自衛隊基地など安全保障上、重要な施設周辺の土地の利用を規制するいわゆる『土地規制法』。政府は今月12日、初めて沖縄県内の区域39か所を指定する方針を決めました。対象区域の一つ、石垣駐屯地の工事の様子を記録し続けた男性が今の心境を語りました。
【写真を見る】どんな行為が違法になるのか…曖昧模糊の『土地規制法』に戸惑う住民や行政の現状
上原正光さん「この先に前はクレーンが立っていて、石垣駐屯地の工事現場が見えた」
石垣市の農家・上原正光さん(70)。農作業の傍ら自衛隊基地に反対する活動を行っています。トラクターの脇には、基地反対の横断幕が揺れていました。
上原正光さん「本当は基地反対活動と生産活動を一緒にやれれば良いなと思いながら、つい反対活動に重点を置いてしまう。だから収穫がゼロというのは初めて」
上原さんはこれまで、陸上自衛隊石垣駐屯地の工事の様子をドローンなどで撮影。撮りだめた映像は自身のSNSで発信するほか、県内外の講演会などで活用し、島の現状を伝えています。
上原正光さん「国は情報を開示するといいながら益々情報隠すだろうということで、私たちが記録を撮っている」
この監視活動に影響するのではと危惧しているのが『土地規制法』です。
自衛隊基地など安全保障上、重要な施設周辺の土地の利用を規制する土地規制法。
重要施設の周辺1キロの区域内は『注視区域』とされ、なかでも石垣駐屯地は、特に重要とされる『特別注視区域』となっています。
県内では、宮古島や与那国島などの自衛隊施設や国境近くの離島など39か所が区域指定される見通しです。
政府は、来月12日を期限に関係自治体から意見聴取を行い、その後正式に決定する方針ですが、各自治体の担当者からは戸惑いの声も聞かれます。
自治体関係者(離島)「期限まで1か月しかなく、時間がない」
自治体関係者(別の離島)「中身が分からないままの説明会だった」
区域内の土地の利用者は、施設の“機能を阻害する行為”とみなされれば、刑事罰を科される可能性があります。しかし、どんな行為が違法となるかは、明確にされていません。
上原正光さん「地域の住民が『あの人がドローン飛ばしていたよ』と通報されてしまったらあることないこと含めて色々と調査をされるということで、疑心暗鬼になって委縮してしまう。反対運動をやるべきじゃないということになってくる」
土地規制法に詳しい仲松正人弁護士はー
仲松正人弁護士「高所からの継続的な監視というのは機能阻害行為に当たらないというふうにはされていません。干渉されて、目を付けられていって活動が相当制限されるのではないかと」
上原さんの監視活動が、阻害行為となる可能性を指摘しました。その上で―
仲松正人弁護士「自治体は仮にそこが区域指定されたとした場合に、『どういうことをすると機能阻害行為になるんですか』ということをできるだけ明らかにしてもらうような質問を政府にして、住民や市民に知らせてほしいというふうに思います」
上原さんは、土地規制法について政府からの更なる説明が必要だと訴えます。
上原正光さん「実際、土地規制法はどこまで行くか曖昧模糊としているから、もう一度ちゃんと説明をするということがやっぱり最低限の国の責務ではないかと―」
政府には、関係自治体や住民の不安を解消できるよう、区域の指定よりも先に、法の透明性を図ることが求められています。
【記者MEMO】
石垣島では、ことし3月の駐屯地開設に伴って『ドローン規制法』も適用されています。上原さんは「土地規制法も施行されれば、住民の目に触れない間に軍拡が進むのではないか」と不安を口にしていました。
今回、アメリカ軍基地は含まれませんでしたが、内閣府の担当者は、今後指定される可能性もあると説明しています。政府は、関係自治体の意見聴取をした上で、来月以降、正式に施行する方針です。