【免税事業者向け】インボイスは導入すべきなのか? 第1回 インボイス制度で何が変わる? 消費税の復習

【免税事業者向け】インボイスは導入すべきなのか? 第1回 インボイス制度で何が変わる? 消費税の復習

  • マイナビニュース
  • 更新日:2023/01/25
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事業者(法人・個人事業者)にとって2023年の最もインパクトの大きなイベントは消費税におけるインボイス制度の開始です。

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消費税は1989年4月1日に税率3%で初めて導入されました。その後、税率が5%、8%とアップされ、2019年10月1日には標準税率が10%にアップされるとともに軽減税率8%が導入され複数税率の時代に入りました。複数税率になると「売手が買手に対し販売した商品等の正確な適用税率や消費税額等を伝える」必要があリます。

2019年10月1日時点では税率ごとに販売価格を区分集計した区分記載請求書が導入にとどまりましたが、その4年後の2023年10月1日に「売手が買手に対し販売した商品等の正確な適用税率や消費税額等を伝える」インボイス(適格請求書)が導入されることになりました。このインボイス制度(適格請求書保存方式)は、全事業者に多大な影響があるという意味で、1989年の消費税導入以来最も大きな改正となります。

この連載では全5回にわたって、インボイス制度の開始に向けて制度の概要を確認しつつ、主に免税事業者の方に焦点を当てて、どのような対応をいつまでにしていくべきかなど、解説していきます。

また、2022年12月23日に閣議決定された2023年度税制改正大綱ではインボイス制度の円滑な導入のために、免税事業者が課税事業者になる場合納付税額を軽減する施策も盛り込まれています。この税制改正大綱の内容も交えながら解説していきます。
消費税の仕組みと課税事業者・免税事業者
消費税納税額計算の仕組み「仕入税額控除」

[図1]は国税庁のパンフレット「適格請求書保存方式の概要」から、消費税の納税額計算方法として仕入税額控除について説明したものです(一部加工)。

消費税の納付税額は、[図1]の上段の計算式の通り、課税売上で預かった消費税額から課税仕入等で支払った消費税額を差し引いて計算します。この「課税仕入等で支払った消費税額を差し引くこと」を仕入税額控除といいます。

そして、[図1]の下段では、消費税の負担と納付の流れが図示されています。この図の通り、消費税を最終的に負担しているのは消費者ですが、実際に消費税を計算して納税するのは製造業者や卸売業者、小売業者などの事業者です。

小売業者は消費者から預かった消費税をそのまま納税するのではなく、課税仕入で支払った税額を差し引いて納税額を計算・納税します。卸売業者も同様です。こうして各段階で納税される税額の合計が消費者が負担した税額と一致するのが消費税の基本的な仕組みです。

この仕組みの中でポイントとなる仕入税額控除が、インボイス制度では以下のように変わります。

インボイス発行事業者になれるのは課税事業者のみであり、インボイス発行事業者以外からの課税仕入は原則仕入税額控除できないということになると、免税事業者の方がそのままでいるとこれまでの取引を継続することが難しくなる可能性があります。
課税事業者と免税事業者の違い

消費税制度における免税事業者の立ち位置を考えるために、課税事業者と免税事業者の違いについてみていきましょう。

課税事業者とは消費税の納税義務を負う事業者のことです。消費税法では消費税の納税義務について、国内で取引を行うすべての事業者と規定しています。その上で、基準期間(前々事業期間)の課税売上高が1,000万円以下の事業者の場合は消費税の納税義務が免除される特例が規定されています。これに該当する事業者が免税事業者ということになります。

一方、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていると納税義務が課される課税事業者になります。この免税事業者の判定基準となる基準期間の課税売上高などがどのように変わってきたのか、消費税率の変遷と合わせてまとめると以下のような表になります。

※3 実際の適用は2013年1月1日以降開始事業期間より

消費税法では原則全事業者が納税義務を負うとされながら、消費税の導入をスムーズに進めるために小規模事業者に配慮した特例が免税事業者制度です。しかし、免税事業者が課税売上で預かった消費税を納税しなくても良いということは、消費税を最終的に負担する消費者からみれば、預かった消費税を納税せず利益にしている益税と捉えられることになります。

税率が上がるごとに益税分も増えていきますので、上表のように、税率が上がるごとに高まる消費者の益税批判に応えるように、免税事業者制度は適用できる事業者を減らす方向で変更されてきたのです。上表では「免税事業者の判定基準」欄に「2023年10月よりインボイスの導入決定」と記載しました。インボイス制度も免税事業者を実質減らす方向で機能するからです。
インボイス制度で変わる免税事業者の立ち位置

[図1]の卸売業者が免税事業者だとしたら、インボイス制度では小売業者にどのような影響が及ぶでしょうか?

卸売業者は小売業者への売上で7,000円の消費税を預かっていますが、消費税の納税を行わないため仕入れで支払った消費税5,000円との差額の2,000円は利益に加算されます。

一方、小売業者は卸売業者に仕入れで消費税7,000円を支払っていますが、免税事業者である卸売業者からはインボイスを受領できないため、この7,000円は控除できず消費者から預かった10,000円をそのまま納税することになります(インボイス制度開始から6年間は経過措置により仕入税額相当の一定割合を控除できます)。

インボイス制度は、このように取引の過程で納税されなかった消費税は仕入税額控除できない仕組みなのです。

課税事業者は免税事業者が納税しなかった分は実質その取引先が負担を負うことになりますので、免税事業者との取引を継続したい場合は免税事業者にインボイス発行事業者(課税事業者)になるように要請することになります。免税事業者がインボイス発行事業者にならない場合は消費税分値引きを求めてくることも考えられます。

インボイス制度は免税事業者の方にとって、経営的な観点から考えてこのまま免税事業者でいくのかインボイス発行事業者になって消費税の納税を行うのかの分岐点となる制度なのです。

次回は、免税事業者の方が取るべき対応について考えていきたいと思います。

中尾 健一 なかお けんいち プロダクトマネージャー 1982年、日本デジタル研究所 (JDL)入社。40年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパン(その後Mikatus株式会社に社名変更)に創業メンバーとして参画、取締役に就任。現在は、freee株式会社で税理士向けシステムのプロダクトマネージャーを努め、その観点から中小企業に影響を与える社会の変化について解説する。 この著者の記事一覧はこちら

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