日本好きのスペイン人選手、イニェゴ・エロセギのプロへの道のり

日本好きのスペイン人選手、イニェゴ・エロセギのプロへの道のり

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  • 更新日:2023/01/29
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2018年のスペイン選手権U23優勝、そして2019年スペインで格式高きワンデーレース メモリアルバレンシアーガを独走で制して2020年にモビスターチームでデビューを果たしたイニェゴ・エロセギ。今回バイシクルクラブが彼へインタビューを行った経緯は、彼がジャパンカップなどの試合で来日したのではなく、憧れを持って日本を訪れているという情報をキャッチしたからだ。
エロセギの日本好きはスペインでも有名な話。今回のように個人旅行で日本に来日したのは2度目、彼の目に映る日本はどのようなものなのだろうか。プロ選手としての活動も含めて、スペインでも将来を嘱望された24歳の若きプロ選手にフォーカスした。

サッカー少年が自転車選手になるまで

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オフシーズン中、リフレッシュをかねて日本旅行に訪れたエロセギ。インタビューも快く引き受けてくれた

どういった経緯で自転車をはじめたのですか?

「大きく影響を受けたのは、やはり祖父のホセ・アントニオ・モメーニェの存在でした。1966年のツールで総合4位、ジロやブエルタでもステージ優勝した彼と幼い頃にテレビで一緒にツールを見ていたのがきっかけですね。でもその頃の僕のすべてはサッカーで、家族も無理に自転車を薦めてくることはありませんでした。
その後、11歳のときにコンタドールとアンディシュレックの戦いを祖父の家のテレビで見て、僕の興味の矛先が完全に自転車へ向いてしまったんです。
祖父はその翌年に亡くなってしまいましたが、僕が自転車をはじめたときにプレゼントしてもらったピナレロは思い出の品です。当時69歳だった祖父とサイクリングに行ったのですが、年齢を感じさせない異常な速さに驚いた記憶があります。
結局、レースをはじめたのは14歳の頃で、インファンティルカテゴリーのクラスで4勝、カデテで5勝しました。サッカーでミッドフィルダーを務めていたこともあって、今よりも体格が良くパワーはかなりありましたからね」

サッカーと自転車、スペインでの人気は?

「スペインの少年たちにとって、サッカーはとても身近な存在で、多くの子どもが1度はプロを目指します。スペインのサッカーにはすごくいいシステムがあって、多くのプロチームの下部組織が各地域に存在しているんです。教育も含めて成長できる場が各地にあって、自転車に比べて良い環境がすぐに見つかります。
一方、自転車競技はバイクの購入やレース遠征などのハードルも多く、スペインの環境ではプロへステップアップするのが難しいと思います」

スペインで自転車のプロ選手になる方法は?

「一般的にスペイン人がイメージするプロの自転車選手は、3大ステージレースの総合成績で活躍するような選手なので、国内で知名度を上げてプロ入りするのは本当に難しいと思います。かつて世界選手権を3度優勝したオスカル・フレイレのような選手でも、一般的な知名度はほとんどありませんでしたからね。そういう背景もあって、必然的にスプリンターは海外のチームでデビューすることが多くなるんです。
もちろん国内のチームでプロ入りする選手もいます。そういった選手のほとんどは圧倒的な登坂力をもっていて、スペイン選手権やバレンシアーガのような距離が長くて厳しいレースを勝つことでプロへの道を進みます。僕もアマチュア時代にその2つのレースで勝てたので、当時のモビスターに入団できたのだと思います。あとはアマチュア時代のチーム選びもプロへの道を大きく分ける要因ですね。スペインにはカハルーラルのように下部組織としてU23のアマチュアチームを持っているクラブもあります。こういったチームはプロ選手とのつながりも多いので、国内でのプロ入りを目指している人の多くが最初にこれを目指すことになります」

近年は10代のうちにプロ入りする選手も多いですよね?

「19歳でイネオスに入団したカルロス・ロドリゲスがまさにそうです。今はジュニア時代にフィジカルトレーナーがついて、データベースの管理下で強い選手を育てる時代になっています。
でも僕が思うに選手の精神面の成長を考えると、ジュニア時代は自転車をもっと楽しんだり、U23の時代をアマチュアで過ごすことのほうが大切なんじゃないかなと思います。
ここぞというときに鋭いアタックを繰り出せるような、ピーキーなポテンシャルを保てるのはプロ選手でもせいぜい6~7年程度。そんなプロの世界の厳しさをあの若さで知るのはツラいものがあると思います。
僕の理想はバーレーン・メリダで走っているペジョ・ビルバオのようにアマチュアでU23を経験してからデビューして、少しずつ経験を重ねて成長していき、27歳ぐらいで全盛期を迎えるような経歴ですね。彼のようにプロを継続していくのはとても大変なことだけど、同じ自転車選手としてその生き方には憧れます」

チームメイトのバルベルデとの関係は?

