メジャーシーンで結果を出した入江悠監督が語る埼玉ロケ作品『ビジランテ』で挑んだ新境地!!【後編】

メジャーシーンで結果を出した入江悠監督が語る埼玉ロケ作品『ビジランテ』で挑んだ新境地!!【後編】

  • 日刊サイゾー
  • 更新日:2017/12/08
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──インタビュー後半は、入江監督に2017年を振り返ってもらえればと思います。6月に公開された『22年目の告白 私が殺人犯です』が興収1位をとったことは大きな勲章になったのではないでしょうか。

入江悠(以下、入江) 首の皮が繋がったかなと(笑)。『バトル・ロワイアル』(00)を撮った頃の深作欣二監督に「俺の頃は2~3本失敗しても、東映という会社があったからチャンスがまた貰えたけど、お前らはフリーだから1本でもコケると大変だよ」と言われたことがあったんです。メジャー映画を撮っていて、ヒット作が出せないようだと監督生命が終わってしまう―という危機感はずっとありました。『22年目の告白』が他の僕の作品とどこがどう違うという意識はないんですが、宣伝スタッフや主演の藤原竜也くんが作品のPRをすごく頑張ってくれたことにはとても感謝しています。今の日本はキラキラムービーが多いけど、『22年目の告白』のような犯罪サスペンスでもヒットすることが分かったことも大きな収穫でした。

──『22年目の告白』は地上波でテレビ放映されることは考慮せず、思い切ったバイオレンス描写を盛り込んだ。

入江 劇場公開でコケたら、地上波放送もないわけじゃないですか。あまり先のことを考えても仕方ないなと(笑)。子どもの頃からトラウマになるような殺人描写のある映画が好きだったので、そのくらい振り切ったものにしたいとはスタッフに話していました。北野武監督の『アウトレイジ最終章』も今年ヒットしているわけですし、飢えている人は多いと思うんです。テレビでは観ることができない、劇場でしか味わえないヒリヒリするような映画が観たいと思っている人はいっぱいるはずです。

──『22年目の告白』を撮る前に、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』(07)を見直したんですよね。

入江 はい。フィンチャー繋がりで言うと、『ビジランテ』で篠田麻里子さんに出てもらう前に、フィンチャー製作総指揮の政治サスペンス『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(13~17)を見ておいてくださいと伝えたんです。大統領を目指すケヴィン・スペイシーの妻役のロビン・ライトの悪女ぶりを参考にしてもらえればと思って。ヒロインもの、好きなんです。『緋牡丹博徒』(68)みたいな業を背負った女性に惹かれますね。

■キューバへの家族旅行と2017年のベスト映画

──『22年目の告白』が大ヒットしたことで、ワーナーで祝勝会が開かれた?

入江 ないです、ないです(笑)。夏に別の映画会社でもう1本映画を撮るつもりだったんですが、それが流れてしまって。『22年目の告白』が公開された後は暇だったんで、キューバ旅行に行きました。

──『サイタマノラッパー』シリーズは自宅でロケ合宿したりと、さんざん世話になったご家族との初の海外旅行ですね。

入江 これまで、本当に親のスネを齧って生きてきましたから(苦笑)。撮影で自宅をボロボロにするわ、スタッフやキャストを泊めて、親に食事を用意させ、足りない布団をご近所から掻き集めさせて……。『ビジランテ』もそれに近いことやってました。そろそろ親孝行しないとマズいなと、思い切ってキューバへ家族旅行したんです。日本に帰ってきたら、阪本順治監督がキューバで撮影した『エルネスト』が公開されていたんですが、「よく、こんな場所で撮影できたなぁ」とすごく面白く感じられましたね。キューバ旅行以外は、いろいろ映画を観て回っていました。

──入江監督の2017年のベスト映画は?

入江 そろそろ映画雑誌向けにベスト映画を選ばなくちゃいけないので、考えているところなんですが、強く印象に残っているのはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画『メッセージ』ですね。恵比寿ガーデンシネマで公開されていた韓国映画『わたしたち』も好きでした。女の子たちが主人公なんですが、表情がとても豊かなんです。『新感染 ファイナルエクスプレス』もよかったんですが、後半は泣かせようとする演出が目立つのがちょっと残念。でも、あれだけ観客をぐいぐい引き込んでいく脚本は素晴しい。『22年目の告白』のオリジナルにあたる『殺人の告白』(12)もそうですが、韓国映画はじっくり時間を掛けて、丁寧に脚本を練り込んでいる。そこは日本映画も見習わなくちゃいけないところだし、負けられないなという気にもなりますね。

──熊切和嘉監督の『武曲 MUKOKU』は高校の剣道部が舞台でしたが、剣道経験者の入江監督的にはどうでした?

