ハローワーク非正規職員がいじめ・パワハラのまん延を告発

ハローワーク非正規職員がいじめ・パワハラのまん延を告発

  • 週刊女性PRIME
  • 更新日:2021/05/02
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※写真はイメージです

長引くコロナ禍により失業者は10万人を突破、ハローワークには連日、多くの人たちが相談に訪れている。

【写真】グラフで一目瞭然、コロナ禍で激増する非正規相談員

その様子を窓口から見ながら、関東地方のハローワークで相談員として働く本間洋子さん(仮名=40代)は、「明日はわが身」と思わずにはいられなかった。本間さん自身、不安定な働き方を強いられる非正規職員だからだ。

非正規職員は3年を迎えると「雇い止め」に

社会に出るタイミングが就職氷河期にぶつかった本間さんは、ブラック企業で身体をこわしたり、子育てや介護と仕事の両立に苦しんだり、働くことをめぐって悩みが尽きなかった。その体験から、自分と同じように困難を抱える人の支援をしたいと決意。産業カウンセラーやキャリアカウンセラーの資格を取得し、ハローワークの非正規職員に応募、数年前から相談業務を担っている。

ハローワークの相談業務は、単なる仕事の紹介や就職支援にとどまらない。

「雇用保険の専門知識やそれに基づく手続きも必要になりますし、働きすぎやブラックな職場でメンタルを病んだ求職者も多いので、丁寧に話を聞き出し問題を解きほぐす、カウンセリングの技能も求められます。仕事が決まったら就職先との折衝や調整も必要で、幅広いことに対応しなければならないんです」

そんな専門性の高い仕事でありながら、窓口に立つ相談員の6割以上を非正規職員が占めている。その多くが女性だ。しかも、非正規が連続で採用されるのは2回まで。3年を迎えたら、仕事の実績にかかわらず、任期は更新されず機械的に「雇い止め」になってしまう。

「それ以上働き続けたかったら、一般の求職者に交じってハローワークが出す“公募”に応募し、面接を受け直さないといけません」

上限の3年を迎えた本間さんは今年2月、公募試験を受けて選考を通過、再び相談員の職に就くことができた。しかし、気持ちはいっこうに晴れない。

「年度末の3月を迎えるたびに、多くの非正規相談員が雇い止めの不安にさらされ、おびえています。うつや不眠に陥る人も少なくありません。実際に雇い止めに遭った非正規の中には、コロナに感染したことを理由にされた人もいます。“(ハローワークの)施設を消毒しなければならなくなり、負担をかけたため”と、正規職員である上司に直接言われたそうです」

と、本間さんは憤る。

契約の判断基準は上司の主観が大きい

コロナ禍が襲った2020年は失業率の悪化に伴い、ハローワークでは非正規相談員が大幅に増員され、2万7000人にまで膨れ上がった。

そのうち数千人から1万人の非正規相談員が上限の3年を迎え、雇い止めになるおそれが高いとして、有志のグループが田村憲久厚生労働大臣に要請書を提出、公募制度の改善を訴えている。国会でも野党議員が議題にあげているが、国は「公募は決まりなので」と繰り返すばかり。解決の糸口は見えてこない。

「同じ非正規のなかでも、1年で契約を切られる人もいれば、再契約を繰り返して、10年以上も働き続けている人もいます。その判断基準はあいまいで、上司の主観が大きいように思います。問題が起きても話し合うのではなく“じゃあ、来年は(契約更新が)ないね”となってしまう」

と、本間さん。実際、公募後も同じ相談員が採用されることは珍しくない。

「雇い止めされた非正規相談員のうち、ある地方のハローワークでは、9割の非正規が再び採用されていたというデータもあります」

そう指摘するのは、女性の労働問題に詳しいジャーナリストの竹信三恵子さんだ。大半が再契約されるなら、なぜ3年を上限にして、わざわざ公募にかけるのだろうか?

「財政状況が逼迫する中、国が自由に数を増やしたり減らしたりできて、しかも安く働かせることのできる存在が必要だからです。常勤職員を増やすには、人件費に割く予算が必要になります。一方、非正規職員の定数は各年度の予算に応じて変わるため、非正規を増やせばコストカットできて、数を減らしたくなれば雇い止めにできるうえ、相談業務に必要な一定の人数を確保するという体裁も整えられるわけです」(竹信さん)

「わきまえない女」がパワハラの標的に

いつ、誰が雇い止めにあってもおかしくない状況は、職場環境にも影を落とす。今度は誰が切られる? あの人? いや、自分かも……。疑心暗鬼になり、「非正規同士で誰かをターゲットにして、退職に追い込むところを何度も見ました」と本間さんはため息をつく。

