上したりといった結果が出ているという。

昔のアドビにいなかった人材が急速に増えている

Adobe Experience Cloudはアドビのプロフェッショナルサービスの拡大にもつながっている。

「海外ではプロフェッショナルサービスのほとんどがデリバリー領域のサービス提供やテクニカルコンサルティングが中心だが、日本では3~4割をビジネスコンサルティングの領域で占めている」とする。

もともと、マーケティング業務をアウトソースする傾向が高い日本の企業では、社内にマーケティングに関するノウハウが蓄積されていないことが多く、それが日本固有のニーズを生んでいる。これも顧客体験の時代だからこその動きだといえよう。

「デジタルマーケティング領域におけるプロフェッショナルサービスは、アドビにとっても新たなビジネス領域。それを強化するために、顧客の現場でインプリメンテーションしていた経験者やシステムイングレータの技術者などを採用して、新たな体制を整えている」という。

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現在アドビ日本法人の社員数は約400人だが、そのうち約3分の1がコンサルティングサービスを担当。さらに、その9割以上がAdobe Experience Cloudによるデジタルマーケティング領域を担っているという。

「デジタルトランスフォーメーションを技術面だけでなく、アセスメントやビジネス戦略立案などのビジネス経営コンサルティングの観点からも支援できる体制を整えた。以前のアドビにはいなかった人材が、いま最も急速な勢いで増えており、これはますます加速することになる」とする。

マイクロソフトとの連携

これまで課題だったCRMについても、マイクロソフトのDynamics 365との連携を発表。「Dynamics 365との組み合わせは、A match made in heaven(理想的な組み合わせ)だといえる」と自信をみせる。

マイクロソフトのサティア・ナデラCEOと、アドビのシャンタヌ・ナラヤンCEOは、同じ高校の出身であることも「この連携が強固であることの要因のひとつ」と笑う。そういう佐分利社長も日本マイクロソフトの出身であり、同社とのつながりが強い。「日本マイクロソフトの平野拓也社長も、Dynamics 365を伸ばしたいという意識が強い。アドビもこの分野には投資をしていく。2社の連携によって、お客様にとって最もいい提案ができる」と語る。

Adobe Senseiの大きな進化

一方、2017年10月には、米ラスベガスで開催したAdobe MAXで、Adobe Creative Cloudの強化を発表。Photoshop CC、InDesign CC、Illustrator CC、Premiere Pro CCなどの主要アプリケーションの機能をアップデートするとともに、人工知能(AI)と機械学習プラットフォームであるAdobe Senseiも大きく進化させた。これも、2017年のアドビの進化として見逃せないできごとだ。

「日本でAdobe Creative Cloudのサービスを本格化したのが3年前。サブスクリプションモデルへと移行したことで、半年ごとに新たなリリースでサービスを強化したり、月額980円というプランによって、プロフェッショナルだけでなく、趣味でデザインを行なう人たちにも使っていただくといった動きが出ている」とする。

Adobe MAXで発表されたクリエイティブ関連製品は、「UX」や「レシポンシブウェブデサイン」といった観点から強化。表現に最適化したツールなどに注目が集まり、ここにAdobe Senseiによる進化が加わった。

「一般の人たちがクリエイティブエクスプレッションをやろうとしても、自分が描いている思いと、出力する作品との間にギャップが生まれることが多かった。だが、Adobe Senseiを活用することで、この距離がかなり埋まるようになった」とする。

調査によると、71%の企業において、2~3年前に比べて10倍ものコンテンツを制作しているという結果が出ており、それでいて、プロフェッショナルの数は増えていないという実態が明らかになっている。

デジタルコンテンツの増加にともなって、プロフェッショナルではない人たちがコンテンツを制作できる環境づくりは急務だ。

AIは芸術性を犠牲せずに効率を加速させる最高の機能

一部では多くのAIと同様にAdobe Senseiがクリエイターの仕事を取ってしまうのではないかとの議論もある。

だが佐分利社長は「むしろ、多くのクリエイターが望んでいたのが、この分野におけるAIの登場。Adobe MAXに参加していた日本のクリエイターの約9割がすぐに使いたいといっていた。クリエイターの仕事は、限られた時間内に、最高の品質に仕上げることが求められている。芸術性を犠牲にせず、業務効率や作業効率を加速するという点では、AIは最高の機能。そしてAdobe Senseiは、簡単なコンテンツ制作は現場の人たちに任せ、プロフェッショナルはより高い専門知識が求められている領域や、ARやVRのように難易度が高いところに挑戦していくことができるようになる。クリエイターの仕事をエンハンスできるものになる」とする。

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12月から新年度が始まったアドビは、「カスタマーサクセス」を重視するという。「カスタマーを理解し、いかにカスタマーの成功につなげるかにこだわる。アドビは、カスタマーサクセスを実現する最後の最後まで、お客様を支援できる企業になりたいと考えている」とする。

アドビにとって、日本は世界第2位の市場だ。日本で25周年を迎えたアドビシステムズの重要性はますます高まっている。

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アドビシステムズ

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