アップルも、アマゾンも...GAFAが「利益度外視」で金融サービスに参入し始めたワケ

アップルも、アマゾンも...GAFAが「利益度外視」で金融サービスに参入し始めたワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/07/21
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金融庁主導の積極的な金融改革により、顧客のためにリスクを取れない金融機関が消滅すると言われて久しい。しかし、日本の金融機関を襲うのは金融庁による改革だけなのか?
「いまGAFAをはじめとする世界的なテック企業が、金融業界への参入を進めている。彼らにかかれば、既存の銀行のサービスなど無料化でき、日本の銀行は太刀打ちできないだろう」。『銀行を淘汰する破壊的企業』の著者で京都大学特任准教授、ベンチャー投資家でもある山本康正氏はこう語る。実際Googleは日本での金融に本格参入という報道もされている。なぜ、GAFAは利益度外視で金融に参入するのだろうか?

ユーザーを囲い込むために……

まずはアップルについてです。なぜアップルは金融に参入するのか。とにかくアップルはiPhoneから顧客を離したくない、との思惑が強いです。

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実際、利益の半分以上はiPhoneからですし、今でこそ廉価なiPhoneも発売されていますが、それでも最新機種などは10万円を超える金額です。

そして、そのような高額製品を2~3年というスパンでユーザーは買い替えていく、これほど効率のよいビジネスは他ではなかなか見られません。

そのため、たとえばアップルカードの年会費が無料のように、これから発表していく各種金融サービスでも、手数料はとても安く提供していくでしょう。

iPhoneを長く使い続けてもらうことで、個人はもちろん、大勢の人のデータが蓄積されていきます。すると、そのデータを活用しなくとも自然とiPhoneから離れにくくなります。

アップルはプライバシーには配慮する方針を強めていますが、「AirPods(エアポッズ)」などの周辺機器の拡充でさらに囲い込みを強化します。その囲い込みの一環で金融サービスでの手数料は無料としているのです。

顧客ファーストを貫くアマゾン

アマゾンが金融サービスを提供する一番の理由は、顧客ファーストを貫いているからです。その上でなぜ、金融サービスの手数料を安くするのか。アマゾンプライムに加入してもらい、継続的な顧客になってもらうとの狙いが大きいと考えています。

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言い方を変えれば、金融サービスの手数料を無料に近い金額にするのは、アマゾンプライムへの広告宣伝費であると。金融サービスの手数料無料にかかるコストは無駄にしてでも、ECならアマゾン。そして、アマゾンプライムに囲い込みたいとの思惑が窺えます。

アップルと同じく、アマゾンを使ってもらうことで溜まっていくデータを活用することで、さらに顧客ファーストなサービスを提供する。たとえば、より精緻なレコメンデーションの提供などです。結果として、ECの売り上げはさらにアップするはずだからです。

一方、すでに展開している保険サービスの手数料については、現時点では自社の従業員のみの提供ということもあってか、有料としています。

ただしこれから先、一般ユーザーにも保険サービスを提供していく際には、不透明なところがありますが、おそらく一般の保険料よりも若干安い程度の料金設定にするのでは、と予測しています。

アマゾンに限らず、手数料ゼロの金融サービスを同じような小売業者が展開していくことも、これから先のトレンドと言えるでしょう。実際、日本でもイオン銀行の良い顧客が、イオンの商品を購入すれば、割引率が増すようなサービスが始まっています。

「アマゾンバンク」が設立される?

現在、アマゾンが手がけている金融事業は、保険やローンです。具体的には、アマゾンストアに出店している事業者に対しての事業ローンです。

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同サービスを一般の与信判断にも展開していくことで、銀行のローン事業は大きな打撃を受けると私は予測しています。

保険事業においては、JPモルガン・チェース、バークシャー・ハサウェイ、自社3社の従業員に対し、すでに自前の保険サービスを提供しており、合弁は解消されましたが今後はこちらも同じく一般のユーザーに提供していくことでしょう。

保険サービスで特に注目しているのが、医療保険です。これまでの保険料金というのは、収入などにより差はありましたが、同じ属性のカテゴリでは一律でした。それをアマゾンは、各人の属性に深く踏み込むことで、より詳細に区分しようとしていると思われるからです。

たとえば、日頃から体を動かす人は病気に罹患する確率が低いですから、保険料金を安くする、といった具合です。このようなデータをアマゾンでの購買履歴や、「Apple Watch(アップルウォッチ)」や「Fitbit(フィットビット)」のようなスマートデバイスを発売し、得ていくであろうと予測しています。米国では既にリストバンドの「Amazon Halo」が発売されています。

データ活用においては、家電製品などの保険も健康保険と同じように、より精緻に設計できますから、いわゆる家電量販店が提供している保険よりも、安価でありながら充実した保障が備わった保険を提供していくでしょう。

その結果、メーカーや家電量販店が提供する保険はもちろん、生保、損保といった保険会社もアマゾンに淘汰されていくと私は予測しています。

アマゾンバンクを設立すると私はみています。まず、保険やローンサービスに使うアカウントをアマゾンで完結することによって「人生のパートナー」にアマゾンは進化するからです。これまではアマゾンのクレジットカードの先には銀行の口座がありましたが、そこも自社で担うと。

銀行をつくれば、これまで保有していたアマゾンでの購買データに加え、資産データも得ることができます。

まったく新しいデバイスが登場?

アマゾンはこの資産データと購買データを紐付けることで、より精緻でピンポイントな、レコメンデーションのアルゴリズムを作り上げるのではないか、と予測しています。

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具体的には、富裕層向けにラグジュアリーな商品をレコメンデーションしたり、一定金額以上の資産を保有する人しか買わないような高級品を、対象となるユーザーにピンポイントでレコメンデーションしていく、といったサービスの展開です。

ラグジュアリーなブランドに限らず、それぞれの保有資産のレベルでの購入特性もあるでしょうから、一般的な商品においてもより精緻に、レコメンデーションできるようにもなるでしょう。

アップルはiPhoneへの囲い込みが目的でしたが、アマゾンが銀行を設立するのはアマゾンの理念、「顧客ファースト」の観点からです。レコメンデーションの質向上はもちろん、銀行を介さずすべてアマゾン内でお金のやり取りが完結すれば、ユーザーにとって便利であることは間違いないからです。

スマートフォンですべての銀行業務が完結する未来をアマゾンも予測しているはずですから、アマゾンは再びスマホや、その次に普及する機器の開発に挑んでくるのではないかとも考えています。

これまでスマートフォンを作ったことがあることに加え、「Amazon Echo(アマゾンエコー)」など、さまざまなデバイスを積極的に開発する企業姿勢も、理由の一つです。

具体的なイメージは現時点では私も浮かびませんが、いわゆるスマートフォンのようなデザインやスタイルから進化し、さらに使いやすくなる気がしています。

つまり、スマートフォンに替わる、新たなインフラとなり得るデバイスを世に送り出し、さらなるゲームチェンジャーになる。このような未来も、アマゾンは考えているように思えます。

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