入江 面白かったですよ。近藤龍人さんの撮影も素晴しかったし、剣道部の雰囲気が伝わってきました。熊切監督じゃないと撮れなかった作品でしょうね。熊切監督がその前に撮った『ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS』(16)もよかった。僕もあの原作コミックが好きで、映画化したいなと考えていたんです。熊切監督に先にやられてしまいましたね(笑)。

■ 『マイクの細道』東北ロケと入江監督の新しいステージ

──2017年は『SRサイタマノラッパー マイクの細道』がテレビ東京でオンエアされたことも、大きなトピックでした。ドラマの終盤、「SHO-GUNG」が川崎クラブチッタに登場してのライブシーンをスクリーンでもう一度観たいというファンの声はよく耳にします。

入江 『マイクの細道』は、最後のライブシーンに向けて物語が進んでいくドラマでしたからね。スクリーンで観たら、より盛り上がるでしょうね。

──地元・深谷で1日限定ながら『マイクの細道』の一挙上映をやったとか。

入江 やったみたいです。テレビドラマを映画館で上映するのは許可をもらうのが面倒だったりするので、よくできたなと感心していたんですが、無料上映という形にしてテレビ東京には黙認してもらったみたいですね(笑)。

──深谷市ってフリーダムな町だなぁ。『マイクの細道』第6話の冒頭でIKKUたちは釜石の被災地で合掌するシーンが1カットだけ映ります。時間があれば、被災地でのエピソードも撮りたかったのでは?

入江 釜石は撮影の半年くらい前から何度も行って取材もしていましたし、本当はそうしたかった。でも、深夜ドラマ25分の枠では、被災地で起きたこと、そして今も続いている問題を物語に置き換えるのがすごく難しくて。せめて、東北のこの場所には来たという足跡だけは残しておきたいと思い、1カットだけ撮ったんです。

──『22年目の告白』は入江監督が10代の頃に体験した阪神淡路大震災が物語の背景になっている。今回、『マイクの細道』で東北を回って感じたことは今後の課題になる?

入江 そうなると思います。青森では原子力施設のある六ヶ所村や三沢の米軍基地なども回ってきましたし、地元に帰っていたかつての仲間が東日本大震災で家族を亡くしたりもしているんですが、そのことにはまだ向き合うことができずにいます。どうしても実際に起きた事件や事象を咀嚼して、自分の作品として描くにはかなりの時間を要してしまうので、これからの課題だと言っていいと思います。その点、ハリウッドや韓国映画は、実際に起きたことを巧みにエンターテイメント化してしまう。あの知性には憧れますね。

──2017年は『ビジランテ』の撮影&公開、『サイタマノラッパー マイクの細道』の放映とDVD化、そして『22年目の告白』の成功と、新しいステージが見えてきた1年だったのではないでしょうか?

入江 『ビジランテ』はオリジナル作品ですし、『22年目の告白』もかなり思い切って脚色させてもらい、自分のやりたい道が見えてきたようには思います。ノアール感のある犯罪サスペンスに今年は照準を絞ることができたかなと。自分の監督作が年間2本公開されるのも初めてなんです。『ビジランテ』ともども、これからもよろしくお願いします。
(取材・文=長野辰次/撮影=長谷英史)

『ビジランテ』
脚本・監督/入江悠
出演/大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉村界人、菅田俊
配給/東京テアトル R15+ 12月9日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開
C)2017「ビジランテ」製作委員会
https://vigilante-movie.com/index.php

■『ビジランテ』の公開を記念して、テアトル新宿にてトークショーを開催

ヤクザday
12月10日(日)  14:00の回上映後
ゲスト/般若、坂田聡、山口航太、龍 坐、大宮将司、蔵原 健、三溝浩二、裵ジョンミョン

ヤングday
12月16日(土)3回目上映後
ゲスト/吉村界人、間宮夕貴、大津尋葵、入江悠監督

デリヘルday
12月23日(土)4回目上映後
ゲスト/岡村いずみ、浅田結梨、市山京香、入江悠監督

●入江悠(いりえ・ゆう)

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1979年神奈川県生まれ、埼玉県深谷市出身。『JAPONICA VIRUS』(06)で長編監督デビュー。自伝的要素の強い青春映画『SRサイタマノラッパー』(09)が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」オフシアター・コンペティション部門でのグランプリ受賞を皮切りに、自主映画として異例のロングランヒットに。『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)、『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)と共に『SR』北関東三部作として熱烈な支持を集めた。『日々ロック』(14)、『ジョーカー・ゲーム』(15)でメジャーシーンに進出。『22年目の告白 私が殺人犯です』(17)は3週連続興収1位を記録するヒット作となった。その他の主な監督作に『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンローロは鳴り止まないっ』(11)、『太陽』(16)など。『SRサイタマノラッパー マイクの細道』『22年目の告白』が共に現在DVDが絶賛リリース中。

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