田原総一朗「『空気を破れない』日本企業で続発する不正が国を滅ぼす」

田原総一朗「『空気を破れない』日本企業で続発する不正が国を滅ぼす」

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  • 更新日:2017/12/06
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田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社

ジャーナリストの田原総一朗氏は日本企業に不正が続出する理由をこう読み解く。

*  *  *

このところ、世界市場で活躍している日本企業の信じられない不正事案が、次々に露呈している。なぜ、こうした不正が続発しているのか。

最初に大問題になったのは、東芝の7年間に及ぶ粉飾決算であった。こんなことは、東芝の役員であれば誰もがわかっていたはずなのに、誰もそれを指摘しなかった。

私はこの事件で、かつて作家の山本七平氏に聞いた「日本では空気を破ることがタブーになっている」という言葉を思い出した。もし東芝の役員の誰かが「粉飾決算はよくない」と言うと、空気を破ったことで左遷される危険性が強い。それを恐れ、誰もが黙っていたのであろう。しかも、チェック役の監査法人までが粉飾決算を問題なしとして、なれ合ってきたのだ。東芝の歴代社長たちを起訴すべき検察も、まるで気がつかないように、何もしなかった。日本のかなりの層が相当危ないことになっているな、と私は強く感じた。

そうしたら、9月に日産自動車で、無資格の従業員が検査をしていたことが露呈した。さらに、スバルでもやはり30年以上、無資格者が検査していたことが判明した。

しかも、日産が問題になっていた最中に、神戸製鋼所で製品の強度や寸法をチェックする検査証明書が書き換えられていたことが露呈した。神戸製鋼の製品は自動車や飛行機などにも使われていて、製品の品質が劣化していると事故が起きる危険性もある。さらに11月になって、三菱マテリアルの完全子会社である三菱電線工業や三菱伸銅などが製造する製品の材料の特性などが改ざんされていたことが判明した。

そしてさらに11月28日、榊原定征・経団連会長を出している東レの子会社・東レハイブリッドコードが生産する製品の品質データを不正に書き換えていたことが判明した。こうなると、まだまだ日本企業の不正事案が露呈するのではないだろうか。

日本企業の製品は極めて品質が高いことで世界から評価されていたのである。私自身、そのことを信じ、誇りとしていたのだが、一連の不正発覚により、こうした信用力が崩壊せざるを得なくなる。

それにしても、なぜ日本企業は信用力を崩壊させるような不正を続発させることになってしまったのか。

私は戦後、日本で企業を創立し、あるいは立て直した経営者たちを何人も取材している。松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎、稲盛和夫……。誰もが焼け跡から出発し、日本企業の製品を世界の人々が信頼してくれるよう全力で頑張った。品質の高い製品をつくることに全エネルギーを集中させた。「お客さまは神様です」という理念が企業マンたちの常識となった。従業員たちも、それが社是であるかのように頑張った。

ところが、1990年代の後半から、経済成長が止まりデフレの時代となった。デフレ時代になると、何よりも重要な課題がコストダウンだ。コストのために従業員を減らす。リストラである。正社員を減らし、非正社員を増やす。だが、従来の高品質製品の看板をはずすわけにはいかない。そのために、無資格者による検査や、検査証明書の改ざんという不正が続出してしまうのではないか。しかも、山本七平氏が指摘したように、日本では空気を破るのがタブーのようになっていて、だから会社ぐるみのなれ合いが続発する。だが、日本企業の信用力の崩壊は、日本崩壊につながるはずである。

※週刊朝日  2017年12月15日号

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