「彼とは多くの時間、同じ部屋で過ごしました。僕だけでなく、すべての選手にとってとにかく憧れの存在でしたね。素晴らしい戦績をもっているのに決して偉ぶらず、冗談を言って場を和ませてくれるようなとても優しいリーダーでした。レースへの強いパッションが彼を長年トップレベルで走らせてきたけど、今期で引退……。本当はもっと近くでいろいろなことを学びたかったけれど、ここまで長く自転車競技を続けてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいです」

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写真は2020年のUAEツアーでの記念撮影。スペインチャンピオンジャージのバルベルデ選手の左手奥にエロセギ選手がいる。PHOTO:UAE Tour/LaPresse

コロナウイルスの影響はありましたか?

「プロ入りからとても重くのし掛かった問題でしたね。
入団当初のモビスターは、開幕戦のヴェルタサンフアンで新人賞と総合4位という成績を残し、とてもいい感触でシーズンのスタートを切っていましたが、コロナの影響でレースが次々にキャンセルになるなど、すべてがストップしてしまいました。
その翌年にはシーズン前のキャンプ地で自分も含めて多くの選手が陽性になってしまい、予定していたプログラムのほとんどが実行できませんでした。その後、UAEツアーに出場するなど出だしは悪くはない印象でしたが、無理をしたことでヒザを痛めてしまって数カ月走れなくなってしまったんです。
とにかく、コンディションのキープには苦労しました。普段は血液検査でコンディションをチェックしていますが、コロナを患ったときは鉄分の値が急激に下がったり上がったりと不安定な状態が続いていました。胸の痛みや嗅覚の異常、筋肉の疲労感もいつも以上に重く感じるなど、まともな状態が維持できなかったんです。
当時は大きくコンディションを崩してしまいましたが、ここ数カ月でかなり改善しました。自分と同じ時期にコロナを患って、いまだに苦しんでいる選手もいるから、そういった点ではかなり回復が順調だったと思います」

オフシーズンの過ごし方は?

「一般的に全てのレーススケジュールを終えると休養期間に入ります。ただ完全にオフってわけでもなく、少しずつ自転車以外のトレーニングも取り入れなければいけないんです。今回の日本旅行も大きな目的はリフレッシュすることなんですが、交通機関の利用を最小限に抑えてなるべく歩いて観光するようにしています。

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僕の場合、オフシーズンは10月から入ることが多くて、こうやって大好きな日本に来れるのはだいたい10月中旬。スペインに戻ったら水泳にジム、山登りが待っていて、そこから週に2、3回のバイクトレーニングがはじまります。1週間ごとに自転車に乗る頻度を増やしていき、12月あたりから始まるチームキャンプに向けて距離と強度のあるトレーニングを両立していくんです。
チームキャンプでは、目標レースごとにグループ分けを行って用意されたプログラムをこなします。プレシーズンのレースでは段階的にコンディションを確かめながら、強度を持ち上げていくんです。
僕は来年、1月末のヴェマジョルカからスタートしていきたいから、今その件も含めてチームと交渉しているところ。ここからスタートできれば4月前後のヴエルタカタルーニャやヴェルタパイスバスクに良いコンディションが作れると考えています」

今後の目標は? 日本で走りたいと思っている?

「新型コロナやケガの影響もあって、トップコンディションで向き合えていないのが苦しいけど、それでも3大ツール、特にブエルタ・ア・エスパーニャと自分の故郷のイツリア(ヴェルタパイスバスク)を走るのが今の目標です。もちろんこれらの目標のレースで活躍した後は、日本のチームも興味があります」

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最新号では人気声優、野島裕史さんとの対談が実現

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アニメの聖地、青二プロダクションで夢の対談!

アニメ好きのエロセギと声優でサイクリストの野島裕史さんの夢の対談が実現! 自転車競技を続けるなかで、国民的アニメが与える意外な影響とは? 世界トップクラスのレースで活躍するエロセギの知られざる素顔を大公開!

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Bicycle Club編集部 Bicycle Club編集部

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