「露骨な無視や陰口はしょっちゅう。外見や体形を悪く言われることもあります。書類のファイル方法が違っていたとか、ちょっとしたミスがあるたび正規職員に伝えられ、同僚みんながいる前で注意される。まるで公開処刑です」

学歴について揶揄されたこともある。

「私は家の事情で大学進学できなかったのですが、それを知っているくせに、同僚から“第2外国語、何だった?”と、ニヤニヤしながら聞かれたりしました」

いじめやパワハラがひどくなったのは、雇い止めなど非正規を取り巻く問題について、「これはひどいんじゃないですか?」と意見を言うようになってから。その後、ターゲットにされた本間さんは、職場全体に家族のことなど個人的な噂を流されてしまった。

「LINEなどでつながっていた職場の友人たちからも連絡を絶たれました」

公募を経て再契約された4月以降、嫌がらせはエスカレートしている。ある日、本間さんが出勤すると、自分の席が周りから離され部屋の隅に移されていた。おまけに机の周囲は、高い仕切りで囲われていたのだ。

「なによりつらいのが、仕事を与えないという嫌がらせ。4月になり突然、私が担当していた相談支援の業務からはずされました」

どういうことか上司にたずねると、3月31日までいた以前の上司が決めたことで、知らないと言われた。そこで以前の上司に問い合わせたら、4月1日からの現・上司がやったことなので「自分は知らない」とつっぱねられた。

「それでも問い詰めたら、今の上司が“一昨年のデータを見て、ほかの人と公平になるようにした”と打ち明けました。でも、一昨年はコロナが騒がれる前で、今年に比べ相談件数も担当していた数も少ないので、参考にならないはずなんです。こんな仕打ちをされたのは初めてです」

相談員の仕事に誇りを持って取り組んできた本間さん。応援してきた求職者の仕事が決まったときは、大きな喜びとやりがいを感じる。だが最近は、限界が見えてきた。

「パワハラが原因で、眠れなくなったり、消えてしまいたくなります。でも、相談員を辞めたら子どもの学費を捻出できません。仕事で関わった企業で、うちの職場で働かないかと声をかけてくれた人もいますが、今より収入が低くなってしまうので」

いじめや嫌がらせが蔓延しているのは、相談員の間だけではない。関東地方のハローワークで働く非正規の事務職員・土屋唯さん(仮名=40代)の体験が、それを裏付ける。

「ゴミ出しなどの雑用をするのは私だけ。ゴミを机の上に置かれていたこともあります。電話対応も私ひとりに押し付けられています。コロナで逼迫した求職者からの電話も非常に増えていますが、研修も受けていないのに、助成金の申請方法や就職支援に関わることなど、専門知識が必要な対応をしなければならないんです。一方で、仕事をよそに私的なおしゃべりに時間を費やし、高給を得る職員もいる。こんなの変だと言ったら、さらにひどくなりました」

雇い止めを前提とした公募制度があるから、非正規同士の対立を招き、パワハラが生まれやすい土壌となる。そう土屋さんは考えている。

女性だから非正規&低賃金でかまわない!?

ハローワークの相談員をはじめ、DV被害者支援、保育や介護など、人のケアに関わる仕事を担う公務員には、非正規の女性たちが多い。これは偶然ではない、と前出のジャーナリスト・竹信さんは強調する。

「生活に関わる重要な仕事をしているにもかかわらず、彼女たちの多くは低賃金で不安定な働き方です。その背景には、家事や家族の世話を軽くみて、無償で女性に押し付けてもいいとする“家事ハラ”的な価値観があります。女性が家でタダでやっているような仕事に、そんなにお金(国や行政の予算)を出せないと言った行政担当者もいます」

夫の稼ぎがあるから、女性は非正規の低賃金でもかまわない。雇い止めにあっても、夫の扶養に入っているなら困らないはず……。そうした思い込みは根深いものがあり、“安く買いたたかれるのはおかしい”と思った女性の声を上げにくくさせる風潮を作り出している。

「女性か男性かではなく、仕事の能力や、相談支援など提供するサービスの質で、正当に評価してほしい」

そう本間さんは願ってやまない。

さらに竹信さんが言う。

「相談業務などの対人支援サービスは、行政と住民をつなぐ最初の窓口。そこで非正規女性が多くなり、低賃金で不安定な働かせ方や、パワハラが蔓延して働きづらい環境になると、結果として住民は質の高いサービスを受けられなくなります。すると行政への不信感が増し、公務員を減らせというバッシングに拍車がかかり、さらに公共サービスが縮小されるという悪循環に陥っていく。非正規相談員をめぐる問題は誰にとっても無関係なことではないのです」

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