テイラー・スウィフトが『Red』など過去作の再録に至った経緯とは? アーティストと権利の問題をおさらい

テイラー・スウィフトが『Red』など過去作の再録に至った経緯とは? アーティストと権利の問題をおさらい

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  • 更新日:2021/11/25
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テイラー・スウィフト『Red (Taylor’s Version)』

参照:https://spotifycharts.com/regional/global/weekly/latest

Spotifyの「トップ50(グローバル)」は、世界的に最もストリーミング再生された曲をランク付けしたチャート。本連載では、同チャートを1週間分集計した数値のデータを元に、グローバルな音楽シーンの潮流をお届けする。第9回となる今回は、11月18日公開(11月11日~11月17日集計)のチャートを見つつ、テイラー・スウィフトの『Red (Taylor’s Version)』がリリースされた経緯を振り返りたい。

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■テイラー「All Too Well (10 Minute Version) (Taylor’s Version)」が首位に

アデルの「Easy On Me」を抑え、1位に輝いたテイラー・スウィフトの「All Too Well (10 Minute Version) (Taylor’s Version)」。もとは2012年にリリースされた楽曲であるが、作品の原盤権を所有するために再録されたバージョンとなっている。2位~4位は、アデル「Easy On Me」、ザ・キッド・ラロイ「STAY」、リル・ナズ・X「INDUSTRY BABY」。また、先週リリースされたSilk Sonicのアルバム『An Evening With Silk Sonic』から、「Smokin Out The Window」が8位にランクイン。故ジュース・ワールドの楽曲「Already Dead」が初登場18位となった。

■アーティストを取り巻く「原盤権」「出版権」の問題

2012年にリリースされたテイラー・スウィフトの4thアルバム『Red』。こちらの再録バージョン『Red (Taylor’s Version)』が、2021年11月12日にリリースされた。テイラー・スウィフトは今回の再録バージョンで、自身が『Folklore』で保持していた、Spotifyの「一日で最もストリーミングされた女性アーティストによるアルバム」という記録を更新した。『Fearless (Taylor’s Version)』に続き、2枚目の再録バージョン『Red (Taylor’s Version)』であるが、テイラー・スウィフトが再録をすることになった経緯を改めて振り返る。

今回の再録を理解する上で重要なのが、音楽における「原盤権」と「出版権」だ。アメリカ合衆国の著作権法によると、音源には原盤権と出版権という権利が存在している。音楽は作詞作曲やアレンジされた後、録音され、ミックスやマスタリングを経て、やっと聴くことができる音源になる。その音源のオリジナルデータが「原盤(マスター)」であり、そのマスターの複製物が流通し、リスナーの手に届く。マスターの所有権が原盤権であり、その音源を複製や販売するには、原盤権所有者の許可が必要になる。レコーディング費用を負担した人や会社が原盤権を所有するパターンが多い。

その一方で、出版権は形がある録音物に対する権利ではなく、録音物になる前の歌詞、メロディ、楽譜、アレンジなどに対する権利。簡単に説明をすると、曲という「アイデア」に対する権利が出版権であり、そのアイデアを形にした商品に対する権利が原盤権だ。

テイラー・スウィフトは2005年に、ナッシュビルの新設レーベル<Big Machine Records>と13年契約している。こちらの契約は、レーベルがテイラーにアドバンス(前金)を支払う代わりに、原盤権を所有するという内容だったようだ。主にテイラー・スウィフトが作詞作曲を担当していたため、出版権は本人が所有していた。

2018年に<Big Machine Records>との契約を終え、テイラー・スウィフトはユニバーサルミュージック傘下の<Republic Records>に移籍した。移籍した後の作品は全て自身で原盤権を所有しているが、テイラー・スウィフトの最初の6枚の作品の原盤権は<Big Machine Records>が所有したままであった。

ジャスティン・ビーバーなどのアーティストを発掘したマネージャーとして知られるスクーター・ブラウンが、2019年に<Big Machine Records>を300万ドルで買収したことにより、テイラー・スウィフトの原盤権もスクーター・ブラウンの手に渡ったのだ。自身の作品の権利を持っていなく、さらに以前から確執があった(※1)スクーター・ブラウンに原盤権が売却されたことに傷ついたテイラー・スウィフトは、Tumblrにてこう語っていた。

「何年もの間、自分の作品の権利がほしいと<Big Machine Records>に頼んだ。でもレーベルに再所属して、新たにアルバムを1枚リリースするごとに、過去作品の原盤権を1枚所有できるという契約を提案されただけだった。その契約をしたら、レーベルは売却され、自分の将来も他人に売られてしまうことがわかっていたから、却下した。過去を置いていくという、耐え難い選択をしないといけなかった。自室の床で作った曲たち、そして自分がバー、ライブハウス、アリーナ、そしてスタジアムで稼いだお金で作った映像も置き去りにしないといけなかった。」(※2)

さらにドキュメンタリー『Miss Americana』での楽曲使用を妨げられたという疑惑や、2008年のライブ音源を同意なしでリリースされたこともあり、テイラー・スウィフトは録音物としての権利を自ら所有するためにも、再録をする決意をしたのだ。自身で作詞作曲をし、出版権を持っているからこそ成し得る方法であった。その決意表明をした後、スクーター・ブラウンはシャムロック・ホールディングスにテイラー・スウィフトの原盤権、映像、アートワークを300万ドルで売却した。

このような経緯で、『Fearless』と『Red』は再録され、「Taylor’s Version(テイラー版)」としてリリースされた。このテイラー・スウィフトと原盤権の問題は、音楽業界のケーススタディとして大きく取り上げられており、アーティストとレーベルの関係性を見直すきっかけにもなっている。オリヴィア・ロドリゴも、テイラー・スウィフトの件がきっかけで、原盤権を所有をめぐってレーベルと交渉したと明かしている。(※3)

原盤権を所有するために奮闘しているのは、テイラー・スウィフトだけではない。De La Soulも、ついに原盤権を手に入れたと報道されており、カニエ・ウェストも自身が立ち上げたレーベル<GOOD Music>に所属するアーティストに原盤権を50%還元すると明かしていた。(※4)

(※1)https://www.vox.com/culture/2019/7/1/20677241/taylor-swift-scooter-braun-controversy-explained
(※2)https://taylorswift.tumblr.com/post/185958366550/for-years-i-asked-pleaded-for-a-chance-to-own-my
(※3)https://www.insider.com/olivia-rodrigo-owns-master-recordings-taylor-swift-battle-2021-5
(※4)https://hiphopdna.jp/news/12540

(Kaz Skellington (Steezy, inc.))

Kaz Skellington (Steezy, inc.)

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